
コロナ禍で運動不足を感じている人が多い中、人気の高まっている卓球。特に、去年の東京オリンピック・パラリンピック以降、都内で開かれている卓球教室では、入会を希望する人が急増している。そこには、初心者が始めやすい手軽さや卓球ならではの魅力があった。
元全日本ダブルスチャンピオンで卓球教室のコーチを務める藤井寛子さんに聞く。(取材・文/二株麻依)
生徒数は2人→45人に 高まる卓球人気
——最近、卓球人気が高まっている実感はありますか?
藤井寛子(以下、藤井): めちゃくちゃありますね。中学高校でやっていて、大学とか、社会人になってはじめのころはやっていなかったけど、コロナ禍で運動不足になって、再開したいという、20代後半から30代がすごく多くて。最初は週1ぐらいとか、月1ぐらいでやっていこうかなって思っていたのが、今、毎日のように来てくださる方がいて。
最初は、体を動かすぐらいで良いかなと言っていたのですが、今度は試合に出たいって、試合の登録される方がすごく増えています。
そうした大人の方が増えているのと、あとは東京五輪の後、中学生の入会者がすごく増えました。私のいるYOYO TAKKYU西日暮里店はオープンして2年経ったんですけれども、最初は小学生・中学生の「ジュニアコース」は2人から始めました。それが半年ぐらい続いていて、1年目は10人ちょっとだったんですけど、東京五輪後、45人にまで増えました。それにすごくびっくりしています。
オリンピック・パラリンピックの効果というのもすごく大きいと思います。また、コロナ禍の中で、人との距離を気にするじゃないですか。卓球台は約2メートル75センチあるので、距離も保ちつつ体を動かしたいという方がすごく多くて。みなさんうまくコロナと付き合いながらスポーツを楽しみたいという気持ちが強いんだと思います。
ポイントは手軽さ
——他のスポーツに比べて、手軽さとかもあるんですかね?
藤井:やっぱり小さいスペースで手軽に始められるのも卓球のすごく大きな魅力のひとつかなと思いますし、ラケット1本で、スペースもいらず、人数も少なくできるので。
——仕事終わりでも楽しめそうですね。
藤井:そうですね。うちでは夜7時からの教室も行っていて、会社終わりの方が訪れます。どちらかというと男性が多いです。午前中は女性と男性が半分半分ぐらいかな。あとコロナ禍で仕事はリモートという方が、時間調整して「空いた1時間半で来ました」とか。
昼間って働いている方はなかなか来られないと思うんですけど、最近多いなと思ったら、「実は今リモートで、普段は家で仕事しているんですけど、時間都合つけて来ました」とか「パソコンを台の近くに置いて卓球します」とか。ちょっとパソコンを触りつつ卓球して。コロナ禍ならではだなって思うことも結構ありますね。
卓球の魅力とは
——卓球のどういうところにハマっていくんでしょうか。
藤井:最初は、打ち合う、ラリーが続くというおもしろさからハマります。それがだんだん、こういうふうなことができたらもっとおもしろいなとか考えたり、回転のことが分かったりするんですよね。そうなると他の方とも交流が生まれます。
卓球を通じて、人とのつながりを大事にして、いろんな方と巡り会って楽しんでいるんだなと感じられます。コロナ禍だからこそ、人との交流が楽しかったり、運動がしたかったりするんでしょうね。
——健康のための運動ということで選ぶ方も多いんですよね。
藤井:動くスペースは狭いんですけれど、細かく足を動かしたりとか、体を回したりするので、ヒップラインとか、お腹などが引き締まる運動だと思いますし、基礎代謝も上がると思います。
——ケガのリスクは?
藤井 他のスポーツに比べたら大きなケガは少ないと思いますが、注意は必要です。大体は、膝、足首の捻挫ですね。あとは腰。腰はそのときのケガというよりは慢性的な部分が多いのかなと思うんですけど。あとは肩、手首、肘ですかね。でも、うまく体をケアしながらだと長く続けられるし、生涯スポーツだと思います。
YOYO TAKKYU東中野店では90歳手前の方がずっとレッスンに来てくださっています。うちの教室で卓球を始めて、今ではみなさんで一緒にラリーを楽しんでいらっしゃいます。
小さい子だと、3歳からいます。子どもから年配の方までできるスポーツってなかなかないですよね。そうやって楽しむことができるのは卓球の大きな魅力だと思います。
卓球で発達する視神経と俊敏性
——子どもが卓球を幼いときから始めると、体の発達に良い影響があるのでしょうか。
藤井:視神経系が小学校のときに一番発達すると言われています。目の、見る力。パワーは中学生になってからついてくるんですけど、俊敏性というのは小学校のときに伸ばしてあげないとダメなんですね。そこを伸ばしておけば、大きくなってあとからパワーをつけたときに、速くも強くも動けるようになります。
——卓球以外に役立つものが得られたりするんですかね。
藤井:私の場合ですが、あとさき考える力というのが卓球ではついた気がしています。こう打ったらこう返ってくるとか。対人競技なので、相手との駆け引きをします。例えば、陸上競技は、自己新記録を目指して練習することが一般的です。
記録を求めるのももちろんすごく素晴らしいのですが、卓球は、相手がいるから練習できるし、相手がいなければ成り立たないですよね。
相手がこういうふうに思っているんじゃないかとか、こういうことを嫌がっているから、じゃあ試合ではこうしたほうが良いかなというふうな、相手ありきの考え方ができるようになったというのは、卓球をやっていてすごく良かったところだなと思います。お子さんにもおすすめできるスポーツだと思います。(第2回へ続く。)
■プロフィール
藤井寛子(ふじい・ひろこ)
1982年生まれ。奈良県出身。両親が主宰する卓球クラブで卓球を始める。四天王寺高等学校、淑徳大学を卒業後、日本生命保険相互会社に入社。全日本選手権女子ダブルスで5回の優勝、シングルスでは3回の準優勝の経験がある。現在はYOYO TAKKYU西日暮里店のコーチとして活躍。オリンピックなどのテレビ中継で、解説者を務める。
■ライター
二株麻依(ふたかぶ・まい)
フリーアナウンサー (シー・フォルダ所属)
元NHKキャスターで、主にスポーツ、報道、情報番組を担当。取材して書くこと・話すことが得意。小学3年生で卓球を始め、慶應義塾大学在学中は全日本大学総合選手権大会(団体の部)出場。夢はスポーツ実況をすること。
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