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「子どもと卓球」の原風景を探して<全農杯2022年度全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部 鳥取県予選会>

卓球インタビュー 「子どもと卓球」の原風景を探して<全農杯2022年度全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部 鳥取県予選会>

2022.05.20

この記事を書いた人 槌谷昭人1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏 @tsuchito <全農杯2002年度全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部 鳥取県予選 5月5日(木)倉吉体育文化会館>

なるべく小さなエリアのホカバ県予選を見てみたいと思った。
そこに「子どもと卓球」の原風景があるような気がしたからだ。

コロナ禍による無観客開催、エントリー数の減少、そして他競技発ではあるが、小学生の全国大会への賛否の議論。
日本の卓球界を支えてきた“ホカバ”の意義を改めて考えるとき、地方予選を見なければ現実がわからない。

地方にある子ども、指導者、それぞれの「卓球と日常」を見たいと思った。

小林ふう(CAMELSJr)
写真:昨年バンビ、今年カブと鳥取県予選連覇を果たした小林ふう(CAMELSJr)/撮影:ラリーズ編集部このページの目次

  • [10 鳥取県予選会 女子バンビ結果]()

松本理事長「指導者のレベルは向上している」

まずは、自身も地元のスポーツ少年団「社スポーツ少年団」を40年以上率いてきた、鳥取県卓球連盟の松本秀樹理事長に話を聞いた。

松本秀樹
写真:鳥取県卓球連盟理事長 松本秀樹氏/撮影:ラリーズ編集部——鳥取県の卓球の状況を教えてください。
「人口が減っていくなかで、なかなか。60年国体(1985年鳥取県開催)の前後は強い選手がいた時期もありましたけど。ずば抜けた子が出てきても練習相手がいないから、県外に出るしかない状況です」

——多くの地方の現実ですよね。
「いい選手にいてほしいけれど、その土地に生活の基盤がないとやっぱり難しいです。企業の少ない土地の生活環境もありますね」

——卓球人気は高まる一方、地方では少子高齢化が進んでいます。卓球する子は増えていますか。
「コロナの影響か、今回の県予選参加選手の数は例年より少ない気がします。でも、地道に声をかけていくしかないんですよね。団員の子の友だちに声をかけていく、地元の小学校でデモンストレーションを行うとか」

米田一輝(MTC鳥取)
写真:米田一輝(MTC鳥取)/撮影:ラリーズ編集部——現在、松本理事長は日本卓球協会の全日本ホカバの大会委員長も務めています。子どもたちの変化は感じますか。
「競技のレベルは間違いなく上がりました。鳥取に限らず、それぞれの指導者のレベルも上がっています」

岡本悠希
写真:男子ホープス1位の岡本悠希(社スポーツ少年団)/撮影:ラリーズ編集部——指導者のレベル向上はどういった点に見られますか。
「発展途上の小学生たちを壊さないように上手に導いていますね。それぞれの子どもの持っている個性と能力を発揮させていて、指導の方法を僕が習いたいなあと思うくらいです笑」

——小学生の全国大会を減らそうという主張もあります。
「指導者は、スポーツを通じて子どもの人間性を高めることが大切です。勝利主義が批判されていますが、試合する以上子どもは勝ちたいんです。大人が成長期にある子どもを大切にするのはもちろん、子どもも一人では強くなれないので、周囲への感謝の気持ちを持つような方向に指導していってほしいと思います」

——松本理事長は地元のスポーツ少年団を40年以上指導されてきたんですよね。
「ええ、私の場合はクラブチームではなく、ずっとスポーツ少年団で指導してきました。地域の託児所的な意味合いもあり、地域みんなで子どもを育てるという意識でやってきました。外部の指導者が技術だけではなく、子どもの人間性を育てられるような資格制度は必要だろうと思います」

竹本悠奈(MTC鳥取)
写真:女子ホープス1位の竹本悠奈(MTC鳥取)/撮影:ラリーズ編集部鳥取県予選は、予選を一次、二次ともにリーグ戦で行っていた。
「子どもたちに少しでも多く試合を経験させたいのと、人数は少なくても、公平性を期するためです。その代わり、時間はかかりますけどね」

温かい目で会場全体を見渡す松本理事長だった。

松本秀樹
写真:鳥取県卓球連盟理事長 松本秀樹氏/撮影:ラリーズ編集部## 名門ALL STARの姉妹チームも

意外な「ALL STAR」の名前を目にした。兵庫県の名門ジュニアクラブ「ALL STAR」は、日本代表の木原美悠(JOCエリートアカデミー/星槎)が育ったチームで、木原の父・博生さんが代表を務める。
鳥取にあったのは、福田義行さんが2016年に立ち上げ、2017年に「team-FKT」から名称変更した「ALL STAR-FKT」だ。

「2016年にALL STARの木原代表と出会い、幾度も練習に参加させて頂く中でお名前を使わせて頂けることに。私たちが住んでいるのが鳥取市東部の国府町という小さな町で、ALL STARさんのある明石市まで片道2時間ほど。今は月に1〜2回くらい練習に行かせて頂いています」


写真:鳥取県予選バンビ2位の横山楓(左)、カブ2位の福田吟(中央)、バンビ4位の福田旺佑(右)/撮影:ラリーズ編集部普段は、家の近くの廃校になった小学校の体育館で練習している。
今回、チームからは福田家の息子さん2人と、近くに住む女の子一人の3人がエントリーし、全員が全国大会への切符を手にした。

