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知られざる超名門、ロサンゼルスCCの全貌が明らかに いよいよ初の全米オープンが来月開催

LAのど真ん中に位置する隠れた超名門コース(撮影:GettyImages)

映画の都として知られるロサンゼルスの街の超中心地、ビバリーヒルズに36ホール(ノース、サウスコース)を有する広大な土地に『LACC』、“ザ・ロサンゼルス・カントリークラブ”がある。

東側は高級ブティックが並ぶロデオドライブ、セレブリティが豪邸を構える“ビバリーヒルズ”、西側にはUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の広大なキャンパス、北側の丘陵地には超高級住宅地のベルエアーが静かにたたずんでいる。真っ白なクラブハウスに続くゲートは、ロサンゼルスでも最も忙しい主要幹線道路の一つ、“ウイルシャー・ブルバード”に面する。しかしクラブのサインもなく白い円柱があるだけ、「こんなところにゴルフコースがあるの?」と毎日この道路をドライブする街の人々の中にはその存在さえも知らないことがある。

LACCの歴史は古い。1897年秋、ロサンゼルスのビジネスマンたちが集まり、新しく人気を集めているゴルフというスポーツを楽しむために、現在の場所よりやや南側に“ロサンゼルス・ゴルフクラブ”として9ホールのコースを設立した。人気となったゴルフは手狭になり、その後ビバリーヒルズに移転を計画。1911年5月30日に現在のクラブハウスがオープンし、21年に英国のゴルフコース設計家、W・ハーバート・ファウラー氏が2つの18ホールを現在の場所に設計。1920年代に同クラブのメンバーでもあった著名なゴルフコース設計家ジョージ・C・トーマスがノースコースを再設計し、現在の名コースとなった。

今年初の「全米オープン」が開催されるのはこのノースコース。2010年には5年かけて名匠ギル・ハンス氏がコース改造を手がけ新しくなったノースコースが誕生。コースから1500本の木が伐採されたというが「トーマスが設計したオリジナルのコースを再現した」という。

超名門の会員制クラブだが、不思議なことにハリウッドスターの名前はない。13番ホール沿いに豪邸を構えたプレーボーイ誌の創設者、ヒュー・ヘフナー氏、14番フェアウェイに暮らした20世紀、アメリカを代表するスターのビング・クロスビー氏も会員にはなれなかった。77年までユダヤ人の入会を禁止し、アフリカ系アメリカ人の入会もその後に解禁された。メンバーにはセレブの名前は今もなく、ロサンゼルスの実業家たちが集まるクラブとして知られている。

PGAツアーの「LAオープン」が1926~40年までに5度開催されたが、「差別があるコース」だったこともあり、その後はツアーから撤退している。

現在1500人のメンバーを有するが、実際にゴルフをするのは300~400人程度。世俗から遮断される中で政治経済の社交の場なのかもしれない。ところがそのメンバーの意識も世代交代とともに徐々に変化が現れてきた。2015年、全米オープン開催の是非を問う投票が行われた結果、開催が決定。知られざるコースが世界へお披露目されることとなった。

同コースではこれまでに1930年に「全米女子アマ」、1954年に「全米ジュニアアマ」、2017年には「ウォーカーカップ」と3度のUSGAの大会が開催されているが、このロサンゼルス地域で全米オープンが開催されるのはリビエラCCで行われた1948年以来、実に75年ぶりのこと。

「ロサンゼルスは全米の『スポーツキャピタル』」とUSGAのマイク・ワン会長。昨年は新しくできたSofiスタジアムでNFLのスーパーボウルが開催され、NBAのレイカーズにはレブロン・ジェームズと八村塁、MLBはドジャースと、あの大谷翔平のエンジェルス、そして2028年にはロサンゼルス五輪が控えている。さらに2032年にはLACCで「全米女子オープン」の開催も決まっている。

「ここで全米オープンが開催できるのは、ゴルフの発展に大きな意味がある」とワン会長は興奮気味だった。

全長7421ヤード、パー70(35・35)で行われる第123回全米オープン選手権は6月15日に開幕する。(文・武川玲子=米国在住)

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