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選手からマネージャーに転身、そして今週はキャディ 16年ヨネックスレディス覇者が米ツアー制覇

19歳の圧巻Vをキャディとして支えたポラニ・チュティチャイ(右)(撮影:ALBA)

<ポートランドクラシック 最終日◇3日◇コロンビア・エッジウォーターCC(オレゴン州)◇6467ヤード・パー72>

ツアープレーヤーとして日本ツアーに参戦していたプロゴルファーが、米国女子ツアーの「ポートランドクラシック」でキャディとして優勝カップを手にした。マンデートーナメントから史上3人目となる優勝を果たしたシャネッティ・ワナセン(タイ)のバッグを担いでいたのは、同郷のポラニ・チュティチャイ。2016年の「ヨネックスレディス」で優勝を果たした、あのチュティチャイだ。

12年から日本を主戦場にプレーし、15年に下部のステップ・アップ・ツアーで優勝。そしてヨネックスレディスでは上田桃子を破って初優勝を遂げた。シードも獲得したが、翌年は不振に陥って早々にこれを手放した。再びステップに戻ると、18年にも優勝。ところがコロナという転機が訪れ、人生が一変した。

「コロナの影響もあって日本に入国できずに、実質、選手としてのキャリアを諦めました」。すでに30代なかばのチュティチャイは、そこで選手サポートの立場に転身。「タイにはいい選手がたくさんいるので、世界のトップツアーに出るための助けをしたかった」。そこで今年からマネージャー業へ。「旅の予約、通訳、料理、とにかく身の回りのことはすべてしているの」と、今年はワナセンのサポートに徹してきた。

すべての試合に参戦できない出場優先順位のため、どの試合に出られるか分からない立場のワナセンだが、今週は月曜日に行われたマンデートーナメント(予選会)を勝ち上がって本戦出場。「急に出場が決まったので、わたしがキャディをすることになったの」とマネージャーと同時にキャディも務めることになった。

チュティチャイは1番のスタートを振り返る。「コースでは選手としてプレーしていた経験からアドバイスもした。でも、今朝シャネッティは手が震えていた。だから、好きなことを考えようと話したの。ワナセンは韓国ドラマ、K-POPが好きなので、そんな話をして緊張を和らげようとした」。選手として優勝経験のあるチュティチャイだからこそ、ロープ内でのストレスを軽減する術を知っていた。

緊張の最終日、首位と1打差からスタートした二人は驚異の「63」をマークし逆転。「先週はエプソンツアー(下部ツアー)でのプレーオフで負けたばかりで、まだ信じられない」と目を潤ませる。今季は予選カットのある大会10試合中9試合で予選落ち。二人三脚でつかんだ米ツアー優勝は、二人にとっても驚きだったに違いない。

ツアープレーヤーとしての立場を捨てて、後身の活躍を後押しする役目となったいま、チュティチャイの夢は「もっと多くの選手をサポートして、タイの選手の優勝を支えたい」と今後も裏方に徹するつもりだ。

「ゆくゆくは会社を立ち上げて、もっと多くの選手の米ツアー進出を実現させたい」。“第二の人生”1年目で迎えた最高の瞬間。チュティチャイの存在が、今後のタイ勢のさらなる進撃を生むことになるかもしれない。(文・高桑均)

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