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世界で話題沸騰!スポーツを変える「NFT」ってなに?|第1回「NFT」前編

最近SNSなどで「NFT」というキーワードを目にした覚えがある人は多いだろう。Twitter創業者であるジャック・ドーシー氏が自身の初ツイートを約290万ドルで売却したニュースや、NBAがNFTに基づくデジタルサービス「NBA Top Shot」をローンチしたというニュースはアメリカはもちろん国内でも大きな話題を呼んだ。

突如、世界中で爆発的な盛り上がりを見せるこの「NFT」とはいったい、なんだろうか?

今回からスタートする新連載はSmartSportsNewsのシンクタンク的存在でもある「スポーツビジネス研究所」の所長・上野直彦と助手・目次ほたるによる、ホットなトピックスの分析。記念すべき第1回目のテーマは「NFT」。はたして「NFT」とはなにか。そこにビジネスチャンスはあるのか──。

助手:助手のほたると申します。初めまして! まだ20歳なのでお手柔らかに〜!

所長:所長の上野直彦です。よろしくお願いします。

助手:早速ですが上野所長に質問です。最近、スポーツの世界で「NFT」という言葉をよく聞きますよね。動画やデジタルカード1つに数億円の価値が付いて取引されていると聞いたのですが、正直、難しくてよくわからないです。所長、そもそもNFTってなんですか?

所長:NFTとは「ノンファンジブル・トークン(非代替性トークン)」といって、わかりやすくいえばデジタル資産の1つ。ほたるくんは「ブロックチェーン」という言葉は聞いたことがあるかな?

助手:あ! ニュースで聞いたことがあります! でも、なんのことだがさっぱり……。

所長:ではまず、簡単に説明しよう。ブロックチェーンとは、日本語で「分散型台帳技術」と言われていて、デジタル上の台帳、つまりさまざまな情報を記録するための技術なんだ。現代はインターネットの発達によって、たくさんの情報が取引されているよね。なかには、個人情報やお金の取引など安全に管理しなければならない情報も含まれている。ブロックチェーンは、そういった多くの情報が改ざんされないよう、安全にかつ正確に管理・取引をめざした技術なんだ。

助手:ふむふむ……でも、どうしてブロックチェーンは安全で正確なんですか?

所長:「分散型」という言葉にヒントが隠れているんだ。情報が取引されるということは、情報を持つ「持ち主」がいるだろう? その情報の持ち主たちを中央で管理する「管理者」がいたことで、意図的に改ざんや削除もできてしまっていた。その問題を解決したのが「ブロックチェーン」というわけ。

助手:すごい技術なんですね。

所長:そう。それで、チェーンでつながっている持ち主たちは、個々にすべての取引の情報が管理されていて、お互いに監視し合う状態がつくられているから、持ち主であっても削除や改ざんなどの不正行為はできない。情報の取引が分散した状態ですべて記録されているから、管理者はいらない。そうすることで情報の安全性を担保できる。まぁ、ざっくりとした説明だから、他にも多くの特徴があるんだけどね。

助手:へぇ! なんだか難しいけど、とにかくすごい技術なんですね、ブロックチェーン!

所長:ほたるくん、本当にわかっているのかな……? まぁ、いいか。ブロックチェーンの開発によって、新しく生まれたお金の概念、それがここ数年で急速に世の中に広まった「暗号資産(仮想通貨)」の存在だ。

助手:仮想通貨! それも聞いたことありますよ! あれですよね、ええと、ビットなんとか……?

所長:ビットコインね。あとイーサリウムやポルカドットなどもある。

助手:あ! それです! 仮想通貨とかビットコインは、そのブロックチェーンっていうのに関係しているんですね?

