大井洋一(放送作家)。女子格闘技を盛り上げる影の立役者に迫る

今回は女子総合格闘技・DEEP JEWELSの煽りPV(試合前に流れる選手紹介動画)の製作を行う、大井洋一氏(写真右・写真左は富松選手)にお話を伺う。

大井氏の本職は放送作家。これまで「SMAP×SMAP」「はねるのトびら」「リンカーン」など、数々の人気番組を手がけてきた。そんな彼がまだマイナー競技の1つである女子総合格闘技のPVの製作を行うのはなぜなのか。その想いに迫る。

プロキックボクサーの道を捨て、放送作家の道へ。

――まず初めに、総合格闘技に興味を持つようになったきっかけから教えてください。

中学生の時にリングス(格闘技団体)を見て、初めて総合格闘技を知りました。またプロレスとも違う何かがあると感じていましたね。それを自分でもやりたいという気持ちはありましたが、当時はまだ格闘技は体の大きな人がやるものだと思っていましたし、習いに行ける環境もなかったですからね。小さい人がやる格闘技といえばボクシングぐらいじゃないですか。特に総合格闘技のジムなんかは少なかったですし。インターネットもなかったので、格闘技通信の裏表紙にあるジム一覧を見て探すくらいしか方法がありませんでした。でも訪ねに行くと潰れていたりするんです(笑)

それで総合格闘技は諦めて、家の近くにあったキックボクシングのジムに通い始めました。

――大井さんはキックボクシングの選手としてプロにもなっています。

高校3年生の頃にプロになって、20歳前後までやっていましたが、誤解を恐れずに言えば人生に不安を感じて辞めました。途中で受験もして大学生にもなっていましたし。

1試合3~5万円のファイトマネーで、数ヶ月に1度試合があるだけですから、そもそもプロと呼んでいいのか、という話です。4ヶ月に1回試合があってもキックボクサーとしては多くて年収15万円にしかなりません。当時はまだK-1もそんなに盛んではなかったですしね。でも、その後まさか体の小さい日本人選手があの舞台であんなに活躍するようになるとは思っていませんでした。

――そこから放送作家の道に入ったのはどういった経緯があったのでしょうか?

キックボクシングを辞めて、どうするかと考えていた時に放送作家になろうと思いました。僕は元々ラジオっ子だったんです。放送を聴いていて、パーソナリティーが話している横で笑っている人がもう一人いる、その人はどうやら放送作家という職業らしい、こんなに楽で楽しそうな仕事はない!と考えたわけです(笑)

当然駆け出しの頃はお金にならなかったので、大変でしたよ。大学も辞め、バイトをしながら生活していました。

大井洋一

再び足を踏み入れた格闘技の世界。“戦う放送作家”の誕生。

――その後、人気放送作家としての道を歩んでいくわけですが、最近では番組の企画から再び選手としてリングに上がっています。

自分のやっている番組で演出の1人からそういう提案があったんです。僕はスタッフとして、番組の1話が埋められるのであればそれでいい、みんなが面白いと思って企画が盛り上がってくれるのであれば全然やる、と話しました。格闘技に対する熱意もありますけど、それ以上に面白い番組をつくるのが僕の仕事ですからね。

一緒に番組をやっていた佐藤大輔さん(映像作家・総合格闘技PRIDEの選手紹介動画を製作)が撮ると言ってくれましたしね。格闘技を一流でやっていてもなかなか撮ってもらえないのに、その声に応えない理由がなかったです。

――やるからには勝つ、という気持ちも当然あったのではないですか?

それはそうですよ。恥をかきたくないですから。やっぱり勝たないと面白くないですし。当然仕事と並行してトレーニングする必要はあるので辛かったですが、やるしかなかったです。

――試合が決まった時のご家族の反応はどうでしたか。

奥さんも元々格闘技好きでしたから、止められるどころかウェルカムな感じでしたよ(笑)

――放送作家の仕事と格闘技、2つに共通する部分はありますか。

アプローチの方法に違いはあるにせよ、結果“人を楽しませなければならない”というのは共通しています。努力の方向が1つでないところも似ていますかね。これだけをやっていれば面白くなる、強くなれるというものはなくて、いろいろなことを考えながらやる必要があります。その作業が僕は好きです。

――ただ、試合に自分が出るとなると客観的に見られなくなる分、いつもと違うことも出てきますよね。

でもリングに自分が上がることで、選手と共通の体験ができるという良さはあります。スケールや試合に臨む覚悟、技術などに違いはあるかもしれませんが、それでもその時だけは“選手”と呼ばれるわけで。

僕は環境に恵まれていて、練習の時もすごい選手とやらせてもらえるというのはありがたいですし、楽しいですね。

女子格闘技の取材

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