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【#4】アドバイスを聞くって難しい!増える改善点、ぎこちなくなるスウィング…
前回の続きです。ゴルフスクールに通おうと決めた私は、とあるスクールの体験レッスンでカリスマ性のある男性講師に熱心に勧誘されたのですが、結局そこには入会せず、別のインドアスクールに行くことにしました。選んだ基準は、自宅からの通いやすさと価格です。
ぶっちゃけた話、どこのゴルフスクールがいいのか、どんな講師がいいのか、なんてことは実際に通ってみなければわかりません。この手のお稽古ごとでありがちなのは、だんだん行くのが面倒になって通わなくなることです。
これまでの人生の中でもそうやって数々の習いごとやジム通いに挫折して、ただ毎月行きもしない場所にお金を振り込むだけの「自動入金マシーン」と化してきた経験があります。
それを防ぐには、とにかく自宅から近くて手軽に行けることが大事だと思い、それを基準にしてスクールを選びました。
ついにスクールへ
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最終的に入会することに決めたのは、設備が充実している屋内のスクールでした。打席ごとに打球の飛距離やミート率を測定する機械が設けられていて、自分の打球の質が一目瞭然です。また、スイングの映像も見られるので、自分の動きを客観的に把握することができます。
先に言っておくと、最初にここに入ったのは正解でした。講師の方々はみんな親切で、完全な初心者の私に丁寧に指導をしてくれました。
天狗の面をかぶった講師に突然「アイアンがダフり続けた時、お前はどうする」と質問されて、こちらが言葉に詰まっていると平手打ちされて「判断が遅い」と説教されるようなことはありませんでした。
最初は7番アイアンだけを使って基本的なスイングを学んでいきます。見様見真似でボールを打っていると、その様子を見ていた講師から改善点を指摘されます。
「上半身が起き上がっているので、前傾姿勢を保ってください」
アドバイスを生かして、その点に注意して練習を続けていると、次には別のことを言われます。
「左腕が曲がっているので、左腕を伸ばすようにしてください」
ふんふんと納得して、左腕を伸ばすことを意識して打っていると、今度はまた別のことを言われます。
「クラブを手だけで上げないで、体から上げるようにしてください」
そこに気をつけて、さらに練習、練習……。こんな感じでレッスンは続いていきました。講師に改善点を指摘されて、そこを直していくというのは、割と一般的なスタイルではないかと思います。
こうやって1つずつ間違った動きを直していけば、そのうちに完璧なスイングができるようになるはず。はい、そう思いますよね。刃牙の言葉を借りるなら「そんなふうに考えていた時期が俺にもありました」。
増える改善点、そしてついにコースへ…
でも、実際に練習を続けていると、そんな簡単なことではない、ということがだんだんわかってきました。なぜなら、続けているうちに改善点は減っていくどころか、増えていくからです。
「いや、減るのはわかるけど、増えるのはおかしいでしょ」と思った方もいらっしゃるかもしれません。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。でも、違うんです。
こうやって改善点を指摘されて、それを修正するような意識で練習を続けていると、今度は別の改善点を指摘されます。それも直すと、そのことによって前に直したはずのところが再びできなくなっていて、そこも直さないといけなくなったりします。
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そんな感じで、チェックポイントを減らそうとするうちに、チェックポイントがどんどん増えていくという奇妙な現象が起こるのです。同時に気をつけないといけないことが多すぎて、すべてに意識を向けることができなくなります。
それはまるでモグライダーの漫才のようです。ともしげさんが自分のキャパを超えた段取りの多い作業をやろうとすると、上手くできなくて失敗してしまう。それを芝さんが次々に指摘してツッコんでいるうちに、ともしげさんは焦ってどんどん別のミスを誘発していく。無限に続くもぐら叩きのように、改善点だけが山積みになっていく「地獄のモグライダー状態」に陥ってしまったのです。
スクールに通い始めてすぐにこの罠にはまり、私は焦りを感じていました。あれっ、改善点を直していればすぐに打てるようになるはずだったのに、全然そうならないぞ、と。当時の私は、ともしげさんに「美川憲一さんって気の毒ですよね」と話しかけられても、「いや、俺の方が気の毒だよ!」と返せる自信がありました。
そんな中で、スクールに通い始めて1カ月ほど経った頃、私にゴルフを勧めてきたイケメン編集者のスダから悪魔のささやきがありました。
「ラリーさん、ゴルフスクール通い始めたんですよね?だったらもう完璧じゃないですか!一緒にコース行きましょうよ!」
こうして私は、クリアできていない無数のチェックポイントを抱えたまま、次の地獄に足を踏み入れることになるのでした。(続く)
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