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加藤拓也。カープ期待のドラ1は、慶應の日々を糧にプロでの飛躍を誓う。

昨季セ・リーグを24年ぶりに制した広島東洋カープ。2016シーズンの勢いは誰がみても素晴らしいものでした。そして日本一こそ逃したものの、この流れを来季に繋げたい球団、ファンの期待を背負い、昨年のドラフト1位で広島から指名されたのが慶應義塾大学・加藤拓也選手。

加藤選手は慶應義塾高校出身で、大学在学中に2度の防御率1位を獲得した右投(右打)の速球派。昨年9月17日には対東大戦でノーヒットノーランを達成し、90年を超える東京六大学野球の歴史において、24人目の快挙を成し遂げています。175cmと決して高身長とは言えませんが、鍛え上げられた体を最大限に大きく使っての勢いある投球は迫力があります。彼の投げるボールの重さや鋭さは、スタンドにいてもその気迫と共にビリビリと伝わってきます。

彼が大学1年の秋に私は初めてその投球を球場で目の当たりにしました。1年生とは思えない強気な姿勢と闘志溢れるその投球スタイルに惹かれたのを今でも覚えています。

そんなあの“加藤君”がついにプロ野球の世界に足を踏み入れます。昨季10勝を挙げ、チームの精神的支柱でもあった黒田博樹投手が引退で抜けた穴をカバーし、カープのリーグ連覇そして日本一に向けた活躍が期待される加藤選手にこれまで、そしてこれからの野球人生について語ってもらいました。

淡輪ゆき、加藤拓也

指名には安堵。元々は捕手出身の加藤選手。

-**まずはドラフト1**位指名、おめでとうございます。指名された瞬間を振り返ってみて、その時の気持ちを教えてください。

正直ホッとしたのが1番でした。自分には待つことしかできなかったので。

-**指名されるという確信はあったのでしょうか?**

ドラフトなので絶対はないですけど、何とか入れるかな、という感じはしていました。でも正直1位指名はびっくりしました。契約金は貯金します(笑)

-**カープに指名されたこと、そして広島についての印象はいかがでしょうか?**

昨季のセ・リーグ優勝チームから指名されたことは嬉しかったです。でも実は広島自体には行ったことがないので、これからいろいろ知っていきたいです。広島は飯がおいしそうですよね。

-**指名されたことを初めに誰に伝えたいと思いましたか?**

家族に伝えたかったんですけど、もうその瞬間に連絡もたくさん来ていたので、後でゆっくり話すことにしました。

その日はLINEで200件、Facebookでも100件くらい連絡が来ていましたね。

-**加藤選手はどういった家庭で育ち、どのように野球を始めたのでしょうか。**

家族は父、母、5つ離れた姉、自分の4人家族です。普通の家族だったと思いますよ。

小学校に入って、親からスポーツを勧められました。周りはサッカーをやっている子が多かったので、自分もやってみたのですが結局3ヶ月で辞めました。

当初はサッカーをやりたいという僕の意向を尊重したみたいですが、父親は本当のところ、野球をやらせたかったようです。『野球は試合にさえ出ていれば打席は必ず回ってくるから、絶対に活躍するチャンスはある』と説得されていたのは覚えています。うまく乗せられました(笑)

-**現在は投手ですが、元々加藤選手は捕手出身ですよね。**

最初は捕手です。ただ、小学6年から中学1年にかけては投手をやり、中学2年から高校1年の秋まで捕手、それ以降はまた投手です。

投手をしたきっかけは監督のコンバートですが、明確な理由は分かりません。元々肩が強かったのと、他に捕手がいたので、僕が出る幕もなかったのかもしれません。

-**捕手と投手、練習や試合に臨む上での気持ちの持ち方もかなり違いがあると思います。**

投手は自分がやることをやるだけであまり気を使わない分、結果が伴わないとそれが直接自分に跳ね返ってきます。逆に捕手はとにかく気を使っていくポジションです。

でも僕は捕手時代、気を使っていなかったかもしれません(笑)

たぶん自分の性格として捕手はあまり向いているタイプではないとは思います。

「とりあえず投げてこいよ」みたいな感じでやっていましたね。

今のピッチングについては捕手にある程度任せつつ、あとは相談しながら進めていく形です。特に組む捕手の相性は気にしたことはないです。

加藤拓也

大学での経験を糧にプロでも“力と力の勝負”をしたい。

-**試合の中で加藤選手は打者に向かっていく姿勢が一段と顕著になる瞬間を感じることがあります。そういった自分の“ゾーン”を意識することはありますか?**

逆に(気持ちが)上がってこない時の方が怖いです。

でも小さい頃から野球を観てきて、やはり力と力の勝負というのが面白いと思っているので、そういうタイプの投手になりたいという気持ちはあります。

これはプロになってからも変えたくはないです。

僕なんかがきっちりとしたコントロールで投げ分けたとしても、それをずっとやってきた人には敵わないですから。

もちろん全く変えないというわけではないですが、いろいろな人から言われたことを鵜呑みにすることはないと思います。自分の中で消化せずに納得しないまま変えることはないです。

-**大学時代の4**年間を通して、ご自身の中での変化はどういったものがありましたか?

1、2年生の頃は何も分からない状態だったので、リーグ戦で投げさせてもらった時もがむしゃらでした。3年になると周りが見えるようになってきましたが、逆にそうなったことで(気持ちが)上がってこないこともありました。

そういった経験を経て4年になり、周囲から求められていることも分かった上で自分には投げることしかできないので、そこに集中できるようになりました。

加藤拓也

-**ご自身の選手としての強みはどういったところにあると思いますか?**

やはりストレートになりますかね。ある程度これで勝負できてきたことは自信にもなっています。よく打者に向かっていく姿勢の部分を言われるのですが、自分ではそういうつもりはないです。ただ、雑念をなくすというか、どれだけ自分のやるべきことに集中できるかというのは大事にしています。

-**今後プロに入ってから球種を増やすことや、フォームを変える可能性もあるとは思います。**

今持っているのは真っ直ぐ、スライダー、フォークボールですが、まずは変えずにいって、通用しないと思った時に新しい球種を覚えようと思います。

基本フォームは小さい時からあまり変わらないです。投げやすい形でやったらこうなりました。あとは体全体を使いたいというのもあります。綺麗なフォームではないですが、何とか自分の個性を出していきたいです。

-**加藤選手はここぞの場面で緊張するタイプですか?**

どの試合でも緊張はしますよ。でも震えて動けなくなるというものではないです。

「投げたくない」と思うこともあります。ピンチの時もそうですね。正直な話、あまり責任を背負いたくないんです(笑)

他の人が作ったピンチで投げるのは全然いいです。自分でつくったピンチの場面も別に代えてもらっていいのですが、そういう時は大抵ブルペンを見ても誰も準備していないんですよ(笑)だからもう“投げるしかない”という感じでやってきました。

加藤拓也

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