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海外経験ゼロ・英語嫌いを乗り越えた、日本人唯一のFIFAコンサルタント

運と縁で入り込んだAFC。そしてFIFAコンサルタントへ

FIFAマスターといっても卒業後の進路は全く保証されていません。その中で僕はAFCを経てFIFAコンサルタントとなれたのですが、縁と運もあるかなと。英語も苦手で、それまでに海外経験もなかったので、卒業後は日本に帰るつもりでしたから。海外で働くなんてことは全くもって思っていなくて、帰国したらJリーグやJFA、Jクラブで働けたら万々歳と思っていたんです。

ただ、就職活動に入ったときが、たまたまAFCが規模を拡大して人を増やし始めた時期だったんです。僕はFIFAマスターの5期生なんですけど、先に3,4期生がAFCに何人か行っていて、高い評価を得ていました。そういう経緯もあり、5期生にはアジア人が僕を含めて3人いた中で、僕はAFCで6ヶ月間のインターンの機会をもらうことができました。今は採用を積極的にやってはいないんですけど、当時は人を増やす段階だったのでラッキーだったな、と思います。そして、結果的には3ヶ月のインターンの後に採用をしてもらったんです。

AFCは当時46の国・地域の協会を抱えていたのですが、その国に対して支援を行うことをやっていました。僕が携わっていたのは運営系、オフザピッチのところです。スポンサー関連まではいかなかったですけど、もっとベーシックな所。人員体制を整えることや、組織の枠組みを作るという部分ですね。このような業務を中心に8年間、AFCで働いたのですが、その中でFIFAからお誘いが来て、現在に至るということです。

FIFAコンサルタントとなって2年半ちょっと経ちますが、大変さより楽しさのほうが全然、勝っています。AFCのときはアジアだけでしたけど、アフリカやオセアニア、北中米など様々な所に行く機会もあって、その国の文化やどういうサッカーをしているかがわかるんです。ですから、普通は5年で得られるものが2年に凝縮されたように感じるというか、それくらい強い刺激を受ける毎日です。大変といえば大変なんですけど、学びが多すぎますね。

“コミュニケーション”がスポーツ界を変える

“スポーツ界”とはけっこう曖昧だと思っています。普通の業界よりもいろいろな職種がある。例えばサッカークラブなのか用品メーカーなのか、それとも小売店で売る側につくのか。いろいろなタイプの人がこの業界で働いているので、全部に共通してコレだと言える“この世界で働くために必要な資質”というものはないと思います。ただ、強いて言えばコミュニケーション力かなと。

僕がFIFAの中で評価されているなと思う部分は”日本人らしい仕事ぶり”。日本にいるとみんなは気づかないんですけど、外に出たらその特性がわかるんです。丁寧に仕事をやるとか、相手を思いやって仕事ができるという点。西洋では上から目線でガツン!と押し付ける人もいます。みんながみんなそうという訳ではないんですけどね。日本人はどっちかというとソフトで、相手の話を聞いて話が出来る。そこはコミュニケーションの基本といえば基本なんですけど。海外に行ったら対話の中でガンガン行くべきだ!と仰る方もいると思いますが、僕は逆の考えを持っています。日本人の持ち味で勝負をしてもらえればよいなと思いますし、ある意味それで僕はここまで来られたので。

スポーツってすごく多面的だと思うんですよ。競技という軸があり、そこにビジネスという軸も入ってきて、それと同時に社会的、教育的なものでもある。そういういろいろな価値が複合的にあり、はっきりと目に見える価値だけを提供しているという訳ではないですよね。スポーツの中でビジネスというと放映権と看板と広告と…と思う人がほとんどだと思いますし、一般のビジネス界の方で、スポーツに対して企業・サービスの露出以外のビジネス的可能性を本当の意味では感じていない人は多いんじゃないかな、という印象はあります。

ただ、それは逆も然りで、スポーツ界側が説明していないからというのもあるんです。『このスポーツは露出以外にもビジネス的にこういう活かし方があって、御社の課題の解決に繫がりますよ』と働きかけることが足りていない。昨今の流れで言えば、ビジネス的なアプローチでスポーツが持続的に社会課題解決を図る事のお役にたてる可能性もある。そして、そうする事で、スポーツ自体も税金に頼らず持続的に発展できると思うんですよ。そういう意味ではスポーツ界とビジネス界の間のコミュニケーション不足で、より相手のことがわかればしっかりとビジネスになるんです。

だからこそ、スポーツに関わる人が、競技のこともビジネスのことも分かって、教育的な価値も社会的な価値も理解していればスポーツの持続的な発展に繋がることになるんじゃないかなと思いますし、そのためにもコミュニケーションというのは重要なんです。自分とは違うタイプや分野の人とでもいろいろ話せるということは、その中から様々なことが学べ、様々な角度から物事を見る事ができるようになりますから。そういう力がスポーツ界に求められていることなのだと僕は思います。

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