北澤豪(日本障がい者サッカー連盟会長)が求める、一つの願い。
日本サッカー界では現在、8月から行われるリオ五輪に臨むU-23日本代表が脚光を浴びているが、先月には障がい者サッカー界でも大きな動きが見られた。今回は、来たる2020年東京パラリンピックに向けて、今後より一層の注目を集めることが予想される障がい者サッカーに焦点を当てる。
7競技団体を統括する日本障がい者サッカー連盟が設立
「ついにこの日が来たか」— ソーシャルフットボール(精神障がい者サッカー)日本代表の原田洋行選手は、日本障がい者サッカー連盟の設立に対する喜びをこう語った。
4月1日、障がい者サッカーの7競技団体を統括する一般社団法人・日本障がい者サッカー連盟(JIFF)が設立された。昨年4月に日本サッカー協会(JFA)が連盟設立に向けて障がい者サッカー協議会を設置し、1年の準備期間を経てこの日を迎えた。今後は元サッカー日本代表の北澤豪氏を会長に据え、JFAの加盟団体として、障がい者サッカーの発展と普及に尽力していく。
日本サッカーミュージアムのヴァーチャルスタジアムで行われた設立発表会では、冒頭にJIFFが統括する7競技がビデオで紹介された。障がい者サッカーといえば、昨年9月に行われたブラインドサッカー(視覚障がい者サッカー)のアジア選手権がテレビで放映されたことが記憶に新しい。
近年はJリーグの前座としてもブラインドサッカーの試合が開催されるなど、露出の機会も増えている。しかし、スポーツ庁の鈴木大地長官が「障がい者サッカーが7つもあるのか」と驚きを露わにしているように、世間に認知されている競技は数少ない。
来たる2020年東京パラリンピックに向けて、障がい者スポーツには更に関心が高まっていくことが予想されるが、その中で、JIFFは競技の発展と普及に向けてどのような取り組みを行っていくのだろうか。
選手、監督、そして北澤豪会長が求める1つの“願い”
障がい者スポーツ協会の鳥原光憲会長は「2012年に行われたロンドンパラリンピックのブラインドサッカー決勝で、フランスとブラジルの選手たちがA代表と同じユニフォームを着ているのを見て、日本もこうなってほしいと強く思った」と語った。
これには、(※)アンプティサッカーのブラジル代表として、A代表と同じユニフォームを身にまとった経験があるエンヒッキ松茂良ジアス選手(現・アンプティサッカー日本代表)も「やはりA代表と同じユニフォームを着ると気持ちが変わる」と賛同の意を表している。
※アンプティサッカー・・・上肢または下肢の切断障がいを持った人々によるサッカー
アンプティサッカー日本代表のエンヒッキ松茂良ジアス選手
そのエンヒッキ選手の要望に応えるように、北澤会長は「日本中が1つになれるようなユニフォームを、選手だけでなくサポーターも着ていくことが大切だと考えている」とコメントし、JFAの田嶋幸三会長も「すでにA代表と同じユニフォームを着れないかと話を進めている。できるだけ早くやらなければいけない」と、近いうちの実現を示唆した。
また、会見ではCPサッカー(脳性まひ者サッカー)日本代表監督に安永聡太郎氏が就任することも併せて発表された。同氏はJリーグの横浜F・マリノスや清水エスパルスでプレーし、引退後は指導者や解説者として活躍している。
5月21日と22日には、7月30日からデンマークで行われる国際大会へ向けて、CPサッカー日本代表選手2次選考会が開催された。同大会には来年アルゼンチンで開催される世界大会への出場権が懸かっているが、安永監督は「世界大会に出場することが大きな目標であり、私が監督になった目的でもある」と、熱い野心を語った。
そして、日本障がい者サッカー連盟の設立に関して「ようやく7競技団体が一つになれた。北澤さんや私のように、健常者サッカーのプロとしてプレーしていた人々が障がい者サッカーの存在を伝えていくことは、大きな意味を持つと思う」と続ける。
将来的にA代表と同じユニフォームを着用する可能性については「選手たちは健常者だったらA代表のユニフォームは着れなかったかもしれないが、『障がいを持って生まれたから着ることができた』と、誇りに思ってもらえるようになれば嬉しい」と、実現を望んだ。
5月22日に行われたCPサッカー日本代表選手2次選考会
CPサッカー日本代表の安永聡太郎監督
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