山本和也。新極真期待のホープが見据える、世界の舞台。

【山本和也(新極真空手)】全世界空手道連盟新極真会・東京東支部所属。1993年11月21日生まれ、東京都出身。170cm85kg。

山本選手は2014年に始まった全日本フルコンタクト空手道選手権大会・重量級において、記念すべき初代チャンピオンに輝き、今年の5月に行われた第2回大会で連覇を達成されました。10月31日、11月1日に東京体育館で開催される全世界空手道選手権大会に日本代表として出場する予定となっており、日本だけでなく、世界の舞台での活躍が期待される選手です!

小学2年生から空手の世界へ

——まず初めに「空手」と一口に言っても様々な種類があることを知らない方も多いと思うので、新極真空手について教えて頂けますか。

基本的に極真空手から始まっていることに変わりはないので、コンタクト(直接打撃)ありで、ルールなどの違いはほとんどありません。ただ新極真会は特に青少年の育成に力を入れていて、小学5年生から20歳になるまでユースジャパンという制度を設けており、少年部が主導となって育成のための合宿を行ったりしています。他にも若い世代から心身共に健全に育っていくための活動を行っています。僕もユースジャパン出身で、今活躍している選手のほとんどはそこを出ていますね。

——山本選手はいつから新極真空手を始めたのですか。

自分は小学2年生から始めました。そこからずっと続けています。親から水泳か空手を選ぶように言われて、空手を選択しました。

——ご家族の影響で空手を始めたというわけではないということですか。

そうですね。親は何かスポーツをやらせたくて、たまたま近くに水泳教室と空手道場があったことからその選択肢になったのだと思います。その時は泳げなかったので、空手を選びました。

——水泳を選んでいなければ今の山本選手はいないわけですから、実はかなり重要な選択だったことになりますね!

確かにそうですね(笑)全然違った人生になっていたと思います。

——そこから中学、高校、大学と進学されていくわけですが、空手はどのような形で続けていったのでしょうか。

いずれも部活には入らず、ずっと道場で続けています。

——現在は大学4年生ということですが、既に全日本フルコンタクト空手道選手権大会(以下、JFKO大会)を2連覇されています。

フルコンタクト空手の様々な流派の選手の方々が出場する大会で前回、今回と重量級で優勝することができ、大変光栄に思っております。

実は今まで重量級で大会に出てきましたが、自分の体重でいくと1つ下の階級で出ることも可能でした。でも自分がやりやすく、出たい階級が重量級だったので、そちらで出場しています。おそらく自分が重量級に出場している選手の中でも体が一番小さかったと思います。

——そうなんですね!階級を1つ上げても優勝できるということが山本選手の強さを象徴していると思います。10月には全世界空手道選手権大会への出場も予定されていますね。

しかしJFKO大会の時は体重別でしたが、世界大会は無差別級になるので、少し違った戦いになってくると思います。

——日々練習に励む上で、どのようなところに厳しさを感じていますか。

フルコンタクト空手なので、相手と当て合わなければならないというのは厳しい部分ですかね。

——やはり直接攻撃されると痛いですよね。

それは中学生ぐらいで乗り越えるので大丈夫です。それまでは痛くて少し嫌になることもありましたけどね(笑)でも試合で勝てば道場の先生や家族が喜んでくれるというのもあって、続けることができました。

——今まで山本選手は大きな怪我をしたことはありますか。

その瞬間に分かるような大きな怪我はしたことがないです。でも2、3年前から小指が痛いなと思っていてこの前レントゲンを撮ったら、昔に折れていたことが判明しました。しかも両手です(笑)

