画像のSNS投稿(UGC)解禁はJリーグを救うのか

SNSとサッカーは相性がいいのか

ところが、そんな大きな第一歩の裏側では、こんなことも起こっていた。

とあるJ1リーグの対戦カードでオフサイド疑惑が持ち上がり、オフサイドに見える角度の画像や動画が多数アップされたのだ。これに対し、この日VARを担当していた家本政明審判が、自身のツイッターでこのようなコメントをしていたのを目にした。

今回は、現場に立ち会ったプロの審判からの説明があり、多くの人は納得したようだが、毎回このような説明があるわけではない。

プレーの一部を切り取った画像や審判が見る角度とは異なるアングルからの映像がジャッジについて議論をするのに適した素材でないということは、冷静に考えてみればわかることだとは思う。しかし、このようなプレー画像が投稿されるのはたいてい試合直後の興奮状態の時である。

普段は冷静な人でも、思わずこのような投稿をしてしまったり、それに乗っかって拡散してしまったり、ひどい言葉を書き連ねてしまったりすることもあるかもしれない。

UGCのSNS投稿を認めるということは、当然ながらこういった投稿も許容することになる。

職業柄さまざまな競技のファンの方々のSNS投稿を目にする機会があるのだが、Jリーグは昇降格があり、1点の重みが大きいということもあり、他の競技に比べプレーやジャッジに対するネガティブな投稿が多いように感じる。

画像の投稿を許諾することが、これをさらに加速させる可能性がないとは言えないのではないだろうか。

UGCは「愛」を表現する手段

冒頭で私はUGCが公式コンテンツに比べ優れている点を2つお伝えしたが、実はUGCにはもう1つ優れた点がある。

それは作り手の「愛」が感じられるというところである。SNSに投稿されるUGCは、それが選手の写真にせよ、プレーの切り抜きにせよ、ジャッジへの物言いにせよ、すべては「愛」が起点になっている。だからこそ、見た人の行動を変えるほどの影響を与えられるのだと思う。

プレーの切り抜きはともかく、ジャッジへの物言いに「愛」という言葉は似つかわしくないと思うかもしれない。しかし、これも応援するクラブが好きで好きで仕方がないからこその行動なのである。

「正義の反対は悪ではなく、また別の正義」という言葉のとおり、争いのほとんどは正義と正義のぶつかり合いなのである。

ちなみに、Jリーグがルヴァンカップ決勝で掲げたSNSガイドラインでは、下記のような投稿が禁止されている。

■ Jリーグが許諾していないこと

  • 他者の迷惑になるような撮影行為又は投稿
  • Jリーグ及びJクラブの役職員並びにJクラブの選手・監督、審判、その他Jリーグ又はJクラブ関係者を特定し、社会的評価を損なわせる目的での投稿
  • 他者の肖像権を侵害する、又は侵害のおそれがある投稿
  • なりすまし投稿
  • 動画のライブ配信
  • 営利目的での利用。ただし、YouTube収益プログラムやアフィリエイト広告などコンテンツに付随される広告からの収益が見込まれる投稿については、「営利目的での利用」に含まれないものとします
  • その他、許諾していること以外での利用、Jリーグ又はJクラブに対しての愛の無い投稿

 

最後の一文を読み、唸ってしまった。

「愛」の解釈は人それぞれである。また、愛情表現もまた千差万別である。あえてこの部分を細かく定義しなかったことに、Jリーグとサポーターが長年築き上げてきた信頼関係が垣間見えた気がした。

UGCのSNS投稿解禁が、果たして吉と出るか凶と出るか。Jリーグの未来は、私たち一人一人の解釈とその表現に委ねられていると言っても言い過ぎではないのではないだろうか。

■プロフィール
江藤美帆(えとう・みほ)

Jリーグ「栃木SC」マーケティング戦略部長。外資IT企業などを経て、広告代理店在籍中にSNSマーケに特化したWebメディア「kakeru」を立ち上げ初代編集長に就任。「インスタジェニック」などのトレンドワードを生み出す。その後スマホで写真が売れるアプリ「Snapmart」を開発。上場会社に事業譲渡後、代表に就任。2018年5月より現職。

関連記事