プロデビュー戦で劇的勝利 20歳、ローズ・チャンの長い一日
<ミズホ・アメリカズオープン 最終日◇4日◇リバティ・ナショナルGC(米ニュージャージー州)◇6656ヤード・パー7>
プロデビュー戦で快挙達成だ。先月20歳になったばかりのローズ・チャン(米国)がトータル9アンダーで並んだジェニファー・カプチョ(米国)をプレーオフ2ホール目で破り、72年ぶりとなるプロ初戦での勝利を飾った。
2位に2打のリードを持ってスタートした最終ラウンド。3番までパーを並べたが、4番でこの日始めてスコアが動いた。ここをボギーとすると、その後もバーディを奪えない展開で後続に並ばれる。一時は4人が首位タイに立つ展開も、前半を終えて1打リードで首位を守った。
「きょうは難しいコンディションだったし、とにかく粘るしかなかった。手堅いプレーはできたと思う」と、最終ホールを迎えた時点で1打リード。パーで逃げ切りという状況で、ティショットはバンカーへ。直接狙えない状況でなんとかグリーン手前まで運び、アプローチも2.5メートルに寄せた。だが、優勝パットは無情にもカップ右を抜け、18番パー4でのプレーオフにもつれ込んだ。
1ホール目はともにティショットを曲げて、2打目をグリーン手前まで運ぶのがやっと。チャンはそこから3.5メートルと寄らず、相手は1.5メートル。不利な状況もこれを沈めてパーとすると、カプチョに入れ替えされ2ホール目へ。ここでスーパーショットが飛び出す。
フェアウェイからの2打目は残り残り180ヤード。日も落ち、冷たいアゲンストの風のなか放たれた2打目はピン右2メートルに止まった。ここから2パットのパーで締めくくり、パーを逃したジェニファーを振り切った。
「この場所にこうしていられるとは思わなかった。予選通過もできると思っていなかった」。大会前にはプロデビュー戦をこうイメージしていた。「私はいつもできることをやるだけ。何位に入りたいとか、何位に入らないといけないとか思ったことはない。きょうもそうプレーしていた」と、プレッシャーのなかでも自分を見失わずに戦った。
世界的に見ても珍しい初戦V。今大会はAJGA(全米ジュニアゴルフ協会)の選手と回るという一風変わったフォーマットだったが、つい数年前までジュニアとしてプレーしていたチャンがここで勝った意味は大きい。「私より若い世代にいい影響を与えたいと思っている。私もAJGAでプレーして、ジュニア最終年には、AJGAに入ってくる若い子たちからサインを求められるようになった。いい目標にならないといけないと思っていた」。
順位は気にしていなかったと明かすが、ジュニアに希望を与える存在でありたいと願い、それを多くのジュニアの前で実現してみせた。米ジュニア界にとって意義深い一日。ローズにとっても忘れられない日となった。
「とっても興奮している。みんなともっと会う機会が増える」と会見では笑顔でメディアにもあいさつ。この勝利でツアーメンバー入りが決定し、今季残り試合へのフル参戦が可能となる。次週は同じニュージャージー州の「ショップライトLPGAクラシック」。『出場するか?』の問いに対しては「期末テストが来週あるから忙しいの(笑)」。スタンフォード大の学生として、今週とはまた違う忙しさが待つという。
ジュニア時代から数々の賞を総なめにしてきた超逸材。午後10時に迫ろうかという真っ暗闇の中、優勝カップを誇らしげに抱え、コースをあとにするローズの表情は驚きと満足感、そして達成感であふれていた。(文・高桑均)
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