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「誰かがやらなければいけないなら」JFAとデロイト トーマツが創る、新たなスポーツマーケット【JFAパートナー企画 #8】

2019年11月、コンサルティング業務などを展開するデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下、デロイト トーマツ )は、日本サッカー協会(JFA)と協会組織の基盤/ガバナンス強化等に関するコンサルティングパートナー契約および「JFA Youth & Development Programme(JYD)」サポーター契約を締結しました。

パートナーとなり3年目を迎えた両社。デロイト トーマツはこれまで、JFA本体だけでなく、9地域/47都道府県サッカー協会のガバナンス強化にも携わるなど、日本サッカーの発展をサポート。また、日本における新たなスポーツ市場の創出、拡大のため、豊富なビジネスのノウハウを活かした取り組みをJFAと共に続けています。

今回は、デロイト トーマツでスポーツビジネスを推進している里崎慎さんと、元サッカー日本代表でJYDアンバサダーの北澤豪さんに、これまでの取り組み、そして日本サッカーの未来について伺いました。

スポーツ産業は数少ない“成長産業”

ーまず里崎さんから、2019年にデロイト トーマツがJYDコンサルティングパートナーとなったきっかけや経緯を教えていただけますか?

里崎:デロイト トーマツは、もともとJリーグさんとアライアンスを組ませていただいていました。JFAさんとJリーグさんの繋がりから、「JFAとも一緒にやれないか」とお声がけをいただいたのがきっかけです。

せっかくなので、アライアンスを組むにしてもJリーグさんと同じことをやるだけではなく、JFAさんと組んだからこそできることがしたいと考えていました。その意味では、コンテンツホルダーとスポンサーの関係で一般的であった従来型の広告宣伝モデルとは異なり、スポンサー企業とのアクティベーションを通して、一緒に価値を作り出していく課題解決型のパートナーシップモデルは非常に魅力的でした。こうした取り組みは、当時の日本のスポーツ界では最先端だったと思います。

ーちなみに、北澤さんは里崎さんとの接点は?

北澤:一度現場でお会いしたことがあるんですが、すごくサッカー好きなんだなと感じました(笑)。言葉の節々や、楽しそうな様子から、日本サッカーへの思いを持っていただけているなと。

里崎:北澤さんと初めてお会いしたのは、JYDの取り組みの一環であるビジネスカンファレンスでした。私は、ファシリテータとして参加して、時間調整も任されたんですが、皆さんがたくさん喋ってくれて、苦労したのを覚えています(笑)。そのイベントで紹介された様々なアクティベーション事例は、スポーツコンテンツが生み出している価値の存在を多くの人に周知する良い機会になったと感じています。

ーJFAのコンテンツの中でも、JYDは草の根の活動が多く、日本代表などに比べると認知度は下がります。そんなJYDの魅力はどこにありますか?

里崎:我々は露出よりも、JFAさんが持っているアセットを活用させてもらうことで、新しい価値を共に生み出していきたいと考えています。そして、それをJFAさんやJFAのパートナー企業さんの課題解決に繋げていきたいと。

確かに日本代表は安定した露出が見込めますが、さまざまな権利関係もあり、チャレンジがしにくいコンテンツでもあります。一方、JYDは『新しいチャレンジ』がベースにあります。「どういうことをやったらいいのか」、「どんなことができるのか」をお互いに相談しながら進めて、価値を創造していけるところが魅力だと思います。

デロイト トーマツは、ビジネスプロフェッショナルファームとして、日本のスポーツビジネスのマーケットを創出し、拡大したいと思っています。日本のスポーツコンテンツを使ったマーケットは、野球で年間約2,000億円、サッカーで年間約1,500億円と言われており、欧米と比較すると、7分の1ほどしかないんです。

そして、日本はスポーツコンテンツを、体育として捉えてきてしまったところがあり、これまでマネタイズとは縁遠いところに置かれてしまっていたんです。歴史的な背景から、ビジネスのトライアルがなされていなかった領域でした。

