最高の一瞬『錦織圭&ラファエル・ナダル(テニス)』

クロスオーバー編集部からの要望は「できれば笑顔の写真で」ということでしたが、最後は「スポーツらしい感動が笑顔を呼ぶ」と拡大解釈することにしました(笑)。

1枚目は2012年ウィンブルドの錦織圭。この年の全豪オープンでベスト8 に進出し、まさに世界の仲間入りを果たす年でした。何しろ全豪で日本男子がベスト8入りしたのは、佐藤次郎、布井良助以来となる80 年ぶり。4大大会での日本男子のベスト 8 入りは、1995 年ウィンブルドンの松岡修造のベスト8以来となる17 年ぶりでしたから。

ウィンブルドンには第19 シードとして出場し、1、2 回戦ともにストレートで勝利。松岡以来、17 年ぶりに日本人として3回戦に進出しました。3回戦ではファン・マルティン・デル・ポトロ(アルゼンチン)に敗れましたが、必死にラケットを伸ばす姿が印象的です。

それとともにアングルにもご注目ください。テニスの場合、ハード、クレー、グラスと3種類のコートがあり、それぞれ輝き方が違います。特に、この年もウィンブルドンは芝がきれいで、かつ太陽の照り返しで面白い表情を見せました。サーフェスを収めたいため、観客席の一番上で撮影することが多いのもテニス写真の特徴です。

もう1枚は2015年全米オープンのラファエル・ナダル。

2回戦でディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)に勝ったときの写真です。この年はジョコビッチなど若手の台頭や、得意のクレーコートでの不調もあり、世界ランキングは10位以下に陥落。この大会でも次の3 回戦で第32 シードのファビオ・フォニーニ(イタリア)に敗れていますが、ほとばしる汗はそんな苦悩の象徴にも感じられました。

▼真野博正(まの・ひろまさ)

1959年、島根県で生まれて山口県で育った。大学卒業後、大手出版社のカメラ専門誌を経てスポーツフォトグラファーに転身。テニスやサッカーなど各スポーツ界で活躍。特に、テニスの分野では第一人者であり、4大大会の撮影実績は28年にわたる。

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