トレーニングウエア『アスレタ_防風スウェット』

前回紹介したジュニア向けのサッカーシューズからもわかるように、ウエアやシューズから、日本のサッカームーブメントを支えてきたアスレタ。だがウエアを通しての、サッカーとの関わり方を見ると、アスレタは名だたるグローバルスポーツブランドとはすこし異なる方向性を歩んできた。

Jリーグ発足からはじまったサッカー人気を象徴するウエアは、オフィシャルブランドのレプリカユニフォームなどに代表される、ナショナルチームやプロチームに関わるアイテムだった。もちろんアスレタもそうしたアプローチを行っていたのだが、より力を入れたのが、それとは違うチャンネルだった。

アスレタが注目したのはフットサルだった。11対11で行われるサッカーとは違い、フットサルは5対5で行われ、コートのサイズもサッカーの1/4程度、インドアで行われることが多い。そして性別や年齢にかかわらず楽しめるため、近年、プレー人口は急激に増えている。アスレタはフットサルに熱中する若い世代へウエアを発信しはじめた。

前回に引き続き、お話を聞かせていただいた、アスレタの取締役である千葉哲哉さんはフットサルとサッカーのプレーヤー気質の違いについてこう話してくれた。ちなみに千葉さん自身もサッカーだけでなく、フットサルもバリバリに楽しんでいる。

「フットサルはサッカーよりもストリート感が強いんです。ですから選手たちもファッションに関するこだわりが強いですね。コートでトレーニングウエアとして着られて、練習の行き帰りや、フツーに街中でも着られる、そしてサッカーのイメージをもったウエアが求められました」

アスレタはこうしたニーズに応えるウエアを発信していくことで、フットサルシーンを代表するブランドとしても確固たる地位を築いた。今回紹介する、9月に発売される「防風スウェット」もまさにこの延長線上にあるアイテムといえる。

この「防風スウェット」のパーカとパンツはフットサルに特化したウエアではない。けれどコートで練習するときにも、フットサルを離れてタウンウエアとして着ていても、まったく違和感のないスポーティなウエアとして仕上がっている。

パーカもパンツも、デザインはシンプルで、一見、コットンで作られれているようにも見える。だがコットンでは風を通してしまい、寒くなればパーカの上に、薄手のナイロンブルゾンをはおらねばならなくなる。北風をダイレクトに受けるのも、重ね着をして動きにくくなるのも、トレーニングウエアとして考えればふさわしいとは言えない。

そこでアスレタが考えたのは、薄手で伸縮性があり、風をシャットアウトする「防風スウェット」だ。トレーニングウエアとしてもこれ1枚で完結させるために、スウェットに独自の技術を取り入れた。

それはスウェットの表地と裏地の間に、独自に開発したポリウレタンフィルム“ボンフィルター”を挟み込む3層構造だ。“ボンフィルター”が加わることで、ウエア内部のムレを防ぐ透湿性、風が通り抜けない防風性が格段に向上した。もちろんスポーツをするには十分なストレッチ性も担保された。もしもこれをタウンウエアとして活用するのであれば、申し分のない出来なのだが、トレーニングウエアとして見ると、気になる部分が残った。

それは3層構造にすることによってウエアの重量が増してしまうことだ。単純に数値だけを見ればわずかなものかもしれない。だがあのセレソンのレジェンドたちにウエアを提供してきたアスレタにとっては見過ごせるものではなかった。

たどりついたアイデアは、あえてこの優れた3層構造を取捨選択することだ。たとえばパーカの場合、もっとも風が気になる前身頃には“ボンフィルター”をはさんだ3層構造を採用。逆に後身頃や、可動域と密接な関係をもつ脇などは3層構造を捨てることを決断した。

これによって重さへの懸念は払拭され、ストレッチ性能もより効果的に発揮されるようになった。またワッフル状の裏地によって、肌とダイレクトに触れる面積を減らして、汗によるベタつきを抑える工夫も加えられた。

一方で今どき感のあるタウンウエアという視点から見ると、ベーシックなデザインに、すっきりとブランドネームを配したデザインは、スポーティでありながらモダンな印象を生み出した。そしてトレーニングウエアとして重視されたストレッチ性が、別の役割も果たしてくれた。

もしも見た目そのままのコットンのスウェットパーカやパンツなら、厚手で素材にハリがなく、伸縮性も十分ではないため、どこかゆったりとしてシャープさに欠けるルックスになってしまう。だが優れたストレッチ性はすっきりとしたスリムなシルエットを可能にした。

ベースはオーセンティックなパーカだが、それに加えて、スポーツウエアにふさわしい機能性と、アップトゥデートなタウンウエアとしてのルックスを備えた「防風スウェット」。スポーツも問わず、着るシーンも問わない、まさにハイブリッドなウエアと言えるだろう。

スタジアム周辺を舞台にレプリカユニフォームからはじまった、ウエアのサッカームーブメント。今やこのアスレタの「防風スウェット」のようにボーダーレスな進化をはじめる段階に入ったようだ。

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