田尻稲雄,ラグビー

ノーサイドの精神で一生の友達になる

前回、ラグビーを通じて子どもたちに夢や憧れを大きく抱いてほしいと語ってくれた北海道ラグビーフットボール協会の田尻稲雄会長。今回は、自身もラガーマンとして競技にどっぷりハマった経験から、ラグビーの魅力、子どもたちにおすすめしたいポイントを話してくれた。(取材・文/二株麻依)

ノーサイドとは

ラグビー,早明戦,田尻稲雄

――よくラグビーで言われる「ノーサイド」とは。改めて教えてください。

田尻稲雄(以下、田尻):ラグビーは試合終了の笛が鳴ると、敵・味方という関係がなくなり、全員仲間だという認識でお互いの健闘を称え合うんです。その精神のことを「ノーサイド」と言います。昔は結構試合中に殴り合ったことがあったり、踏んづけられたりとかあったんだけど。それでも終わったら一緒に酒を飲んで「あんなパンチじゃ全然きかなかった」とか「あの踏み方は俺にはダメだとかね」とか話して。ラグビーはそういうコミュニケーションができるスポーツなんですよ。だから早明のOBの人たちが集まっても、現役時代、思いっきり力込めてやりあった者同士だから、いつまでたっても友達感覚になれるんです。ラグビーは、どこの地域、学校、チームでやっていても良いんですよ。競技をやってることだけで友達になれるというスポーツだと思います。お互いにリスペクトしますから。

――相手をリスペクトする。それは競技の特性から来ているのでしょうか。

田尻:そうですね。ラグビーは、足が速い、力が強いなど、いろんな特長を持った人たちが一緒になって力を合わせてチーム力を上げていくというスポーツなので、お互いに助け合う、お互いに尊敬し合うという精神があります。相手チームに対しては、自分たちの力をもっと引き出してほしいというぐらいの気持ちで戦い合うので、お互いに尊敬し合うという、そうしたリスペクトする気持ちをとても大事にするスポーツなんじゃないかなと思っています。

ラグビーは社会の縮図

ラグビー,早明戦,田尻稲雄

――対戦相手も仲間もリスペクト。心が強くないとできないことですよね。

田尻:自分がスーパースターで、自分ひとりでどうにかできるというスポーツでは全くないので。例えば野球みたいに、バッティングがものすごく鋭くて、バッターとして点を入れるとか、ピッチャーとして点とられないよう守るとかいう話じゃなくて。ラグビーはオールマイティで全部やらなきゃならない。そういう面で、「お前は」とチームメンバーを責めても仕方がない部分がたくさんあるんですよ。「お前もだろ」っていう話になっちゃうから。強いチームを作り上げていくと、良いところと悪いところをちゃんとお互いに分かった上でカバーし合うことをしないといけません。相手は弱いところばかりを突いてきますから、それをどういう形で隙のないよう補っていくかをみんなで考えていきます。まさにそういう面で「オールフォーワン、ワンフォーオール」という言葉がはまるんですよね。

――絆はとても強くなりそうですね。

田尻:人間の社会と一緒で、頭の良い人だけで社会が成り立つわけじゃないし、頭の悪いやつだけでも成り立つわけじゃないから。ずるいやつがいても、賢いやつがいても、良いやつがいても、それがひとつの社会だから。ラグビーは、そういう縮図みたいな感じのスポーツだと思うんですよね。

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