サッカー,W杯,ワールドカップ,冨安健洋

サッカー日本代表“史上最高のセンターバック”冨安健洋に刮目せよ

写真:Mike Hewitt /getty images sport

(大会直前のため再掲載)

2022年11月から行われるカタールワールドカップ(W杯)で、日本はE組に入り、ドイツ、スペインといった世界の強豪国相手に戦いを挑むことになる。そこで、サムライブルーの一員として本大会での活躍が期待される選手たちにスポットを当てて、そのキャリアを振り返っていきたい。今回紹介するのは若くして日本守備陣の中核を担い、イングランドの名門アーセナルでもそのプレーぶりが認められている冨安健洋だ。(文・井本佳孝)

日本についに現れた世界レベルのDF

1998年生まれの冨安は福岡出身で、アビスパ福岡のユースを経て2016年にトップチーム昇格を果たした。ボランチも務めていた選手であったが、“アジアの壁”と呼ばれた井原正巳監督の指導も受けセンターバックとして頭角を現すと、2018年にベルギー1部のシント=トロイデンに加入し、海外挑戦をスタートさせた。すると、2018-19シーズンはチームのレギュラーとしてフル稼働して存在感を示し、イタリア1部のボローニャに移籍。“守備の国”イタリアの地でのチャレンジに挑んだ。

セリエAに環境を移した2019-20シーズンからの2年間ではシニシャ・ミハイロビッチ監督のもと右SB、CBのレギュラーとして重用されどちらのポジションでもクオリティの高いプレーを披露した。ミランなどから獲得オファーが伝えられるなど、着実にその評価を高めイタリアの地でも冨安の名は知られるようになる。

そしてステップアップを目指した2021-22シーズンにはプレミアリーグ“ビッグ6”の一角であるアーセナルへ移籍し、イングランドに上陸する。すると、加入1年目から右SBのレギュラーポジションを掴み、不調にあえいでいた名門を支える一人となった。ミケル・アルテタ監督のチームにおいてなくてはならない選手として復権のキーマンとなる働きぶりを見せている。

最終ライン全てを高次元でこなす

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写真:Philip_Willcocks(アーセナルの本拠地、エミレーツ・スタジアム)

冨安は188cmの長身を活かした空中線での強さや右足、左足を遜色なく使いこなすことができ、ビルドアップの能力も高い。加えてスピードを活かして1対1でも無類の強さを発揮し、プレミアリーグではソン・フンミン(トッテナム)やラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)といった世界レベルのドリブラー相手にも臆さない。さらに、最終ラインをどこでもこなすマルチロールぶりも冨安の評価を高めている一つの要因である。

そんな冨安はまだ23歳の若さながら、日本代表としても不動のレギュラーとして吉田麻也の相方を務め、クラブチームにおいても一歩一歩着実に実績を積み重ねてきた。井原や中澤佑二、田中マルクス闘莉王、吉田といった日本歴代の名ディフェンダーたちを上回り、“日本史上最高のDF”になる期待を抱かせる。W杯やチャンピオンズリーグ(CL)といった大舞台を経験することで、さらにスケールアップした世界レベルのDFとして名を残すことも十分視界にとらえている。

冨安のようにSB、CBをこなす選手としては若手時代にSBを務め、その後CBとして世界最高レベルのDFに君臨したセルヒオ・ラモス(パリ・サンジェルマン)がいる。また、アーセナルにおいての冨安は、サイドに張るだけでなく、時にボランチのように内側のポジションをとり、味方をサポートしつなぎ役としての役割も担う。ジョアン・カンセロ(マンチェスター・シティ)が近年では“偽サイドバック”と呼ばれる、ポジションにとらわれないSB像を作り上げているが、冨安もまた一つの役割にとらわれないハイブリッドな選手として進化を続けている。

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