習志野で感じた日本男子選手の可能性【舩越園子コラム】

4位に入った石川遼を筆頭に、日本勢が大健闘。今後の活躍を期待せずにはいられない(撮影:岩本芳弘)

日本で開催される唯一のPGAツアーの大会「ZOZOチャンピオンシップ」は今年で5度目を迎えた。見事、勝利を飾ったのは、5度の大会すべてに出場してきた米国出身の26歳コリン・モリカワだった。

モリカワは初日に「64」をマークして単独首位発進したが、2日目に「73」を喫し、8位タイへ後退。しかし、3日目に「66」と巻き返し、首位と2打差の単独4位へ浮上した。

そして最終日は7バーディ・ボギーなしの見事なゴルフでトータル14アンダーまでスコアを伸ばし、2位に6打差で圧勝。突出した挽回力と爆発力で他の選手を寄せ付けなかったサンデー・アフタヌーンのモリカワの戦いぶりは圧巻だった。

振り返れば、初出場した2019年大会でのモリカワは、まだプロ転向したばかりで初々しさがあふれ返っていた。

「あのとき1番ティに立ったら、日本のギャラリーの5重ぐらいの人垣が、ロープに沿ってまっすぐ長く伸びていた。あの日のあの光景は、今でも忘れられない」

その後の彼はメジャー2勝を含む通算5勝を挙げ、トッププレーヤーの仲間入りをしたが、2021年の「全英オープン」優勝以降は勝利から遠ざかり、スランプ説もささやかれていた。

そんな中、習志野で初めて目にした「忘れられない光景」は、「あそこで、あの人々の中で勝ちたい」と願い、自分自身を鼓舞するためのモチベーションとなってきた。

「モリカワという名前を持つ僕が、日本で勝てたことには特別な意味がある。愛する国で勝てた」という彼の言葉には、実感がこもっていた。

そんなモリカワの独走による優勝は文句なしに素晴らしかったが、今大会でもうひとつ特筆すべきは、日本勢の大健闘ぶりだった。

4位タイに石川遼、6位タイに平田憲聖と久常涼。そして、12位タイに小平智、16位タイに稲森佑貴。

日本開催ならではのアドバンテージが無かったわけではない。だが、PGAツアーによってセッティングされた舞台で、日本人選手がトップ10に3人、トップ20に5人も食い込んだことは、石川の言葉を借りれば、「今までで一番、日本の20代前半の選手の勢いがあり、層が厚くなっている」。

そして、「日本の男子のレベルは高いと思う」と言った石川の言葉には、「その通りだ」と心底、頷けた。

モリカワが2日目にオーバーパーを喫しても、「それがゴルフだ」と気持ちを切り替え、3日目と最終日に盛り返して勝利したように、トップ10入りを果たした3人は、みな素晴らしい挽回力を披露した。

最終日の石川は、一時2位に浮上しながら、11番でボギー、12番でダブルボギーを喫し、「かなりダメージが来た」「久しぶりに頭に血が上った」。

だが、それはすべて「自分の責任。自分が悪い」と受け入れたことで、気持ちが落ち着き、14番からの3連続バーディにつながった。17番のボギーも18番のバーディで取り返し、どこまでも決して諦めなかった彼の姿勢が、4位タイの好成績につながった。

2012年の「プエルトリコ・オープン」で単独2位になったときは、精一杯の戦いだったが、今大会では「ショットが良かった分、もったいないミスもあって、まだまだだと思った」。6位タイに食い込んだ平田も「欲を言えば、もう少し伸ばしたかった」と振り返り、久常も「もっと上を目指したかった」。

トップ10入りした3人全員が「もっと行ける」「もっとできる」と感じていたところに、日本の男子選手の今後の可能性が感じられ、とても楽しみになっている。

石川と平田は、トップ10入りして得たPGAツアーの次戦出場権を生かし、11月2日からメキシコで開催される「ワールドワイド・テクノロジー選手権」に「出る」と言い切った。久常は「ぎりぎりまで考えたい」と言ったものの、彼にはDPワールド(欧州)ツアーのポイントランキングでトップ10入りを確定させて、PGAツアー出場権を獲得する道がほぼ開けているため、おそらくはDPワールドツアーの残り3試合に集中しそうな様子が見て取れた。

日本の男子ゴルフが、こんなにも希望と可能性にあふれたことは、近年では一度もなかった。石川が言った通り「今が一番、勢いがある」。PGAツアーで“日本の花”が次々に開花する日が近いうちに到来することを、現実として感じ取れたZOZOチャンピオンシップだった。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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