• HOME
  • 記事
  • その他
  • 飯塚菜々恵(元ラクロス女子日本代表)が、子どもに指導を続ける理由。

飯塚菜々恵(元ラクロス女子日本代表)が、子どもに指導を続ける理由。

日本ではカレッジスポーツとして知られているラクロス。昨年クラブチーム日本一を決める全日本クラブ選手権を制したFUSIONの飯塚菜々恵選手は日本代表に選出された経験を持ち、第一線で活躍するプレーヤーでありながら、子供向けにラクロス教室を開催し、競技の底辺拡大に向けた普及活動を積極的に行っている。

日本代表としてW杯に行った時に感じた世界との差。それを埋めるために今できることを語ってもらった。

ラクロスでクラブチーム日本一を経験

——まず、飯塚さんのスポーツ経歴を教えてください。

6歳からずっとバスケットボールをやっていました。初めは地域のチームでやっていて、小学校4年からはクラブチームに移り、中学でもバスケ部に入りました。高校ではバレーボール部に入っていましたが、そこまで真剣にはやっていなかったですね。遊びたい時期だったので(笑)

——では、ラクロスを始めた経緯は?

大学に入ってからはまた何か打ち込めるものを探していて、それで先輩に誘われて始めました。私の中では“日本一を目指せる”のがラクロスの一番魅力的なところだと感じました。人生の中でそれを目指せる機会はそうないです。ラクロスはカレッジスポーツで、大学から始める人が多く、日本代表に入れる可能性もあると聞き、日本代表を目指したいとも思いました。

——立教大学に進学したことには何か理由があったのでしょうか。

単純に立教に行きたかったからです。池袋校舎のオープンキャンパスに行った時に施設がオシャレで、いかにも大学っぽい感じが好きになり、絶対立教に入りたいと思いました。どうしても立教がよくて、学部の端から端まで全部受けたくらいです。結果的に行った学部は新座キャンパスでしたが(笑)

——飯塚さんが思う、ラクロスの魅力を教えてください。

初めはバスケットボールの動きに似ていると感じ、面白かったです。それが続けるうちにどんどん奥の深さが分かってくるので、さらにハマっていきました。特にラクロスは発展途上のスポーツなので年々自分もラクロス界も進化していくことを感じられます。それが魅力でしょうか。

——今までで一番嬉しかったことは?

一番と言われると難しいですが、昨年、クラブチーム日本一になれたことですかね。特に(※)決勝でのゴールは、得点までのイメージが、関わった全ての選手と共有できていて、そのイメージの一致が感動的であり、とても嬉しかったです。

※社会人王者を決める、昨年の全日本クラブ選手権の決勝戦において残り1分30秒で逆転を許したFUSIONだったが、飯塚さんの値千金の同点ゴールで試合は延長戦へ。延長前半にFUSION・河内選手の劇的な勝ち越しゴールが決まり、勝利した。

飯塚菜々恵

同点ゴールを決める飯塚選手

飯塚菜々恵

選手としてプレーをする傍らで、普及活動にも尽力

——飯塚さんは普及活動も積極的に行っていますが、その理由を教えてください。

日本代表としてW杯に行ったとき海外のトップ選手のレベルの高いプレーを見て、圧倒されました。もちろんそれまでも海外遠征で外国人選手のプレーを見る機会はありましたが、やはりW杯の気迫というのは特別なものがありました。

その時、会場で2、3歳の子供がクロス(ラクロスで使うスティック)を引きずりながら持っている風景を見て、日本とはあまりに文化が違うなと感じました。

そうした世界の現実を見て帰国した日本で、学生時代からずっと指導をしてくださっていたヘッドコーチの方にW杯の報告をしたら、コーチから『W杯に行って終わりではない。これからがスタートであり、行った責任を果たすべき』と言われました。この言葉で、私なりに日本のラクロス界にもっと貢献していこうと決意しました。

そのために何をすべきかと考えた時、W杯で見た光景がよみがえり、自分が選手として4年後のW杯に出場し、メダルを獲りに行くために努力するという選択肢もありましたが、それ以上にこの先のW杯で日本がメダルを獲るためにできることを4年後に限らず、もっと長い目で考えていきたいと思ったんです。だから私は底辺のラクロス人口を増やして、子供達が20年後、30年後のW杯で結果を残すためにできることをしたいと思い活動を始めました。

飯塚菜々恵

代表選手としてもプレーした経験を持つ

——現状、日本人選手と海外強豪国の選手とは何か違うのでしょうか?

道具を使う競技ですから、子供の頃から扱ってくれば身に付くものも違ってくると思います。また、ラクロスに対する考え方も差があって、日本も年々進化はしていますが、海外もより一層それに磨きがかかっていっていると思います。そして、何よりそもそも競技人口が多ければ、身体能力が高い選手の割合も高くなり、精鋭が集まってきますので底辺の拡大をしたいと考えています。現に、大学ラクロスの競技人口は年々増え、私が学生の頃に比べてはるかにレベルがアップしていると感じます。

——普及活動は具体的にはどのような形で行っているのでしょうか?

ラクロス普及委員会・Team LiDと世田谷ラクロス協議会でこれまではやってきていて、今年度からは新しくEn-sports・多摩キッズラクロスクラブでの指導を行っています。多摩キッズラクロスクラブは毎週木曜日の17時半からなんですよね。初めは平日のその時間に退社するなんてできるのかと不安でしたが、もうすぐ始めて一年になります。今ではやってよかったと思っています。制約を付けたことで自然と仕事が早くなったんです。その時間に帰るためにどうしたらいいか、逆算して考えるようになりました。

今は仕事とクラブチームとキッズラクロスを両立して子供達と毎週ラクロスを楽しんでいます。

飯塚菜々恵

——ラクロスをプレーする上で大切なことは何だと思いますか。

物を使うスポーツということでその道具の特性を自分なりに理解し、イメージ通りに動かすことが子供達にとってすごく難しいようです。コーチから指示されて、その通りに自分では動かしているつもりでも、実はできていないことが多くあります。だから特性と自分のイメージと実際の体の動きを連動させていくことが大切です。加えてチームスポーツですから、相手やまわりを見て自分で考えて動く力も必要ですね。

関連記事