スペシャルコンテンツ 永里優季 YUKI NAGASATO Vol.2「永里優季が発信する新しいアスリートの生き方」
いかに性別を意識させないか
——今まさに世界的にもそうした流れができつつあって、常識や境目を超越する存在が出てきていますよね。永里選手の今回の挑戦もその潮流に乗ったアクションだと思います。今後、こういう挑戦は増えていくと思いますか? そうなってほしいと思いますね。そういう思いを持っている人も少なからずいると思います。ただ、そうしたことを受け入れる側の体制が整っていないことが問題だと思っています。だから今回の私の挑戦を受け入れてくれたクラブをもっと評価してほしいですね。 ——やっぱり受け入れるのは簡単ではない? 簡単ではないと思いますね。更衣室ひとつとっても男子選手は外で普通に着替えているけど、じゃあ私はどこで着替えればいいのか。そういう問題が出てきますよね。 ——確かにそうですね。永里選手はどうしているんですか? 私はその場では着替えないですね。帰りに車の中で着替えています。 ——そもそも男子と女子が一緒に競技をやるということが想定されていませんよね。 しかも県リーグなので試合のときにロッカールームというのもまずないんです。でもそこは対応していけるので大丈夫ですけど、これからもっと上を目指していく中で運営側にそういった対応を求められるシチュエーションも出てくる可能性はあると思います。 ——永里選手のように前代未聞のチャレンジをする人が出てくることで、それまで浮かび上がらなかった課題が出てきて、それを解決していく流れになっていきそうですね。 そこで解決していこうとなるか、拒絶するか、どちらかでしょうね。 ——ここまでで競技面だけに限らず、女性が男性社会でプレーするハードルは高いと思いますか? いろいろな面で相当な意識がないと男性社会の中で女性がプレーするのはかなり難しいのかなと感じています。もしかしたら私だからできているのかもしれない。私はプレーしているときに自分が女性という意識があまりないので。 ——そのかなり厳しいと感じている中でプレーしていくには何が必要だと思いますか? おそらく性別差があることに対して、いかに性別を意識させないかということが女性側に求められると思います。コミュニケーションを取るときでも一人の人間として見てもらえるような振る舞いができないと、味方にも遠慮されがちになりますよね。だからこちらも遠慮せずに一人の対等な人間としてコミュニケーションを取るようにしています。練習でも女性の意識を持たずにタックルにきたり、コンタクトプレーしたり、遠慮させない配慮が必要になると思います。 ——実際に遠慮というのを感じることはありますか? プレー面では何人かの選手はまだ遠慮しているなと感じます。ただ、大体の人は女性だからというより、有名人だからというところでの遠慮というのを感じますね。 ——そこを取っ払うための工夫はしています? コミュニケーションの部分で自分がよりオープンであることは常に練習中に出しています。そういうコミュニケーションが取れるチームメイトも増えてきていますね。私は一対一のコミュニケーションは得意なんですけど、一対大勢が苦手なので、一人ずつ少しずつという感じで広げています。10歳くらい下の世代が中心のチームで、その年代の選手と関わる機会が今までなかったのでそう言った意味でも手探りでやっています。 ——アメリカと違って日本ではオープンなコミュニケーションに慣れていない選手も多いと思いますが、そこはどう感じていますか? アメリカ人と日本人のハーフの選手がいるんですよ。ベガルタ仙台のジャーメイン良選手の弟で、ジャーメイン・アレックス正という選手なんですけど彼の存在が大きいですね。彼がアメリカ的なノリで接してくれるので、それがチームに波及して、そのノリで絡んできてくれることが増えてきています。 ——チームの雰囲気も変わってきました? 雰囲気としては結構ふざけたノリにはなってきていますね。ただ、日本人はそういうノリに慣れていない部分はあります。でもより良いパフォーマンスのことを考えると、あまり真剣に過ぎても良いプレーは出ないんですよね。だから少しそういう楽しい雰囲気を出していくことは必要だと思っています。そこは男女関係ないところですけど、やり過ぎない程度に自分がいいと思うことはどんどん出していけたらなと思っています。 ——こう話しているときもそうですが、永里選手は自分自身にすごく自信を持っているオーラを纏っていますよね。だから違う属性の人の中に入っても主張できるし、共存できるのかなと。何かこれまでメンタリティの変化はあったのでしょうか? 自分がどう生きたいかというのが昔よりもクリアになっているのが大きいと思います。自分のどんな価値観を大切にしてサッカーをやっていきたいか。どういう生き方をしたいか。どういう自分でありたいか。そこの解像度がものすごく上がっているから自分に自信が持てるようになっていると思います。それがあって自分が幸せだと感じているから余計に周りの目や声が気にならなくなっていますね。
Vol.1「なぜ、永里優季は男子サッカーに挑戦するのか?」
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https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/5fae4fc9cfbdd9260a02ebc3
Vol.3「サッカーをするだけがサッカー選手じゃない」
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https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/5fae4ff377a98b033c545762
■プロフィール
永里優季(ながさと・ゆうき) 1987年7月15日生まれ。神奈川県厚木市出身。なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)として2011年のFIFA女子ワールドカップ優勝、2012年のロンドンオリンピック銀メダル。2009年から海外に活躍の場を移し、ドイツ、イングランド、アメリカで活躍する。2009-2010年にはUEFA女子チャンピオンズリーグで優勝。2020年9月より神奈川県2部リーグのはやぶさイレブに期限付き移籍し、男子サッカーに挑戦する。 https://note.com/yukinagasato
■クレジット
取材・構成:Smart Sports News 編集部
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