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【後編】僕はヒーローになりたいー。格闘家・菊野克紀が闘い続ける理由と真の“強さ”

【前編】はこちら

世界中の格闘家が目指す大会に参戦

– 総合格闘技の一番の魅力を教えてください。

ルールが少ないところです。ただし、急所攻撃は禁止ですけどね。安全かつストレスがないのが総合格闘技だと思っています。総合格闘技で今まで死んだっていう話は聞かないし、基本的には安全です。そしてストレスがないことです。柔道をしていたときは、動きが遅いデブにも、襟つかまれて「エイっ」てされると投げられ負けるんですよ。「こいつ殴れば勝てるのに」っていう思いがずっとあったんです(笑)極真空手のときは、逆にこんなに近くにいるから、投げ飛ばしてやろうかと思います。このようなストレスが総合格闘技には少ないです。ルールの縛りが少ない上で戦えることは、自分に言い訳が出来なくなる。というところにも繋がるので、すっきりします。

– いろいろな競技出身の相手と戦えることも魅力的ですね。

いろいろな競技の超一流が集まってしのぎを削ります。総合格闘技に強いって言うのは、ケンカに強いって言うのに結構近いものがあります。僕ら格闘家は、人を殴ってお金がもらえるんですよ。本来なら人を殴ったら怒られるはずですが、褒められてお金をもらえるのは、僕らの特権です。しかも、世界中の化け物と対戦できるんです。孫悟空と一緒です。「おめえ強えな!おらわくわくすっぞ!」ってなります。

– 実写版ドラゴンボールですか。

その世界を安全に体感できるんです。それが総合格闘技は可能なので、こんな魅力的な競技は他にない!と僕は言いたいです。

– 逆につらいと思ったことはありませんか。

ほとんどのマイナー競技に共通すると思うんですけど、やっぱりお金の問題ですね。今、日本でファイトマネーだけで食べている人って、ほとんどいないです。みんなバイトしたり、ジムで指導したりして、稼いでいるような状況です。テレビで放送されていた頃は、ファイトマネーでも食べれたんですけど、総合格闘技ってまだ歴史が浅く25年くらいです。まだ浸透していないのと、野蛮だと言われてしまったり、実際にそういう事件が起こったこともあって、社会的地位がまだ低いんですね。ほんとにみんな厳しい状況でやっていると思います。仕事して、練習して、試合で殴り合って、ケガして、仕事して。これを繰り返して、ケガだけ残って引退もあります。99%の人がチャンピオンにはなれずに引退していきます。

– マイナー競技の課題は大きいですよね。競技の中でつらいこともありますか。

競技としては、つらかったり、難しいからこそ、おもしろいところでもあります。総合格闘技は打撃が強い、寝技が強いだけでは勝てないです。打撃、寝技、投げ。全ての能力が必要です。寝技の強い選手には、寝技に付き合わずに試合すれば勝てますし、打撃の強い選手には打撃に付き合わなければいいんですから。総合格闘技は何か一つが秀でていても勝てないです。全てをトータルしてできないと勝てない。これが難しくもあり、それがおもしろくもあるんですね。昔は「寝技vs打撃」みたいな試合もありましたけど、今は全く通用しないです。

– 欠けている部分があってはいけないんですね。菊野選手は海外の大会「UFC(Ultimate Fighting Chanpionship)」に参戦されていますが、なぜ海外の大会に参戦しようと思われたのですか。

日本でPRIDEやDREAMっていうさいたまスーパーアリーナでやる大きな試合が無くなってしまって、僕らが目指す大きな大会が日本になくなってしまったんです。それで、海外に目標を求めました。UFCは、トップ選手と認められないと出ることが出来ない大会です。それまでに日本で5連勝していたから出れたんです。

– UFCにはいつから参戦されたのですか。

今年の1月から参戦しました。UFCは特にレベルが高いです。UFCが世界においてダントツで認められている大会なので、世界中の格闘家がUFCを目指しています。UFCでトップになれば、お金も入るので、夢があるんです。僕は、現在1勝1敗なので、次負けたら切られる可能性もあるし、トップランカーでもいらないと言われてしまえば、そこで終わりです。

– 結果を求められる世界ですね。1つの試合の重みがありませんか。

本当に厳しい世界ではあります。1試合1試合が人生の分かれ目です。でも、夢はありますね。まるで、天下一武道会のような感じです。

– 本当ですね。世界各国の猛者と戦うわけですから。総合格闘家になるときに、憧れの選手はおられましたか。

いや。基本的に憧れの選手はいなかったです。単純にヒクソン・グレイシーや桜庭和志さん、須藤元気さんなど、かっこいいと思う選手はいますけど、自分がこうなりたいと思う選手はいなかったです。憧れってある意味敗北宣言だと思っています。なれないから憧れるというか、僕はそこにいきたくて、ライバルではあっても憧れではないですね。倒してやるぞ!と思って見ています。

– 昔は弱虫で泣き虫だったと言われていましたが、気持ちは大分強くなりましたか。

今でも弱虫といえば弱虫ですよ多分。今は自信がついたからびびりの自分が出にくいですけど、本質はびびりなんだと思います。もし周りに自分より強い人だらけだとびびってしまうかもしれません。

– 実力とともに強くなっていったんですか。

強くなるにつれて気持ちに余裕が出てきたから、少しメンタルが強くなってきているんですかね。半分は鍛えて半分は強くなると共にという感じだと思います。ルールの中では死ぬことはないので、もし今、真剣をもって襲ってくる人がいたらバッと倒せるかどうかはわからないですね。僕はその時、自分自身にパッと動いて倒して欲しいとは思いますけど、実際怖いと思うのでわからないですね。少なくともオラオラとはいけないです。

– どこでも立ち向かっていけそうに思ってしまいますが。

それは外側なんです。根っこはびびりです。電車で足踏まれたら「すいません!」ってすぐ謝ります(笑)

– 踏まれても謝るんですか(笑)

僕は踏まれて謝ってしまいますね。とりあえずすいません。って。根は争いたくないので。

– 菊野選手含めて、総合格闘家の方は優しい方が多い気がします。

ずっと格闘技を続けている方は、気が優しい人が多いと思います。弱い自分が嫌で、強くなりたいという思いがあるからだと思います。でも、元から強い人はそこまで続けるモチベーションはなかなかないのではないかと思います。なので、プロで現役で続けている方は、意外とオラオラではなく、優しいと思います。

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