
「世の中興奮することっていっぱいあるけど、一番興奮するのは出前が遅いときね」「ああ、間違いないね」というのは、みんな大好きサンドウィッチマンの漫才のツカミですけれども、ゴルフに関しては「世の中緊張することっていっぱいあるけど、一番緊張するのが最初のティーショットね」ということになります。
ティーショットはとにかく緊張する。中でも格別に緊張するのが最初のティーショットです。すでに十数回ほどコース経験を重ねていますが、いまだに最初のティーショットではドキドキしています。
緊張する理由はいくつか考えられますが、最も根本的なことを言うと、最初のティーショットはゴルフコースという「非日常」への入口だからです。
『ワンピース』で言うとグランドラインの入口のリヴァース・マウンテン、『幽遊白書』で言うと魔界に通じる界境トンネル、『キン肉マン』で言うと亡霊超人と戦うための霊界ポケットです。(一個目だけで良かった)
ゴルフを始めたばかりの自分にとって、ゴルフコースというのはめったに行かない特殊な場所だという意識があります。ラウンドが始まってしまえば、出来はともかくプレーそのものにはだんだん慣れていくのですが、最初だけは厳しい。
最初のティーショットを打つときには、普段生活している「日常」の感覚を引きずったまま、ゴルフコースという「非日常」に対峙しなければいけない。そこが何よりつらいんですよね。
皆さんも経験があるかもしれませんが、早起きして朝からしんどいバイトや仕事に行かなければいけないとき、一番つらいのって朝起きて布団から出るまでだったりするじゃないですか。何がどうあれいったん起きてしまえば、あとは所定の場所に行って所定の仕事をするだけ。
しかし、起きるのだけはつらい。頭は寝ているのに体は起きないといけない。夢と現実の狭間であり、睡眠と覚醒の狭間。最初のティーショットというのはまさにそんな感じなのです。
もちろん、そもそもドライバーが苦手、というのもあります。一時期はスライスが止まらなかったし、今ではとにかく当たり損ねが多い。ドライバーはクラブの中で一番長いのでコントロールが難しいし、飛距離が出る分だけ打球が曲がりやすいという一面もある。一番曲がりやすいショットを一番初めに打たないといけないというのも、実に理不尽な話だと思います。
できれば最初のティーショットはPW(ピッチングウェッジ)ぐらいの短いクラブでカツンと打って済ませたい。1番ホールと10番ホールは全部100ヤードぐらいのショートホールにすればいいんじゃないでしょうか。ついでに全部のホールを150ヤード以内にすれば、ドライバーも要らなくなってますます緊張が薄れます。でも、それはもうただのショートコースだ。
あと、最初のティーショットは近くで同行者全員に見られている感じがする、というのも緊張を誘う一因です。後ろの組が順番待ちをしている場合、そこからも視線を感じることがある。実際には他人のショットなんてそんなに真剣に見てないし、気にする必要はないし、ラウンドが進めばあんまり気にならなくなるんですが、最初だけはどうしても意識してしまう。
ただ、最初のティーショットが苦手な理由を自分の心の内面を探って深掘りしていくと、結局のところ「失敗したくない」という心理に行き着きます。ティーショットで派手に曲げるような失敗をしたくないので、失敗を恐れて過度にビクビクしたり、緊張したりしてしまうのです。
そのことに気付いてから、最近のラウンドでは以前よりもリラックスできるようになってきました。そのためのコツは、逆説的ですが、緊張を無理に抑え込もうとせず、緊張している自分を受け入れることです。
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私の感覚では、緊張は体の下から上に伝わってきます。足の裏からズズズッと緊張が全身をめぐって上にのぼっていきます。それが頭まで達すると完全にやられてしまう。
でも、それを無理に抑えようとせず「ああ、緊張してるなあ」ぐらいの感じにとどめておくようにしたところ、緊張感が頭に達する前にショットを打つことができました。結果は良好。何とか緊張をやり過ごしてそこそこの当たりが出ました。
これがいつもできるとは限らないけれど、有効な対策ではあるようです。緊張するのは仕方ないので、緊張を受け入れる。緊張してはいけないと思うと余計に緊張するので、緊張してもいいと思うことにする。緊張しないためには緊張と向き合い、緊張をやり過ごすことが必要なのです。……ってこんなに何回も緊張、緊張って言ってたら緊張してきたな。ちょっと何言ってるかわかんないですね。
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