南野拓実とも欧州を席巻 バロンドール筆頭候補の“最強ストライカー”、ハーランドを解説

ハーランド,サッカー

写真:ハーランド(提供:ロイター/アフロ)

現在の世界のサッカーシーンにおいて最強のストライカーは誰か。昨年のカタール・ワールドカップ得点王のフランス代表FWキリアン・ムバッペや、昨季のバロンドール受賞者で、レアル・マドリードのエースに君臨するカリム・ベンゼマなどが候補があがる中、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドを現時点での“最強ストライカー”に推す者は多いだろう。今季加入したマンチェスター・シティで得点を量産する新世代の新たな怪物について、これまでの経歴も交えつつその凄さを検証していきたい。(文・井本佳孝)

父親がイングランドでプレー

クリスティアーノ・ロナウド,マンチェスター・ユナイテッド,サッカー,サッカーワールドカップ

ノルウェー代表としてプレーするハーランドだが、出生地はイングランドのリーズ。父親のアルフ・インゲ・ハーランドもリーズ・ユナイテッド、マンチェスター・シティなどに所属していたサッカー選手であり、2000年に生まれてから3歳までを過ごした。ノルウェーに帰国後はブリンFKのアカデミーで育ち、2017年にはモルデFKと契約。ヨーロッパ・リーグに初めて出場するなど国際大会も経験し、欧州のクラブから関心をもたれる存在へと台頭していく。

ハーランドが欧州において本格的にその存在を認知されたのが、2019年1月に加入したオーストリアの強豪レッドブル・ザルツブルク。日本代表FW南野拓実(現ASモナコ)、韓国代表FWファン・ヒチャン(現ウルヴァーハンプトン)と前線で強力トリオを形成し攻撃を牽引。日本のファンにも印象深いのが、2019-20シーズンの欧州チャンピオンズ・リーグのリヴァプール戦。1ゴール1アシストと躍動した南野からのお膳立てでハーランドも得点を奪うなど、CLの舞台でも存在感を示していく。

南野拓実
写真:南野拓実(Photo by Andrew Kearns - CameraSport/Getty Images)

2020年冬にはボルシア・ドルトムントへ移籍し、ドイツ・ブンデスリーガへと戦いのステージを移した。デビュー戦からハットトリックを達成し、リーグ戦後半だけで13ゴールといきなり猛威を振るう。続く2020-21シーズンに27ゴール、翌シーズンにも22ゴールとブンデスリーガで着実に結果を残し、CLの舞台でも19歳212日と史上最年少で2桁得点を記録した。次世代を背負うヤングスターとしてレアル・マドリードやバルセロナなど欧州のメガクラブが争奪戦を展開したが、2022年夏に父親がプレーしたマンチェスター・シティを選択し、プレミアリーグへと“上陸”した。

フィジカルにスピードを合わせ持つ

世界最高峰のプレミアリーグに初挑戦、ジョゼップ・グアルディオラが率いるイングランド王者は移籍1年目の選手が馴染むのは容易ではない。しかし、背番号9を託され新たなエースとして招き入れられたノルウェーの怪物にはそんな心配は無用であった。開幕のウェストハム戦で2ゴールの圧巻デビューを飾ると、第4節、第5節には2試合連続ハットトリックを挙げるなど開幕から記録的なペースでゴールを量産。第33節のアーセナル戦で今季のゴール数を「33」に伸ばし、現行のリーグ戦での最多得点記録を塗り替えた。

ハーランドは身長195cmというフィジカルにスピードを合わせ持ち、相手DFとの駆け引きから抜け出す一瞬の速さに加えてゴール前での繊細さも備える。22歳ながらFWとしてはすでに世界トップクラスの完成度を誇っており、得点パターンも豊富でどこからでもゴールが奪える。また、ポストプレーから周りを生かす能力にも長けており、ストライカーとしてのエゴは持ちつつ、ケビン・デ・ブライネやジャック・グリーリッシュといった名手とも好連携を見せる今季のシティでのプレーぶりからもその戦術理解度の高さは窺える。

キリアン・ムバッペ,サッカー
写真:キリアン・ムバッペ、Kylian Mbappe(提供:AP/アフロ)

そんなハーランドだが、ドイツのウェブサイト『Transfermarkt』が算出した現在の市場価格は1億7000万ユーロ(約247億円)でPSGのムバッペの1億8000万ユーロ(約261億円)に続く2位につけ、選手としての価値はすでに“世界No.2”の評価を得ている。24歳のムバッペと22歳のハーランドどちらが先にバロンドールを受賞し世界のサッカーシーンの主役に躍り出るのかは、これからのサッカーシーンの流れを見ていく上で興味深い。リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドのようなライバル関係に発展するかは楽しみである。

CLでも得点王をほぼ手中に

ハーランドはリーグ戦では最多ゴール記録を更新したが、CLの舞台でも準々決勝終了時点で12ゴールを奪い得点ランキング首位に立つ。2位以下を引き離してることから得点王の可能性も十分で、シティがレアル・マドリードとのCL準決勝を勝ち進み、優勝までたどり着くならバロンドールのタイトルも視野に入ってくる。イングランド移籍1年目に残したインパクトはそれだけ衝撃的なものであり、チームのCL制覇とともに個人としても勲章を手にする可能性は残している。

今季のプレミアリーグで驚異的なペースでゴールを量産し輝きを放っているハーランド。ノルウェー、オーストリア、ドイツとステージを徐々に変えながらそれぞれで結果を残し、自らが生まれた地であるイングランドでも成長を見せながら選手としてのステータスを上げてきた。現在“世界最強ストライカー”と呼べるノルウェーの怪物が、さらなる爆発で世界のサッカーシーンの主役に君臨するか。そのプレーぶりからは目が離せない。