「ヒヤヒヤですけど、でも、なんとか通過できて良かったです」
試合を後ろから見つめる厳しい表情とは打って変わって、穏やかな優しい笑顔を見せる。

福田義行
写真:福田義行さんと福田吟(ALL STAR-FKT)/撮影:ラリーズ編集部福田さん自身も中学〜高校時代に鳥取県チャンピオンだった実績を持つが、近畿大学卒業後に地元・鳥取に戻ってからは、仕事や子育て中心の生活が続いた。
それでも、チームを全日本クラブ選手権男子小・中学生の部ベスト16や、全国ホープス大会男子2年連続ベスト32入りに導くが、2020年、チーム最後のメンバーを出雲市の出雲北陵中学校へ送り出した後、クラブは休養していた。

「ところが2021年6月、下の息子が本気で卓球やりたいって言ってきたんです。やるなら本気でやろうと家族で決めました」

目標を、当時叶わなかった全国ランク入りに定め、卓球指導中心の生活を再開した。

「子どもの様子を見ながら、やれそうなときはどんどんやりますし、やれないときは縄跳びや自転車に切り替えて」
ジュニア世代の指導の呼吸も板についてきた。

「全国大会では、ALL STARさんの練習場で出会った友だちや知り合いが勝ち上がっていく姿に、また刺激を受けると思うんです」

地元の卓球界が福田さん率いるALL STAR-FKTに懸ける期待は大きい。福田さんもまた、人口の少ない鳥取県の小さな町で、前を向いている。

「今はメンバーが小学生3名、中学生が2名しかいません。でも、これから生徒をどんどん増やしたいので、強くなりたい子供たちや、お子さんを強くしたいという保護者さんを募集中です」

福田吟(ALL STAR FKT)
写真:福田吟(ALL STAR-FKT)/撮影:ラリーズ編集部## すべての県予選に心温まる副賞が

全農杯ホカバのもう一つの特徴は、全国大会だけではなく、全ての県予選で、その土地のお米や名産品を中心とした副賞が用意されていることだ

優勝者に贈られた副賞・鳥取和牛オレイン55特選もも焼肉400g
写真:優勝者に贈られた副賞・鳥取和牛オレイン55特選もも焼肉400g/提供:全農「鳥取和牛オレイン55特選もも肉は、オレイン酸を55%以上含むお肉で、噛めば噛むほど広がる肉本来の旨味が特徴です。さっぱりとしているのにとろけるような脂と赤味のバランスが良く、焼肉で食べる方が多いですね」

今大会の副賞を提供した、地元の全農鳥取県本部の方が教えてくれた。

「年間約2,100頭出荷される鳥取和牛のうちの20%、年間400頭程度しかない希少なブランド牛です。私が買いに行ってもお店に無いときもあるくらいで」

2位に贈られる副賞・鳥取県産米「星空舞」
写真:2位に贈られる副賞・鳥取県産米「星空舞」“冷めても美味しいお米”のため、おにぎりでも人気だという/提供:全農3位に贈られる副賞・ウィンナーセット
写真:3位に贈られる副賞・ウィンナーセット/提供:全農「子どもたちにとっては、大会に勝って表彰状1枚より賞品があるっていうのは嬉しいものです」と、鳥取県卓球連盟の松本理事長も感謝する。

この時期の47都道府県で、それぞれの名産品の旗やポスターが会場に飾られていると考えると、なんだか楽しい。

案外、その土地で暮らしているときには、名産品の価値や美味しさに気づかないものだからだ。

会場に飾られたのぼり
写真:会場に飾られたのぼり/撮影:ラリーズ編集部## 地域みんなで子どもを育てる

表彰式では、指導者・保護者も一円になって子どもたちに拍手を送り、撮影していた。

地域みんなで子どもを育てる現場を実感する。

鳥取県予選
写真:表彰式の様子/撮影:ラリーズ編集部「ほら、もっと笑顔で。ラリーズさんに載るかもよ」地元の卓球連盟の広報担当の方が促す。

「何もないのに笑うって、どうやって笑うんだ?」男の子が口を尖らせ、またみんなが楽しそうに笑う。

鳥取県予選
写真:男女各カテゴリーの優勝者/撮影:ラリーズ編集部カメラを構える私が、面白いことを言えたら良かった。温かい光景だなあ、と少し見とれてしまっていた。

当たり前の話だが、小さなエリアでも、全国大会に行けなくても、子ども、親、指導者の卓球と共にある毎日は存在している。

その土地ならではの風土や県民性をキラリと反映させながら、地域の体育館は人の温もりに包まれていた。

鳥取県予選
写真:子どもたち自身が台の片付けも率先して行っていた/撮影:ラリーズ編集部## 鳥取県予選会 男子ホープス結果

※各カテゴリーとも上位4人が全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部に出場


写真:鳥取県予選会男子ホープス受賞者/撮影:ラリーズ編集部1位 岡本悠希(社スポーツ少年団)
2位 渡邉航史郎(社スポーツ少年団)
3位 浜田開世(MTC鳥取)
4位 浦川悠仁(社スポーツ少年団)

鳥取県予選会 女子ホープス結果

女子ホープス1位から4位
写真:女子ホープス受賞者/撮影:ラリーズ編集部1位 竹本悠奈(MTC鳥取)
2位 北﨑結菜(TTZ卓球道場)
3位 小林うみ(CAMELSJr)
4位 澤田舞栞(LCTC)

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