全米プロの舞台は“様変わり” 名匠ドナルド・ロス氏オリジナル設計が復活
<全米プロゴルフ選手権 事前情報◇16日◇オークヒルCC(米ニューヨーク州)◇7394ヤード・パー70>
今季メジャー2戦目の「全米プロ」はニューヨーク州ロチェスターの名門、オークヒルCCで18日(木)に幕を開ける。
ニューヨーク州の北西部にあるロチェスターは五大湖の一つ、オンタリオ湖に面した緑豊かな街。“ナイアガラの滝”までわずか1時間半で、カナダ国境にほど近い位置にある。
同コースではこれまで何度もメジャーチャンピオンシップが行われてきた。記憶に新しいものでは2003年、2013年の全米プロ、1980年にも同大会が開催された。「全米オープン」も1956年、68年、89年と3度開催され、ジャック・ニクラス、リー・トレビノ(ともに米国)といった偉大なチャンピオンが誕生した。さらに1995年には欧米対抗戦の「ライダーカップ」も行われ、その美しい姿が世界に紹介されている。
ここにオークヒルCCが誕生したのは1926年のこと。大会が開催されるイーストコースは、パインハーストNo2を代表作とする名匠ドナルド・ロス氏が設計を施し、名作の一つとなった。しかし、そのロスのコースは時間の経過とともに何度も改造が行われ、その姿はすっかり形を変えてしまっていたのだという。
1950~60年代にはトレント・ジョーンズ氏、70年代にはジョージ・ファジオ、その甥のトム・ファジオ両氏が改修した。コースを近代化し、5番、6番、15番を再設計。18番グリーンの位置も大きく移動した。「これらの改修はすべて世界のトッププロが戦うためのもの。ロスのオリジナルの設計はどこかに消えてしまった」とメンバーからは不満の声が上がったという。
そしてついに始まったのが「ドナルド・ロスのオリジナルデザインを取り戻す」というプロジェクト。2015年、クラブはアンドリュー・グリーン氏を迎え、コースにロスが作り上げたという息づかいを復活させるための改修作業を行った。
最終的に距離は伸ばされたが、メンバーのためにフォワードティも創設し、ロスが描いたデザイン画と当時の写真をもとにグリーンの形状もより近いものへ復刻させたという。グリーン氏はコース修復のエキスパートで、これまでコングレッショナルCCやインバネスCなど、クラシックコースを数多く手がけている。
修復作業は2019年に終了した。18ホールのすべてのグリーンが作り変えられ、バンカーも修復。そのいくつかは場所も移動された。育ちすぎた木々の多くが伐採され、眺望が開けてツリーラインも大きく変わった。グリーン氏は「これまで見たこともないような、難しい変化に富んだピン位置が期待できる。すばらしいメジャーチャンピオンシップになるはずだ」とコメントしている。
2013年、テンポラリー・メンバー(特別一時会員)だった松山英樹が19位に入り、翌年のツアーメンバー資格をほぼ手中に収めたのもこの大会だ。今年は全長7394ヤード・パー70。10年前とは姿を変えたコースが選手たち待っている。(文・武川玲子=米国在住)
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