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プロゴルファーにしたい、なりたい子供ほど勉強が大事!? その理由とは
コロナ禍における密になりにくいスポーツ・レジャーとして、ゴルフブームが続いている。子どもに教える人も多いようだが、どんなスタンスで臨めばいいのか。雑誌ALBA(アルバトロス・ビュー、隔週刊)の園山隆文編集長がヒントを語った。
◆若返りが加速する日本女子ツアー
それほどゴルフを知らなくても、日本女子ツアーの“黄金世代”という言葉を耳にしたことがある人は多いはず。渋野日向子プロを筆頭にした1998年度生まれの世代で、勝みなみプロ、小祝さくらプロ、原英莉花プロなどすでにツアー優勝者11人と、その成績は圧倒的。
実はその2年あとの世代も相当注目されていて、女子ツアーはどんどん若返りが加速しています。
この世代の選手たちは、小学校低学年からゴルフを始めているのが一般的。高校や大学からゴルフを始めて、ゴルフ場の研修生を経てプロになるのが当たり前だったひと昔前とは隔世の感があります。
さて、黄金世代の彼女たちはゴルフを始めてからはわき目もふらずにゴルフ一本やりだったのでしょうか。
「ゴルフを始める子供。大切なのは、やはり勉強です」
渋野日向子プロは幼い頃からずっと宮里藍さんに憧れてゴルフを続けてきたそうです。その宮里藍さんの父でもあり、ゴルフの師でもある宮里優さんはこう話します。
「子供がゴルフを始めると、将来はプロにとせっつく親が多いですが、大切なのはやはり勉強です」
日米通算24勝、2010年には世界ランク1位にまで上り詰めた宮里藍さんの親にして、この言葉。さぞゴルフ漬けの毎日だったかと言えば、そうでもなかったのです。
「もし必死に練習しても、夢が叶わなかった時、子供はゴルフ以外の社会に出ていかなければなりません。その時、世間を渡っていける学力や教養、そして“人間性”を身に付けさせてやる。それが親の責任です。
本当にプロを狙えるのか、伸びていくのかいかないのか。それも、その子の持っている人間性次第。粘りのある心とか、希求力とか、そして誇りを持って生きることをどれだけ教わってきたか。そう3兄妹を育ててきました」
これはアルバトロス・ビューで連載中の『漫画レッスン宮里道場』でも描かれたセリフですが、読者からの、とくに小学生のお子さんがいる親御さんからの反響がとても大きかったのを覚えています。
◆試合前日の練習よりも大切なことがある
宮里家は、ゴルフよりも勉強を大切にする。ただ、それだけではなくゴルフ以外のスポーツにも積極的だったのも触れておきたいところです。
長男・聖志プロや藍さんは中学生時バスケットボール部に所属し汗を流しましたし、次男・優作プロはバスケ以外にも野球、陸上とスポーツ万能だったそう。他のスポーツで鍛えた足腰の強さがきっとゴルフに生きる。同時に、人間性の幅を広げ、視野を広げる。それが根底にあったのでしょう。
賛否両論あるかもしれません。勉強や他のスポーツをする時間、ゴルフの練習をすればプロに近づく。その考えを否定するつもりはありませんが、宮里家は、勉強や部活最優先を地でいきました。
大きい試合の前日、勉強をおろそかにしていた藍さんに、優さんは勉強を強いました。目の前の試合を付け焼刃で乗り越えるよりも大切なことがあるという思いだったそうです。
「これが入ったら優勝。もしくはシード確保。そういった本当に勝負の一打を前にして、冷静でいられる人はいません。ただ、その中でも豊かな人間性、豊かな人生を歩んできていれば、心に多少のゆとりが生まれる。そのゆとりが、最後のひとコロがりを後押ししてくれるのです」
ゴルフは人間性を育むいいスポーツとよく言われますが、ゴルフ“だけ”していても視野が狭くなる。本当に奥が深いと感じた、宮里優さんの金言でした。
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