【テキスト版】CROSSOVER「スポーツコンピテンシー」深堀圭一郎×大畑大介
アキレス腱を断裂しても前を向く。こだわりと諦めの悪さが自分の原動力!
深堀:大畑さんは、オーストラリアとフランス、2つの海外チームでプレー経験がありますよね。当時は海外でプレーすることに、どんな思いがあったのでしょうか?
大畑:1999年のワールドカップの時に自分が全然通用しなかったので成長が必要だと感じました。それで「環境を変えれば大きなものが得られるのでは」と思ったんです。
深堀:海外と日本で違う点はなんでしょう?
大畑:一番は「自分が外国人」というのを思い知ったことです。日本でプレーしていたときは、与えられた環境の中で、自分のパフォーマンスが安定していれば試合に出場できました。しかし、海外では外国人出場枠を争うことになります。オーストラリアでは、最初は順調に出場できたのですが、突然出られなくなったんです。チームに怪我人が出て、外国人枠がフォワードの選手で使われることになって。さらに周りの選手は「大畑大介」を知りませんから、信頼を得なければボールも回ってきません。僕はタックルなどの「ボールを持たないとき」のプレーが苦手だったんです。しかし、克服しないと試合へ出場できない環境に身を置いた結果、徐々にできるようになりました。自分の成長という面では「ボールを持たないときのプレー」が身についたのが大きかったです。
深堀:大畑さんは、海外クラブに移籍するなど、プレーヤーとして研鑚を積みながら、03年のワールドカップを迎えられました。当時コンディションは、どのような状態だったのでしょうか。
大畑:世界的なレベルで「自分たちがどの位置にいるのか」感じられる経験値はなかったですね。個人としては、海外で試合に出場できない期間が続く経験をしたので「気持ちの作り方」が上手くなったと思います。
深堀:ゴルフの場合は、海外に行くと外国人選手の一打に対する執着心のすごさを肌で感じることが多いんです。ラグビーにも、そのような印象はあるのでしょうか。
大畑:日本の場合、当時は社会人ラグビーですから、企業の社員という立場です。一方、海外は「一つ一つのプレーでご飯を食べている」ため、そこのテンションは大きく違いました。契約を勝ち取るという、プロ意識の面で刺激を受けましたね。
深堀:厳しい経験をされて、03年のワールドカップに挑まれたわけですが、結果は前回と同じで4戦全敗でした。この成績は、どのよう受け止めていたのでしょう。
大畑:99年と比べれば、プレーヤーとしては成長できた部分も感じたのですが、勝てなかったことが、すごく悔しかったですね。
深堀:終了後、目標をすぐに07年のワールドカップに切り替えられたのですか?
大畑:難しかったですね。03年に対しての想いが強かったので。僕はスピードが命の選手ですけど、そのころからアキレス腱の調子も悪くなっていましたから。
深堀:それでも、大畑さんは国際テストマッチなどでトライを重ねて当時の世界記録(通算65トライ)を達成されました。最終的に69まで伸ばしますが、トライに対して特別な想いはあったのでしょうか。
大畑:ラグビーにはさまざまなプレーがありますが、僕に与えれた役割は「トライすること」だと思っていました。自分の使命と信じてプレーしていましたね。
深堀:ワールドカップイヤーの07年には、31歳で右足のアキレス腱を断裂する大怪我をされています。そのときに「これまでか」という気持ちにはなりませんでしたか。
大畑:正直、アキレス腱が切れたときは、それほど落ち込みませんでした。すぐにドクターのところに行って「どれぐらいで間に合うか」話をしていたんです。最短なら「半年で復帰できる」と聞いて、それならワールドカップに間に合うと思ったんです。このとき、完全に気持ちを切り替えました。しかし、ワールドカップの2週間前の試合で今度は反対の足のアキレス腱を断裂して、さすがに出場を断念。応援する立場で大会を迎えました。
深堀:それは本当に大変な状況だったと思います。最後にお伺いしたいのですが、成功しているスポーツ選手は「執着心」を持っている人が多いと思うのですが、大畑さんはその辺りはどう思いますか。
大畑:自分たちの強みを出すために、どんな「こだわり」を持つのか、だと思います。「こだわること」がすごく重要ではないでしょうか。僕自身も「諦めの悪さ」が自分の唯一の才能だと思っていますから。
深堀:何度でも挑戦する「諦めの悪さ」は大切ですよね。そんな「執着心」が成功をつかむために欠かせないと改めて感じます。今回は貴重なお話をありがとうございました。
▼大畑大介/おおはた・だいすけ
1975年11月11日生まれ、大阪府出身。ラグビー元日本代表。93年、03年にラグビーワールドカップに出場。11年に現役引退、16年にはラグビー世界殿堂入り
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