私達は、このポテンシャルを具現化したいと思っており、新しいマーケットの創出に貢献できることにも大きな意義を感じています。簡単な話ではありませんが、国民は割とお金を持っているし、人気のスポーツコンテンツもある。条件を見れば絶対に膨らむマーケットであるのは間違いありません。「誰かがやらねばいけないのなら、我々がまずはじめられないか」という思いからスタートしています。

日本は人口減少が進むことが確実で、このままだとどんどん未来が先細っていくと言われています。その中で、数少ない成長産業の一つが『スポーツ産業』だと思うんです。国も力を入れて進めている領域ですし、我々がコミットすれば、「デロイト トーマツが入っているなら俺たちも入ろう」と追随する企業も増えてくるのではないかと思うんです。

デロイト トーマツでマーケットを独占することが狙いなのではなく、我々が呼び水になって、大きなマーケットを作ることができれば、お金と人の流れが良くなっていく。結果としてデロイト トーマツとしても新しいビジネスを獲得できますし、そうなればスポーツ界が抱えている経済的な問題や、人的な問題もどんどん改善していくはずです。JYDの取り組みが、そのきっかけとなるんじゃないかという思いは、当初からありますし、今も変わりません。

見えない価値を『可視化』する新たなツール

ースポーツビジネス全体としてこれまでは広告宣伝がメインでしたが、徐々にそうした流れも変わってきています。北澤さんとしてはいかがですか?

北澤:時代が変われば、求められるものも変わります。持続的な成長を続けるためには、産業化を考えていかなければいけません。日本のスポーツをけん引してきたサッカーで、持続的な変化が見られるかどうかは、今後のスポーツ界の発展にも関わってくると思います。デロイト トーマツさんをはじめ、優秀な企業がサッカー界に入ってきていただけるのは、大きなきっかけになると思います。

コロナが広まる中で、スポーツの新しい価値の創出が必要かもしれない。見えるところだけではなく、見えない心の部分など、幅広くアプローチしていけるところはたくさんあると考えています。

里崎:見えない部分へのアプローチは、直近における我々の最大の注力ポイントです。今後、JFAさんと一緒に積み上げていけると良いなと考えているのが、スポーツコンテンツが生み出す社会的な価値を可視化していく取り組みです。

ビジネスで使われるROI(投資収益率)という指標の頭に、SocialのSを付けた「SROI」(Social Return on Investment:社会的投資収益率)という指標があります。これを使うことによって、今まで見えなかった「自信」や「楽しさ」といった心理的に与えるインパクトも、貨幣価値に置き換えて示すことができるようになります(参照)。

SROIは、以前から多くの学術機関や研究機関が研究し、体系を整備してきた評価手法ですが、デロイト トーマツが今まで積み重ねてきたビジネスのノウハウを活用してSROIの手法と組み合わせることで、その手法の活用範囲を大きく広げることができると考えています。最近のコロナ禍の影響等で、人々の興味関心がコト消費の領域に一気にシフトしてきたことで、我々もSROIを活用したソリューション提供ができる体制が整ってきました。近い将来、スポーツコンテンツの社会的な価値を可視化することで、継続的な成長に必要な資金集めに繋げることができるのではないかと考えています。

具体例としては、Jリーグが積極的に取り組んでいる社会連携活動などが挙げられますが、これまではその活動からどれだけの価値が生まれているのかが量的には分かりませんでした。その結果、企業もその活動に対していくら投資したらいいのか判断できず、活動しているチーム側も説明ができないため、お金が流れないという状況になっているのが現状です。

そうした課題を解決するソリューションが、SROIです。今まで見逃されていた価値を可視化をすることで、あるべき人とお金の流れを作り出す。これが新たなマーケットを創出し、拡大させることに繋がっていく。最近、少し方向が見えてきたかなと思います。JYDの取り組みと上手に絡めて、促進していけたらすごくいいなと思っています。

加えて、日本の中でトップコンテンツであるサッカーが、スタンダードとなる事例を作れば、他のスポーツやパラスポーツ、さらには一般企業のSDGs活動にもこのソリューションは応用できると考えています。

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