最高の一瞬『山の神を上から_柏原竜二(箱根駅伝)』

これは2010年の箱根駅伝で、「山の神」と言われていた東洋大学の柏原竜二選手の激走を撮った写真です。箱根の山道を登る5区を走り、前年につづくごぼう抜きを見せた時でした。

当時は5区の写真と言っても、正面だったり、路上からの位置からのものばかりで、なかなか山登り感のある写真が撮れないなと思っていました。今までの箱根駅伝の写真や、自分で撮った写真を見ながら、俯瞰で捉えているものがないなと感じていたんです。

そこでこの時は、レースの1週間前くらいに箱根に2、3回下見に行き、上から撮れるいろいろな場所を探しました。そしてここなら道も開けているし、俯瞰で撮れるかなというポイントをやっと見つけました。

これは、そんな秘密の場所から撮った写真なんです。道がくねくねしていますから、選手は隠れているところから、ぱっと出てきます。もちろん中継車などが先に通るのでタイミングを合わせることができますが、やはり撮る時は緊張しますね。

山の神の表情は結構苦しそうで、恐ろしいくらい鬼の形相をしていました。

▼岸本勉(キシモト・ツトム)

1969年生まれ、東京都出身。10年余りスタッフフォトグラファーとして様々な国内外のスポーツイベントを撮影。2003年に独立、「PICSPORT(ピクスポルト)」を設立。良くも悪くも人の記憶に残る写真を撮ることを心がけている。オリンピックは夏季冬季合わせて13大会、FIFAワールドカップは7大会、ほか国内外問わず様々なスポーツイベントを取材。2015年FINA世界水泳選手権カザン大会より、オフィシャルFINAフォトグラファーを担当。国際スポーツプレス協会会員(A.I.P.S.)/日本スポーツプレス協会会員(A.J.P.S.)

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