これは100ｍが終わった後の、ウイニングランのシーンです。
選手はトラック上を1周移動していきますが、カメラマンは機材を持っているので同じ距離を付いて行って走るのが相当にきついんです。僕らはさらにトラックの外周を移動しなければならないので、時間もかかります。
これはちょっと追いかけて撮るのはきついなと途中でもう見限って、むしろ100ｍのスタート地点のほうに向かっていって、1周してくるのを待ち構えようと思いました。
そうしたら、付近の一角に、ジャマイカ人の応援のお客さんたちがいました。ボルト選手も熱狂的なお客さんのところには、わざわざ近づいてってハイタッチとかもしてる様子も見えたので、「ここに来るんじゃないか」と思い、僕も狙いを定めました。
案の定ボルト選手が来てくれて、これ、すごく踏ん張りながら撮りました。僕の後ろもカメラマンが一杯で、ものすごくもみくちゃにされながら。僕とボルト選手の間には境がないので、もうこれ以上押されると触れちゃいそうな感じでした。
組写真の最後は、ボルト選手得意のあのポーズで完結するなと思っていました。だからこうやって優勝したことを観客と一緒に盛り上がって喜んでくれたのは想定外でした。この1枚を勝利の写真として、使ってみたいと思います。
▼田中伸弥（たなか・しんや）
1977年東京都生まれ。
成安造形大学芸術学部芸術学科写真コース卒業。
日本ジャーナリスト専門学校卒業。
JCII主催水谷塾6期生。
大学でアートとしての写真を学び、その後専門学校でスポーツ写真の基礎を学ぶ。水谷塾にて更にスポーツ写真の知識や技術を身に付け、現在はフリーランスのフォトグラファーとしてサッカーを中心にジャンルを問わず様々なスポーツを撮影している。
ANSP（日本スポーツ写真協会）会員
AJPS（日本スポーツプレス協会）会員
AIPS（国際スポーツプレス協会）会員
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