「試合勘」について考える|頭で勝つ!卓球戦術

試合勘を‟鍛える”と‟取り戻す”

ここまでお話してきたが、では実際にこのつかみのどころない能力についてどう向き合えばよいのだろうか。私は2つの観点があると考える。ひとつは‟鍛える”ということだ。これは一朝一夕にできるものではない。

当然たくさん試合の経験を積む必要があるのだが、それは様々なレベルや年代の選手と対戦し、なおかつ勝つか負けるか分からない接戦の中で磨かれるものだ。

徹底して効いている戦術を使うのか、それとも相手を翻弄するひらめきを出せるか。そういったことは自分が様々な試行錯誤を繰り返すことで磨かれる。

あるいは他人のプレーを見て学べることも多いにあるだろう。自分と近い戦型やレベルの選手、もしくはYouTubeなどで上級者の戦いを見て、活かせる部分が見つかれば積極的に取り入れてみよう。

写真:伊藤美誠(スターツ)/撮影:ラリーズ編集部
写真:伊藤美誠(スターツ)/撮影:ラリーズ編集部

もう一方の‟取り戻す”という観点については、私自身も頭を悩ませるところである。なにせ試合に出るのは年に数回、練習も今では2~3ヶ月に1回程度となってしまった。

これを読んでいるあなたも学業があり、仕事があり、家庭があり、と様々な環境の中に置かれていることだろう。卓球が生活の中心という人は多くないはずだ。となると限られた練習時間、試合の機会では、試合勘が失われていくのも無理はない。

勘を取り戻すためには当然ながら試合数を重ねるのが必要である。あとは取り戻す為の工夫として、言語化して記録しておくというのも効果的だろう。

競った場面で使うサーブだったり、戦術だったりをノートや端末に書き記しておいて、ゲーム間に確認できるようにしておくだけでも非常に役立つだろう。

あるいはそういった情報をチームメイトと共有しておくのも良いだろう。ベンチコーチの際には有用なアドバイスをもらえるかもしれない。

まとめ

今回は試合勘という非常に抽象的だが、勝つ為に大切な能力についてお話してみた。卓球では、「上手であること」や「技術を持っていること」と、「試合に勝てること」は直接的には結びつかない。相手の心理を読み合い駆け引きをする、さらにそれを自身のメンタルも影響する中で実行できるか。

そしてその瞬間ごとのひらめきで、相手の裏をかくプレーができるか。そういったことすべてを含めて、実力と呼べるのだ。卓球はそれだけ奥が深いスポーツである。今回はそれらを試合勘という言葉として表現した。ぜひ今後、少し意識してみてはいかがだろうか。

文:若槻軸足(卓球ライター)

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