所長:そう! まさに。仮想通貨はブロックチェーンによって電子データのみで管理・取引されている通貨のこと。国家など特定の管理者から発行されているわけではないから、それぞれの利用者の信用に基づいて価値が保たれているのが大きな特徴だよ。ビットコインは仮想通貨の一種で、他にもたくさんの仮想通貨が全世界で取引されているんだ。仮想通貨はそれぞれ特徴や利用目的も違うから、調べてみると面白いよ。

助手:なるほど〜! でも、今は銀行ですぐに現金を引き出せるし、送金も簡単ですよ? 電子マネーもクレジットカードもあるし、わざわざ仮想通貨を使う必要ってあるんですか?

所長:うん、じゃあ1つ質問するぞ。ほたるくんは、誰か遠くの人に送金するとき、手数料が高いと思ったことはない?

助手:あ、あります。たった数千円のお金を送るために数百円の手数料を支払わないといけないとき、なんだか損をしている気分に……。

所長:そうだよね。国内送金であれば、それほど手数料もかからないけれど、海外送金になったら、さらに高い手数料を払わなければいけなくなる。でも、仮想通貨で送金すれば、そういった手数料が格安になる。

助手:え! でも、どうして?

所長:現金をベースとした取引や管理をしている金融機関が介入していないからなんだ。管理者である銀行を通していないことで、送金もスピーディーに行えることも特徴の一つだね。

助手:そんなメリットがあるんですね!

所長:他にも長所はあるし、もちろんメリデメもある。ただ、暗号資産(仮想通貨)は将来性も期待されていて、いま電子マネーが普通に使われているように当たり前に利用される未来が訪れるともいわれているんだよ。

助手:なんだかワクワクします、所長!

所長:ブロックチェーンや仮想通貨についてわかったところで、テーマであるNFTについて説明しよう。

助手:そもそもNFTってなんなんですか?

所長:簡単にいうとNFTも仮想通貨と同じように、ブロックチェーンの技術を用いて資産や取引データを暗号化することでブロックチェーン上に安全に管理、流通させることもできる。

助手:でも、それって仮想通貨とはどう違うんです?

所長:いい質問だね。

NFTは「唯一無二の価値を守り、コピーや改ざんを難しくできる」ことが特徴なんだけどビットコインは世の中にたくさん存在するよね。ブロックチェーンで決定的に大事なのは「唯一無二の価値を守る」ための技術なんだ。なので元本性を保証することに大きな能力を発揮する。そうやって生まれたのが、NFTというわけ。NFT化されたデータは、コピーや改ざんを防げるから唯一無二のオリジナルであることを保証できるんだ。

助手:なるほど!NFT、なんとなくわかった気がします。でも、実際にどんなところで使われていくのでしょうか?

所長:スポーツはもちろんのこと、漫画やアニメ、アートやゲーム、それに音楽などエンタメを担う産業に幅広く使われていくことになる。例えばスポーツの分野だとすでに「NBA Top Shot」が有名だね。これは、アメリカの男子バスケットボールリーグであるNBAの動画を使用してダッパーラボ(Dapper Labs)が開発したサービスだ。試合や選手たちのシーンがデジタル上でカード化されていて、ネットワーク上で取引できる。2021年3月の時点だが、売上が245億円を超えたんだ。

助手:245億円! デジタルカードで!?

所長:そう。他にもアートや音楽の分野では自身の作ったデジタル作品をNFTのオークションに出品するアーティストが現れたり、ゲームの分野では、ゲーム内でのキャラクターやアイテムの所有権を管理するためにNFTが使われはじめているよ。もともとデジタル化しているコンテンツとは、相性がいいわけだよね。

助手:ふむー。NFTがすごいってことはわかったのですが、導入するメリットって具体的になんなのでしょうか? さっき、所長が「コピーや改ざんを防ぐ」とか言っていたような……。

所長:説明しよう。NFTのメリットは大きく分けて3つあるんだ。

1つ目は、資産の劣化や盗難を防げること。例えばアート作品だと、どんなに美しい絵画でも持ち主の管理の仕方が悪ければ劣化してしまうよね。NFTはそもそもデジタル資産であるから、現実にある物体のように劣化したり壊れてしまうことはない。

