文京区からJ1の舞台へ。東京ユナイテッド指揮官・福田雅の奮闘と描く未来
<写真提供:TOKYO UNITED FC>
前編では現場の選手、そしてヘッドコーチらの声を中心にチームの現状を紹介したが、その中で選手達がこのTOKYO UNITEDというチームに持つ期待感を大きく口にしていたのが印象的だ。そして、彼らの口からたびたび上がってきたのが、トップチームの指揮官である福田雅監督の名前。後編ではチームの発起人の1人でもある彼が描いている未来像や、その過程にある”越えなければいけない壁”について、焦点を当てていく。
東京23区に根ざしたビッグクラブへ
「大学のコミュニティが母体になって上を目指すという形はなかったので。僕らには思いつかないような考えだったなというのがあった」
林健太郎ヘッドコーチがこう語るが、海外では大学発のクラブもある一方で、日本にはまだその事例は少ない。そんな中、東京ユナイテッドは慶應義塾大学ソッカー部と東京大学ア式蹴球部のOBが手を組み、大学のコミュニティをベースとしたチームを立ち上げた訳である。
とはいえ、そこにはしっかりとJリーグの理念にもある「地域密着」という部分にも立脚している。基盤の1つとなった東京大学が存在する東京都文京区をホームに置くことで、将来的には地域コミュニティとの連動も視野に入れ、東京の中心部である23区に経済効果を生むことができる存在としてその価値を高めようという目論見がある。
“サッカーの社会的価値を高める”という部分にチャレンジをしているわけで、携わるメンバー、プレーをする選手たちにもサッカー“だけ”の人間になるのではなく、“一流の社会人”となることを説いているのもこのクラブの大きな特徴だ。
「理念や思いには共鳴できますね。サッカーを通して人を作るとか、そういう面がこのクラブにはありますし、福田さんは『サッカーをやっているやつが馬鹿だと思われるのが嫌だ』と言っているんですよね。そういうのは僕も感じます」中心選手である川越勇治はこう、語る。
主将の黄大俊は「福田監督に色々教えてもらった」と語るが、Jリーガーを引退後にこのクラブに加入し、選手としてプレーする傍ら事務局での業務を経験。そして、スポンサー起業の1つである文化シヤッターへの就職が決まった。
いわゆるオンザピッチの結果だけでなく、ビジネス面での成功や人材育成という点についても大いに力を入れていることが、目に取れる。
現状のところは“及第点”
全てが良い方向に進んでいるように見えるが、実際のところ首脳陣はどう考えているのだろうか。福田雅監督はこう語る。
「チームとしてはオンザピッチとオフザピッチの両方の成功がなければいけない。オンザピッチでは最速の結果を出して昇格をしているので成功と言えるかもしれないですけど、オフザピッチでの完成形は無いんです。そういう意味で、上手く行っていないかと言われれば上手く行っていないことはないのだけれど、では上手く行っているか、満足しているか、と言われればそうではない。まあまあ、及第点じゃないですかね」
東大、慶大という母体を持つことで外野の人間からは華やかに見えるのは必然的であり、その”ブランド力”ゆえにチームを成長させるのも難しくないように考えている者が少なからずいるのは事実だろう。
しかし、トントン拍子でここまで来たわけではないと、福田監督は続けて言う。
「周りが思っているほど楽ではないです。すごく上手く行っているように見えるかもしれませんが、プロセスはしんどかったですよ。正直、僕らは何もビジネスではやっていないんですから。周りが思っているほど、僕らは特別なことは出来てません。」
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