——気付かないものなんですね(笑)大きな怪我をしないというのは未然に防ぐための術を身に付けているからでしょうか。

そうですね。稽古の中で戦い方を教えてもらったことで防げていると思います。

山本和也

JFKO大会優勝や海外での試合経験で感じたこと

——これまでで一番嬉しかった試合を教えてください。

昨年の第1回JFKO大会は優勝できて嬉しかったですし、自分でもその結果に驚いた試合でした。

それまで自分は大きなタイトルも持っていなくて、入賞すらしたことがありませんでした。でも記念すべき第1回大会で決勝まで進むことができました。決勝戦でも技ありを取り、優勝への手応えを感じた瞬間、その場に立っていることに対して驚いている自分がいました。しかしまだ相手も動いてくると思ったので、もう一度冷静になって試合を続けました。

その場面になるまで優勝については本当に意識していなくて、目の前の1試合に勝つことだけを考えて戦っていました。決勝戦が始まる前も相手は以前負けたことがある、新極真界を代表する先輩だったので、自分は挑戦する気持ちで臨みました。

——一方で今年は前年度王者として出場することになるわけですが、何か違いはありましたか。

世界大会に出場する日本代表を選ぶ大会でもあり、周りも稽古をして体を仕上げてきていることは感じました。自分もまだ世界大会への出場権は持っていなかったですし、前回勝ったことを意識しないようにしていましたが、試合前になると第1回大会の時より緊張しました。もちろん優勝するつもりで出場していましたが、試合間にアイシングしている時にふと心が折れそうになる自分もいました。でもそうやってアイシングしてくれる人や次の試合へのアドバイスをくれる人など、支えてくれる方のためにも気持ちを作り直して、1試合1試合を戦い抜きました。

——決勝戦でのラッシュはすごかったですね。

試合中に閃いて、ここで練習通りにやれば勝てると思い、動きました。

——山本選手の得意な技を教えてください。

昔から下段回し蹴りはやっていましたし、最近は上段も蹴ります。自分では下段蹴りがあるからこそ、上段蹴りが活きてくると思っています。

——技を習得するためにはひたすら反復練習をするのでしょうか。

そうですね。1つの技をたくさん練習します。練習でできたことしか、試合ではできませんからね。鏡の前で蹴りの練習をしたりもしていました。

——道場での稽古以外でもトレーニングをするのでしょうか。

今は陸上競技場で走ったり、坂道ダッシュをしたりします。メニューは新極真会第10回世界大会チャンピオンの(※)塚本徳臣師範に作って頂いています。

塚本徳臣師範:全日本大会を5度、全日本ウェイト制大会を3度制し、世界大会でも2度優勝するなど、新極真会を代表する空手家の1人。

——海外に試合をしに行くこともありますか。

あります。今まで4回行かせて頂いていて、ポーランドに3回、リトアニアに1回行きました。

ポーランドとリトアニアは新極真会の大きな支部がある国で、競技人口も多いんです。ポーランドには規模の大きな大会に出場するために、リトアニアにはカラテワールドカップ(体重別の世界大会)が開催された時に日本代表選手として出場するために、それぞれ訪れました。

——そうなると試合以外を含めて、大変なこともあったのではないでしょうか。

言葉が通じないので現地の方がサポートをしてくれて、例えば飲み物を一緒に買いに行ってくれたり、ご飯を食べに連れて行ったりしてくれました。ただ試合前のアップは選手同士でやるのですが、一度選手が自分しかいない時がありました。その時はサンドバッグを使ってアップをし、試合も一人戦ったので、孤独な感じはしましたね。

——海外で試合をするとアウェイな空気を感じるものですか。

ブーイングが起きたりはしませんが、地元選手が相手だと向こうの声援が大きいというのはありました。

——空手をやっていたからこそ起きた少し変わった出来事があれば教えてください。

よく瓦を割るのか聞かれますね。もちろん実際は割りません!あとはあまりルールが浸透していないので、そこについて聞かれることが多いです。

——憧れている選手はいますか。

島本雄二選手です。第1回JFKO大会の決勝で対戦した選手です。無差別級の全日本大会でも優勝している偉大な先輩です。

選手以外でいくと今トレーニングを考えてくださっている塚本徳臣師範を尊敬しています。空手の技術面だけでなく、精神面についても過去の経験からいろいろとアドバイスしてくださるので、すごく勉強になっています。

山本和也

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