スポーツイラストレーター宮内大樹 HIROKI MIYAUCHI Vol.1「すべてはインスタから始まった」
SNSをきっかけに大きく人生が変わったスポーツイラストレーターがいる。「hiroki.38」こと宮内大樹さんだ。
宮内さんがサッカー選手をテーマに描いたイラストをインスタグラムに投稿し始めたのは2014年だった。
サッカー日本代表の香川真司がSNSのアイコンにするなど、本人の予想を遥かに超える反響につながっていく。
「SmartSportsNews」の独占インタビューを3回に分けてお届けする。
衝撃を受けた“ウイイレ”
−−宮内さんがイラストレーターの活動を始めたのは?
25歳からです。デザインの専門学校を卒業後、イラストの仕事をやりたくてデザイン会社に入ったんですが、なかなか自分がやりたいことができなかったんです。それだったら独立したがよいかなと。
−−もともと絵を描くのは得意だったんですか?
そうですね。小さい頃って教科書に先生の似顔絵を落書きしたり、マンガのキャラクターを描いたりするじゃないですか? そうしたら友達が「うまいじゃん」と褒めてくれる。それがうれしくて、将来こういうことを仕事にできればよいなとは思っていました。
−−サッカーとのつながりは。
小学校の時から「キャプテン翼」が大好きで、砂場でオーバーヘッドやプールでスカイラブハリケーンとかをしていた。でもサッカーを本格的にはやったことはありません。むしろ、サッカーゲームの方が好きでしたね。
−−Jリーグは見に行っていたんでしょうか。
Jリーグも見てはいましたけど、サッカー番組の「スーパーサッカー」とか「やべっちFC」とかで見るぐらいで、スタジアムにしょっちゅう通っていたとかはないんです。大人になってからフットサルが流行りだしたので、ちょこちょこボールは蹴っていました。
−−そんな宮内さんがサッカーの仕事をしたいなと思ったきっかけは?
2003年に「Jリーグ ウイニングイレブン タクティクス」というゲームが発売されたんです。そのオープニングがアニメーションでめちゃくちゃかっこよくて。ガンダムのデザインなども手がけている形部一平(ぎょうぶ・いっぺい)さんというイラストレーターの方が作られたものだったんですが、衝撃を受けたのは覚えています。
リベリー浮世絵事件
−−サッカーの仕事をするまではどんな活動をされていたんですか?
今でもそうなんですけど、メインの仕事は企業とか行政のポスターとか、サッカーとは関係のない商業ベースのイラストです。
−−なぜサッカーのイラストを描こうと思ったんでしょうか?
2014年のブラジルワールドカップが終わった時ぐらいに、自分の中にもやもやする気持ちがあったんです。世の中はサッカーが盛り上がっているのに、自分は全く蚊帳の外にいる……。サッカーの仕事はずっとやりたいなという気持ちはあったんです。でも、このまま福岡で商業イラストレーターをやっていても、僕の人脈とか実績とかではサッカーの仕事が来るはずはない。じゃあ自分から発信してみようと。誰かが見てくれていると思ったら続けられるかなと思って、2014年の8月からインスタグラムに投稿するようになったんです。
−−一番最初に描いたのは?
本田圭佑選手です。
−−当初から今のようなスタイリッシュな画風だったんですか?
イラストを描き始める前にどんなものがあるかリサーチしたんです。かわいい感じとか、漫画チックだったり、時事ネタっぽいのを描いている人はいる。でも、選手の内面やプレースタイルを表現したものはそんなになさそうだなと。僕自身はデザイナー上がりですし、アイデアや構図だったら自分の良さを出せるんじゃないかと思っていました。勝手に描くからには、その選手のプロモーションになるぐらいの感覚で作ろうかなと。
−−宮内さんは日本人選手を多く描かれている印象があります。
例えば、メッシとかスター選手を描く人は世界中にたくさんいるじゃないですか。でも、日本人選手をモデルにして描く人は基本的には日本人しかいません。日本人として、日本人選手の個性を発信したいなという気持ちがあります。あと、実はもう一つ理由があって……。最初のころにフランク・リベリー選手を浮世絵風に描いたら、ダイレクトメッセージやコメントがたくさん来たんです。僕は英語は全然できないですが、翻訳したらめちゃめちゃ怒っていて。
−−えぇ……。
その国によって価値観や宗教観とかは違うじゃないですか。浮世絵風にしたのがなんで怒られたのかはハッキリとはわからないのですし、ダイレクトメッセージで「これは日本の伝統的な文化です」と返したら納得してもらえたのですが、これまでにも何度かそういうことはあります。
−−自分のイラストが広がったなと感じたきっかけは?
イラストを描いているうちに、だんだん見てもらえるようになって、有名なサッカーブログとかでも取り上げられるようになったんです。しかも、本人から「ありがとうございます」と言われたり、「アイコンに使っていいですか?」と聞かれたりすることが増えてきて。僕の描いたものを本人が見て喜んでくれる。何かしら伝わったんだと思って、すごくうれしかったです。
Vol.2「日本代表エースからのサプライズ」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/6007b0b728203b583a6a5293
Vol.3「心を動かすイラストの描き方」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/6007b0c32be9ea284b4efd12
■プロフィール
宮内大樹(みやうち・ひろき)
1973年生まれ。福岡県出身。数社のデザイン会社勤務を経て1999年にグラフィックデザイナーとして独立。2010年頃にイラストレーターへシフトチェンジ。福岡や東京を中心に、行政・企業・施設のポスターや広告・映像用のイラスト、最近ではJリーグのチームの公式グッズやポスター、スポンサー企業の商品イラストも手がける。
ミートアドマーケット
http://www.m-ad-m.jp
宮内大樹Instagram
https://www.instagram.com/hiroki.38
■クレジット
取材・構成:北健一郎
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