「僕らは選手村。枕も違うんだ」銅メダルに涙を流したメキシコの重鎮GKが日本での“苦しさ”を吐露<2021百選>
2021年のスポーツ界における印象的なシーンを『THE DIGEST』のヒット記事で振り返る当企画。今回は、東京五輪の男子サッカーで銅メダルを獲得したメキシコのベテラン選手をピックアップ。母国から離れた地で大舞台に臨んだ彼が、試合にかけていた想いとは?
記事初掲載:2021年8月7日
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“ホームチーム”との激闘を制し、銅メダルを掴んだメキシコ。そのなかでチームの精神的支柱となったギジェルモ・オチョアは感慨に浸っているようだ。
8月6日、東京五輪のサッカー3位決定戦で、U-24メキシコ代表はU-24日本代表と激突。開始13分にPKで先制点を奪うと、23分と58分にいずれもセットプレーからヘッドで追加点をゲット。78分に三笘薫の個人技からの鮮烈な一撃を浴びるも、3-1で逃げ切った。
グループステージで1-2と敗れていた難敵に、仕返しとばかりに快勝したメキシコ。そんな大一番での開催国撃破に小さくない貢献をしたのが、36歳のベテラン守護神オチョアだ。
今大会にオーバーエイジ枠で参戦したオチョアは、安定感のあるセービングを披露。そして何よりも、抜群のリーダーシップで統率し、チームを最後尾から支え続けた。
地元メディア『TV Azteca』の取材に応じたオチョアは、試合後に「僕の子どもたちが大きくなったときに、『パパはオリンピックのメダリストだ』と言えるようになる。手ぶらでメキシコに帰りたくなかった」と胸中を明かした。
また、勝利後に涙を流した彼には、“ホスト国”である日本に負けられない想いがあったという。
「日本に来る前に息子と別れたときに、『パパ、また行っちゃうの』と言われて胸が張り裂けそうだった。僕らはファンやメディアが目にしていないものを抱えている。ひどい食事(好きなものを食べられない意味)、長距離の移動、家庭での問題とかそれは色々だ。今大会に入ってからも、日本はホテルに宿泊していたけど、僕らは選手村で、枕を2つ貰うことすらできない。選手1人につき枕ひとつだからね。
多くの批判を受けたが、僕らは止まらないよ。エリートでいることは簡単ではない、フィジカル的、何よりもメンタル的にかなりのものが要求される。最後まで残ることを狙っており、それを実現した。これは家族のためのメダルにしたい」
様々な問題を抱えながらも最後に勝利し、メダルを持ち帰ったオチョア。そんな“パパ”の存在を息子は誇らしく思うはずだ。
構成●THE DIGEST編集部
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