小山克仁。審判マスクの向こうに、球界の未来を見据える

世界に競技を普及させて、野球を五輪種目に復活へ

——今後の目標を教えてください。

五輪や世界大会の決勝で球審を務める日本人の審判を養成していきたいです。自分もシドニー五輪で審判を務めましたが、塁審でした。それは言語の問題もありますし、日本のアンパイアがもっと信頼されなければなりません。また、世界に競技を普及させて野球を五輪競技に復活させないといけないです。そこでアフリカが重要だということです。そして東アフリカの国から代表チームを出したいですね。そうなるとやはり継続的な支援に行く必要があると感じています。私もアフリカに長期的に行きたいという気持ちはあります。

小山克仁

——平日はお仕事、土日は試合の審判とお忙しい日々を送られている小山さんですが、オフの日は何をしていますか。

映画を観に行くのと、旅をするのが好きです。実際に映画館に足を運びます。旅は審判講習会で全国に行く機会が多いので、そのついでに楽しんでいます。

——もし野球に出会っていなかったら、審判をしていなかったら何をしていたと思いますか。

ぐうたらな人生を送っていたと思います(笑)でも野球に出会っていなかったらあまりいい人生を送れていなかったでしょう。野球にいろいろなことを教えられ、鍛えられましたから。相手を尊敬することもそうですし、考えることも学びました。仕事においても審判をしていたことが役立っています。野球が私の人生における全てであると思います。しかし、一方では、家族を犠牲にしてきた部分もあるので、日々反省の毎日です。

——小山さんがご自身で思う、自分の魅力を教えてください。

人からは真面目で律儀だと言われますが、自分ではそうは思わないです(笑)むしろ大雑把です。ただ相談を持ちかけられたりすることは多いです。

——審判をやっているからそう思われているというのもありそうです。

それは確かにあるかもしれませんね。でも審判は人を裁く仕事ですから、人格者が多いです。例えば夏の高校生の大会は彼らが本格的に野球をやる最後の試合になるかもしれないわけです。そこで正しいジャッジをするために普段からしっかりしないといけないというのはあると思います。僕らは常に見られる立場にありますから。

——大切にしている言葉や座右の銘はありますか。

百錬自得と瞬間善処と冷暖自知です。どんな技術もすぐには身に付きません。何回も繰り返して初めて自分のものになります。また、瞬間的に何か物事を判断できるようになるためには普段から訓練しておかねばなりません。そして何事も自分でやってみないと分からないということです。

——最後に読者の方にメッセージをお願いします。

私はスポーツをやっている時は唯一、貧富の差や国籍、肌の色で差別がない中で戦えるということを教えてもらいました。もしお子さんがいるなら得るものがたくさんあるので、ぜひスポーツをやらせてほしいです。

【前編】はこちら

<了>

関連記事