2つ目は、持っているものが本物かどうか保証できること。物理的に存在しているものには、いつも偽造されるリスクがつきまとうよね。NFTはデジタルデータをブロックチェーンで管理することによって、そのリスクをなくせるから本物である証明も簡単にできる。

3つ目は、知的財産権(IP)が保護されること。NFTでは、取引のデータがブロックチェーン上にすべて記録・管理されるんだ。だから、データ自体に取引条件を付与することもできる。絵画の売買を考えてみよう。誰かが絵画を購入するとき、最初は作者に利益が入るけれど、その後持ち主が絵画を売ったり、転売が繰り返されたとしても、作者にインセンティブは生まれないよね。NFTの場合、流通のたびに作者にインセンティブが入るプログラムを、絵画というデータそのものに組み込むことができるんだ。そうすることで作者の知的財産権が確実に守れるというわけだね。

助手:へぇ〜〜〜。NFTってメリットだらけじゃないですか! いろんなところで活用されたらいいのになぁ。

所長:そうだね。でも、NFTにはまだまだ課題もあるんだ。

助手:所長、教えてください!

所長:勉強熱心でなにより。課題として、まずデータのコピーができてしまう点が挙げられるんだ。さっき、「データはブロックチェーンによって記録・管理されている」と話したけれど、それはあくまでデータの正式な所有権や所在であってデータ自体のコピーの流出のリスクがある。またデータである以上、管理しているサービス自体が終了してしまえば、自動的に保有資産の価値がなくなってしまう可能性も懸念されていたりする。もちろん対策はあるけどね。

助手:なるほどぉ。

所長:ほかにも、ゲーム上で行われる有償ガチャなどの課金システムと法規制の関わりなど、コンプライアンスの部分でも注意しなければいけない点がある。

助手:NFT、課題もあるんですね。

所長:でも、そういった課題を一つひとつクリアしていけば、NFTは私たちが長年見てきたデジタル世界を、より「リアル」なものにしてくれる。また、ブロックチェーンはインターネット社会をもう一段二段と引き上げてくれる技術。ただ、大切なのはその仕組みについて正しく理解をすること。そして、新しいテクノロジーに柔軟に対応していくことだね!

助手:所長、とても勉強になりました! これからも教えてください。デジタルの未来を変えていくNFT、私も注目していきます!

前編:世界で話題沸騰!スポーツを変える「NFT」ってなに?

中編:世界中でバズっている「NBA Top Shot」ってなに?

後編:チリーズ(Chiliz)が描くファンマーケティングの未来

■プロフィール
上野直彦(うえの・なおひこ)
スポーツジャーナリスト。日本ブロックチェーン協会事務局長、早稲田大学スポーツビジネス研究所・招聘研究員、江戸川大学、追手門学院大学で非常勤講師、ブロックチェーン企業ALiSアンバサダー 、Gaudiyクリエティブディレクターなど、スポーツビジネスや女子サッカー、育成年代、Jクラブの下部組織などあらゆるジャンルで活躍。漫画『アオアシ』取材・原案協力、『スポーツビジネスの未来 2021 ー2030』(日経BP)、NewsPicks「ビジネスはJリーグを救えるか?」連載、Forbes JAPANへの寄稿など。趣味はサッカー、ゴルフ、マラソン、トライアスロン。
Twitter:@Nao_Ueno

目次ほたる(めつぎ・ほたる)
フリーライター、モデル。高校時代から始めたモデル活動をきっかけに写真の魅力に気がつき、フォトグラファーとしても活動している。Moment日刊ゲンダイの連載「記憶のはしっこ」他、web記事、エッセイを執筆。愛猫家で保護猫3匹と暮らしている。趣味はフィルムカメラ、読書、美術館巡り。
Twitter:@kosyo0821
note:https://note.com/hotaru0821

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