“史上初”アメリカ開催決定の裏側 世界選手権には卓球人たちの心意気が詰まっていた
もう一つ、世界選手権が特別である理由
卓球の世界選手権には、五輪にはない、もう一つ大きな特徴がある。
中国選手が多く出場するのだ。
シングルスで言えば、五輪は代表各国男女2人に対して、世界選手権は男女最大各5人。つまり、中国からは男女各5人がエントリーする。
写真:男子世界ランキング1位の樊振東/提供:ittfworld日本も世界ランキング等の条件を満たすため男女各5人が参加するが、当然ながら世界選手権のほうが勝ち上がっていく際に中国選手と当たる可能性が高くなる。
語弊を恐れずに言えば、出場する選手としては、五輪よりもハイレベルな戦いの舞台が卓球の世界選手権だと言えるのだ。
写真:女子世界ランキング1位の陳夢(中国)/提供:ittfworld## もう一つ、大切なこと「卓球人の思いが込められている」
卓球総合メーカーのリーディングカンパニー、バタフライブランドで知られる株式会社タマス(以下タマス)の大澤卓子(おおさわたかこ)社長に「五輪と世界選手権の違いって何か感じますか」と尋ねたときの答えが、とても印象に残っている。
「五輪は、招致の場所を卓球人が関与して決めているわけではありませんよね。でも世界選手権は、それぞれの国の卓球協会が“ここで世界一を決める卓球の大会を開きたい”と、手を挙げてから始まります。卓球に携わる人たちのその心意気はやっぱり感じます。今回の史上初のアメリカ開催となるヒューストン大会も、なんとかアメリカで開きたいっていう、その地域で卓球に携わり、支えてきた方々の思いからですよね。世界選手権には、この地に卓球を広げたいという、卓球を愛する人たちの思いが込められていると思います」
写真:タマス代表取締役社長 大澤卓子さん/撮影:卓球レポート/バタフライ## そして、コロナがやってきて
2020年3月開催予定だった世界選手権釜山大会は、戦後初めて中止となった。
ピンポン外交以降も、1991年千葉大会での南北コリア統一チーム結成など、世界選手権の舞台で卓球人たちは、絡まった国際政治情勢にも果敢に働きかけ、小さなボールスポーツができる“世界の友好”を訴えてきた。
でも、ウイルスには勝てなかった。
いや、違う。
昨年もし開催を強行したとしても、そこに誰も勝者はいなかっただろう。
でも今は違う。私たちを含む世界の卓球界は、一つずつ知見を得ながら、また歩み始めている。
写真:張本智和(木下グループ)/提供:ittfworld## 世界選手権“ファイナル”?
今回の世界選手権ヒューストン大会には、「World Table Tennis Championships Finals」と、さりげなく末尾に“ファイナル”がついている。
これは本大会の規模を縮小するため、各地域、大陸で予選大会が行われ、勝ち上がった選手たちが世界選手権に出場する仕組みとなったことを意味している。※今大会はコロナ禍のため予選大会の開催がかなわず、世界ランキングにより出場者を決定
気がつけばITTFのCEOスティーブと対峙
いま世界の卓球界では、国際卓球連盟(ITTF)が主導する形でWTT(World Table Tennis)という新しい枠組みが作られ、世界選手権の形式や位置づけも変わろうとしている。
長く続いてきた世界卓球選手権の軌跡に対して、このWTTも含めて、少し改革が急すぎるのではないか。
ふと気がつけば、国際卓球連盟CEOスティーブ・デイントン氏に、オンラインで直接インタビューすることになっていたのだった。
えーっと、自分でオファーしておいてなんですが、相手がVIPすぎないですか。
(続く)
写真:劉国梁・中国卓球協会会長(左)と肩を組むスティーブ・デイントンITTF・CEO(右)/提供:新華社/アフロ>>国際卓球連盟CEOに聞く「チケット22,000枚即売のワケ」と「82年ぶり新天地開催の意義」 に続く
【連載】なぜ中国は卓球が強いのか?
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