自慢の足が動かなくなっても…車いす大学生が抱く、中大サッカー部で成し遂げたい夢
2022年4月、中央大学サッカー部は、株式会社リツアンSTCとのスポンサー契約を発表しました。契約内容にはユニフォームへの企業ロゴ掲載も含まれており、中大サッカー部のユニフォームにスポンサーがつくのは、創部史上初のこと。この契約を主導になって進めたのは、中央大学サッカー部 営業部で活動する持田温紀(もちだ・はるき)さんです。
中学時代までは自身もプレーヤーとして活動していた持田さんですが、高校生のときに事故に遭い、脊髄を損傷。下半身に障がいを抱え、以降は車いすを使って生活しています。その後、持田さんは中央大学法学部に進学。とある授業がきっかけとなり、サッカー部に加入することを決断しました。
その後、中央大学サッカー部はリツアンSTCのほか、株式会社タイカとのパートナーシップ締結や、デロイト トーマツ グループとの共同研究を開始するなど、取り組みの幅を広げています。営業部の一員としてピッチ外で奮闘し、サッカー部を支える持田さんに、これまでの人生や営業部での活動、将来のビジョンについてお聞きしました。
小さいころは、頭脳派サッカー少年
サッカーとの出会いは、幼稚園の頃。親に勧められて園内のサッカーチームに入ったことがきっかけです。小学生になると、かつて小林悠選手(川崎フロンターレ)なども所属していた町田JFCに入り、進学後は中学のサッカー部でプレーしました。
プレースタイルは、スピードで仕掛けるタイプでした。ポジションはサイドハーフです。中学時代は、プレイヤー以外の経験も積むことができました。というのも、チームの方針が少し特殊で、練習メニューや試合の戦術を選手が考えていたんです。僕は“選手監督”として、戦術や選手交代を考えていました。当時から、頭を使って考えることが好きでしたね。
そして、高校1年の夏に事故に遭いました。登校中の自転車事故で、脊髄を損傷してしまったんです。その後は、調子が良くなったり悪くなったりを繰り返しています。まったく歩けないわけではありませんが、数年前から車いすを使って生活しています。
絶望も、希望もサッカーがあったから
当時は“絶望”していましたね。自慢の足が使えなくなり、大好きなサッカーができなくなってしまったので落ち込みました。
ただ、前を向くきっかけになったのもサッカーでした。チームメイトが千羽鶴を持ってお見舞いにきてくれたり、1年半と長い入院生活の間もずっとサッカーを見て楽しんでいました。
あれほど深く落ち込んだのも、逆にそこから前を向くことができたのも、サッカーがあったからです。
週末はリハビリがないので、スタジアムに行くことができます。現地で試合を見ると気持ちがスッキリして、「やっぱりサッカーっていいな」と。
よく見に行っていたのは、地元のFC町田ゼルビアです。試合だけでなく、練習場にも行きました。印象に残っているのは2019年。当時所属していたロメロ・フランク選手と一緒に写真を撮ってもらい、SNSに投稿しました。すると、本人から「僕も頑張るから、あなたもリハビリを頑張ってください」と返信がきたんです。
この話には続きがあります。残留争いに巻き込まれていたその年の最終節、自力での残留を決めるには勝利しなければならない中、相手にリードを許した状況で迎えた終盤に、ロメロ選手が途中出場しました。それからチームは同点に追いつき、なんとロメロ選手の決勝点で勝利したんです。負けているなか途中から出てきて、めちゃくちゃ走って、最後にはゴールも決める。その姿を見て、勇気をもらいました。
<2019 明治安田生命 J2リーグ第42節 モンテディオ山形VS町田ゼルビア>
*ロメロ・フランク選手は後半31分に途中出場し、決勝点をあげた。*
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