
なぜ、無名の若手がFリーグ王者を倒せたのか?小川亮監督のマネジメント力|全日本の爪痕
プロを目指す若手たちが、フットサル界に大きなインパクトを与えた。
第30回全日本フットサル選手権の2回戦、ペスカドーラ町田の育成組織にあたるアスピランチがそのシーズンのリーグ戦で初優勝を飾ったバルドラール浦安を打ち破ったのだ──。
フットサルに限らずどの競技でも下剋上は往々にして起きるものだが、言わば二軍の選手がその年のチャンピオンに真正面から戦い、勝利することは異例の出来事。
チームを率いる小川亮監督は成長と結果の両方が求められるなかで、“これからの選手たち”になにを授け続け、この歴史に残るジャイアントキリングを起こしたのか。
取材・文=川嶋正隆、舞野隼大
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});
浦安戦中、選手は「楽しい」と言っていた
──今大会はベスト8で敗退となりました。率直に感想はいかがですか?
準々決勝のボルクバレット北九州戦は、勝ちたい思いが強かったので勝たせてあげたかったですね。もう1試合、この舞台で試合をさせてあげたかった。サテライトチームですけど、非常に悔しい敗戦でした。
──勝ち進んでいたらベスト4でトップチームとの直接対決の可能性もありました。
そういうものも含めて、あと一つなんとか勝ちたかったなと。選手たちにとってもベスト4に上がることで、また違った景色を見ることができたはず。おこがましいですが、そこへ連れていってあげたかったなと思いますし、行くだけのポテンシャルはあったと思います。全員が今すぐにトップチームで活躍できるようなレベルではないですが、それでもあと少しでベスト4に辿り着けたという感覚はあります。
──2回戦ではFリーグの新王者であるバルドラール浦安に勝利を収め、アスピランチは大きな爪痕を残したと思います。
この大会期間中だけでも成長が見られたと思います。今シーズンのFリーグで一番強かったチームと試合ができて、そこに勝つことができた。相手は大きなことを成し遂げた後の大会でメンタル的、フィジカル的にもきつい状況だったと思います。それでも粘り強く戦い、勝利できたことはすごく自信になったはず。
僕たちはサテライトのチームですが、トップに行った時にすぐに活躍できる選手を育てていくことが使命です。うまい選手やいい選手ではなく、戦える選手を育てる。厳しい言い方をすると、浦安さんのようなチームともできて当たり前の状態をつくらないといけません。そういう思いをもって彼らを見てきたので、そこに手がかかったのはすごく良かったと思いますし、選手たちがこの1年間で必死に取り組んでくれた結果だと思っています。
──とはいえ浦安に勝つことは容易ではなかったと思います。あの場でなにが起こったのでしょうか?
まさに、勝ちを目指してはいましたが、不安なことが多かったです。ただ、試合を通してアスピランチの選手たちのうまさや強さを感じましたし、選手たちからは「楽しい」というようなポジティブな声が出ていました。その時にちょっと頼もしく感じましたし、すごく成長しているなと。そういうものを感じて、「なにか起こせるかも」ということを感じるようになりました。
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});
「できるよ」。選手を勇気づけた、指揮官の言葉
──あの状況を楽しむことができるのは、一種の才能ですね。
割といろいろなことを楽しみに変えられる選手の集まりですね。そもそもなぜフットサルをやっているのかというと、この競技が好きだから。もちろん好きという気持ちだけでは戦えない世界ですが、そういう思いを持ちながらもしっかりと取り組んできました。その過程を見てきたからこそ、浦安戦の選手たちはすごく頼もしく見えましたね。
──一方で、監督から選手たちに特別な働きかけはありましたか?浦安を倒すための秘策を伝えたなどは?
めちゃくちゃ浦安の対策をしたかというとそうではないですが、ポイントはしっかり伝えました。浦安はゴレイロの活用だったり、ゴールを取れる選手が数名います。そういったケアしなければいけないポイントを伝えて、そこを意識したトレーニングをしてきました。
だから選手たちもやられてはいけない場面とやられてもいい部分の割り切りができたと思います。ここまではいいけど、ここから先はやられたらダメみたいな、共通認識を持って戦えるように伝えました。
──そういったプレー面以外では、どんなアプローチを選手にされましたか?
特にハッパをかけるようなことはしませんでした。ただ、伝えたことは「できるよ」ということ。勇気を持って前に出れば、できることは必ず増やせるし、この1年間でそういう引き出しは増えた。だから「できるよ」という話はしましたね。
浦安さんが相手だからといって、距離があるのにボールをはたいたり、前を向かなかったり。そういうことはなしにしようと伝えました。ちゃんとチャレンジした上でプレーする。「必ずできるから、変に意識しすぎないほうがいいよ」っていう話はみんなにしました。
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});
Follow @ssn_supersports