【元ガンバ実業家】嵜本晋輔 SHINSUKE SAKIMOTO Vol.3「日本一から世界一を目指す」
かつてJリーガーのガンバ大阪を1年で戦力外になった男は、ビジネスの世界で「上場」という結果を出した。
リユース事業を幅広く手がけるバリュエンスホールディングス株式会社の代表取締役社長・嵜本晋輔。
元サッカー選手の実業家は、コロナ禍の中で苦しんでいるスポーツ界に恩返しをしようと新たな事業をスタートしている。
「SmartSportsNews」の独占インタビューを3回に分けてお届けする。
グローバル市場でNo.1をとりたい
——2020年8月にバリュエンスグループは「なんぼや」をインドネシアに出店することを発表しました。このコロナ禍でインドネシアへの進出というのはリスクもあると思うのですが。
まだまだ日本で店舗展開をすることは考えているんですけど、個人的にはリユース業界では日本一になっていると思っています。日本一であり続けるということへの興味より、グローバルで1位になりたいという気持ちがあります。日本で培ってきた技術やノウハウがあるので、それが世界でどこまで通用するのかを試してみたい。今は香港、シンガポール、インドネシアで展開をして、2021年の春にはパリやニューヨークで展開をする予定です。アジアのみならず、もっとグローバルにチャレンジしていきます。
——今後の戦略や目標は?
日本市場だけではなくて、グローバルなプラットフォーマーになることが直近のテーマなので、この5年でリユース業界で世界一になっていきたいと思っています。
——インドネシアでの反応はどのようなものですか?
非常にいいですね。日本と比べるとインドネシアの方が客単価が高い傾向にあります。もちろん、うまくいっているところもあればうまくいっていないところもあるんですが、他社よりも早くチャレンジすることで早く課題が見つかって早く解決できるチャンスがあるわけです。そこのPDCAサイクルというか、改善するスピードを早めていければ、勝てると思っています。
「らしく、生きる」というメッセージ
——嵜本さんはビジネスをどうやって大きくしてきたのでしょうか?
家業がリサイクル業だったので父や兄の背中を見ながら育ってきたという環境的なアドバンテージはあったかもしれません。とはいえ、自分自身はまだまだ経営者としては成長途上ですし、足りないところだらけです。私が意識しているのは、いかに優秀な人に応援してもらうかと。1人でやれることには本当に限りがあります。だからこそ、自分にはない能力を持っている人、自分よりも優秀な人を、どれだけ巻き込めるかによって事業の成長は決まってきます。リユース業からするとあり得ないようなキャリアの方々が弊社に入ってきてくれています。
——優秀なキャリアを持っている人たちをどう引き込んでいったのでしょう?
私が描いている未来とか、考えていること、グローバルで勝負したいということを真摯に伝えます。これまでの実績も合わせて、“これまで”と“これから”がちゃんとストーリーとして紐づいているから、そうした人たちが引き寄せられるように入ってきてくれているんだと思います。
——嵜本さんは会社としての究極の目標と、嵜本さん自身の人生の究極の目標というのはどのように定められていますか?
私たちがコーポレートメッセージとして掲げているのが「らしく、生きる。」という言葉です。年齢を重ねるにつれて、一人ひとりが自分らしさとか、ありのままの自分みたいなものを出しづらくなってくるのが一般的だと思います。幼少期ならすぐ手を伸ばしてチャレンジしようと思ったことが、年々守るものが増えたり、立場が変わったりして、人は守りに入ることが多くなります。誰かの視線やどう思われているかとか、よくある不安や恐れみたいなものがあることでチャレンジできない人が増えていく。私たちはサービスを通じて、もっと自由に生きてよいんだと感じたり、新しい価値観に出会ったりして、“らしさ”を出せる世の中にしていきたい。「らしく、生きる。」というのは、私の思う人の幸せや豊かさを凝縮した言葉なんです。私たちは売上や利益を求めてやっているわけではなくて、「らしく、生きる。」を実現するための手段として新規事業をつくっていきたいと思っています。
——スポーツ関連の新規事業や、アスリートのデュアルキャリア採用も「らしく、生きる。」というコンセプトを感じるものです。
「アスリートの持続可能な未来をつくる」というのが人生のテーマです。バリュエンスホールディングス、デュアルキャリアのどちらにおいても単なる営利目的として事業をするのではなく、そこにきちんと思いが乗っかっているブランドであり続けたいと思っています。大阪の小さな店から始まって、私自身もようやくそういうところまで視野が広がったという感覚があります。
——嵜本さん個人としてやり遂げたいことというのはありますか?
私は家族とビジネスをどっちも100点満点取れる男になりたいと思っているんです。日本には今でも男はお金を稼いでいればよいといった価値観が強いじゃないですか。私はそうではなく、どっちもやれたほうがかっこいいと思っています。私自身、3歳になる息子がいるので、パパとしては”3歳“です。怒り方ひとつにしても、褒め方ひとつにしても難しいですし、悩むこととかもあります。もっと父親として成長したいし、ビジネスマンとしても一流になりたい。両方できることがデュアルキャリアならぬデュアルライフというか。それがこれからの個人的なテーマだと思います。
Vol.1「アスリートは“超即戦力”になれる」
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Vol.2「サッカーから学んだ経営術」
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■プロフィール
嵜本晋輔(さきもと・しんすけ)
1982年4月14日生まれ、大阪府出身。バリュエンスホールディングス株式会社代表取締役社長。関西大学第一高校卒業後、2001年にJリーグ・ガンバ大阪に入団する。同時に関西大学に進学。03年、ガンバ大阪を退団後、JFL・佐川急便大阪SCで1シーズンプレーしたのち現役引退。07年に実兄2人と共にブランド品に特化したリユース事業「MKSコーポレーション」を立ち上げる。同年にブランド買取専門店「なんぼや」をオープン。2人の実兄が洋菓子店事業に進出したため、2011年株式会社SOU(現・バリュエンスホールディングス株式会社)を設立。2018年に東証マザーズ新規上場。
バリュエンスホールディングス株式会社
https://www.valuence.inc/
■クレジット
取材・構成:上野直彦、篠幸彦
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