部活も、社会の中の存在。大学スポーツが社会貢献活動に取り組む意義
地域から愛されるチームへ(慶應義塾大野球部)
慶應義塾体育会野球部では、特定非営利法人Being ALIVE Japanと連携し長期治療中の子どもたちを受け入れ療養生活をサポートする事業「TEAMMATES」に2018年より取り組んでいます。
当時の指導陣がたまたまBeing ALIVE Japanの方と知り合い、取り組みについて紹介を受けたことがきっかけです。「大学スポーツではまだ前例がなく、やってみたいと。ちょうど部としても、野球以外の活動もやっていきたいと考えていたところだったので始めました」伊豆野万琴さん(マネージャー・4年)は話します。
指揮を取る堀井哲也監督は、「地域の中で活動しているんだから、地域から応援されるチームになろう」と日頃から選手に指導をしています。挨拶や地域清掃など細かいところにも力を入れて取り組んでいるのが、慶應義塾野球部の特徴のひとつです。
現在受け入れている子は4人目。約1年間、週に1回練習に参加し正式な部員として活動しています。選手たちと一緒にキャッチボールやバッティング練習に取り組みます。試合のパンフレットにも、名前とポジションを書いています。1年間の活動の締めくくりは、秋に行なわれる早慶戦での始球式への参加です。
2019年11月2日、早慶戦で始球式を務めた田村勇志くん
部員とともに練習をする國久想仁くん(現TEAMMATES)
綿引達也さん(内野手/4年)は、「僕は3年生になるタイミングでプロジェクトメンバーになりました。『野球を教えてあげたい』と思って子どもたちに関わり始めたのですが、逆に教わることもたくさんあって。ひとつ挙げるとするなら、野球の楽しさに改めて気付かされたこと。練習がきついこともありますが、幼少期に野球を好きで始めた頃の気持ちを思い出させてくれますね」
SNSを通じて、活動の様子や早慶戦での始球式を配信しています。「良い取り組みですね」「学生だからこそ、距離感近く子どもたちと接していますよね」などと、良い反響は大きいと言います。伊豆野さんは「慶應野球部は野球だけではないと、伝えられているかなと。この活動を通じて部を知ってくださる方もいて、応援してくださる方々の幅が広がりました。」
綿引さんは、慶應野球部が客観的にどういう存在かもしっかり見据えていました。「慶應義塾大学は大学としても注目を浴びる存在。同時に、日本の大学野球界を引っ張っていくような存在でもありたいと思っています。日本で野球が広まったのも、早慶戦がひとつ大きなきっかけでした。常に見られている意識を持って、大学野球界で存在感を発揮していきたいです。」
学生だからこそ、届けられる価値があると言います。「今回の取り組みで、学生と子どもたちとの交流を見て笑顔になってくれる方々が一人でも多くいれば、社会的価値があると思っています。私たちも、SNSを通じてたくさん応援をいただいていて勇気づけられています。その応援に応えられるような取り組みをこれからも続けていきたいです」と綿引さん。今後の活動にも注目です。
2020年秋、オープン戦のベンチに入った石岡直歩くん
社会の一員として、アスリートが持つ力
3部活の事例から、競技外での活動が選手たちの成長に繋がっていることがわかります。社会との関わりを持つことで、ただスポーツに打ち込むのではなく、「なぜ」自分が競技に取り組んでいるのかを考えるようになります。ここに、個々が競技内外で強くなるきっかけがあります。
見ている方々に勇気や希望を与えるなど社会的な価値が大きいのがスポーツです。だからこそ、彼らアスリートが発信できるメッセージも多くあります。今後「社会の中での自分」という立場を意識し活動する学生がさらに増え、多くの団体が積極的にこういった活動に励む未来がくることで、社会におけるスポーツの価値が高まることは間違いないでしょう。
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