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目標を見失わない者だけがたどり着ける初優勝という頂【原田香里のゴルフ未来会議】

今季国内女子ツアー23試合を終えて、初優勝を遂げた8人の選手(撮影:ALBA)

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。9月に入ってようやく少しだけですが秋の気配が漂い始めた気がします。ツアーも終盤に向けてヒートアップする時期。これまで以上に注目したいと思います。

日本女子ツアーはすでに26試合を終えていますが、今年は初優勝の選手が多いような気がします。2戦目の「明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメント」で吉本ひかるさんが優勝したのを皮切りに、山内日菜子さん、岩井明愛さん、神谷そらさん、櫻井心那さん、小滝水音さん、菅沼菜々さん、蛭田みなみさん。と、これまで8人が初優勝しています。

櫻井さんは先週の「ゴルフ5レディス」で早くも3勝目を飾っており、ステップ・アップ・ツアー史上最多の5勝を挙げた昨年の勢いを、レギュラーツアーでも発揮し始めているようです。
 
初優勝までの道のりには、それぞれ計り知れない努力と苦労があります。吉本さん、小滝さんは、“黄金世代“と呼ばれる1998年度生まれ。高校1年生でツアー優勝を果たした勝みなみさんや、高校3年生で「日本女子オープン」を制し、米ツアーでも6勝している畑岡奈紗さん、2019年「AIG女子オープン」優勝の渋野日向子さんなど、同世代が華々しい活躍をするたびに、イヤでも自分と比較してしまったことでしょう。
 
いい意味ではもちろん、大きな刺激になるでしょう。でもその反面、周囲はもちろん、自分自身からの重圧も大きくかかります。それを乗り越えての初優勝は、本当に大変だったはずです。
 
「アクサレディスin MIYAZAKI」で初優勝した山内さんは、QTランキング181位と、試合出場のチャンスがほとんどない状態でした。地元、宮崎出身ということもあり、主催者推薦をもらってプレーした大会で見事に優勝。わずかなチャンスをつかんだのです。
 
「NEC軽井沢72」で初優勝の菅沼菜々さんは、広場症候群という病と戦いながらプレーしています。飛行機や船、新幹線にも乗れないため、北海道や沖縄の試合に出られないというハンデを背負いながら、何度も優勝争いを繰り返し、ついに頂点に立ちました。
 
「CATレディス」のプレーオフで西郷真央さんを退けた蛭田さんは、福島県出身。中学1年生だった11年に東日本大震災を経験しています。シード権をなかなかとれなくても、必死で練習を重ね、キャディをしてくれたお父さんと一緒にうれしい初優勝を飾りました。今でも家族とともに福島県に住んでおり、地元の応援への感謝を忘れない姿が印象的です。
 
それぞれがずっしりと重い人生の物語を抱えながら、日々努力しているのですが、優勝にたどり着けるのはほんのひと握りの人だけです。その誰もが、どんなに苦しいときでも目標を見失わずにいることができた人だと思います。長いシーズンずっと張り詰めていることはできませんが、目標に向かってやらなければならないことを日々こなしていくモチベーションを保つことは大変です。
 
プロゴルファーなら誰もが『優勝』の二文字を夢見ています。けれども、残念ながらたどり着けずに終わる人もたくさんいます。また、1勝できても、それだけで終わる人も少なくありません。それがわかるからこそ、初優勝というニュースを聞くたびに、私はその選手のさまざまな苦労に思いを馳せてしまいます。
 
初優勝までの道のりも厳しいですが、2勝目への道は、また違う厳しさがあります。アスリートでいる限り、厳しさに終わりはありません。
 
今季は残り12試合。そのうち3試合が公式戦です。誰が勝利の栄冠をつかむのか。そのうち初優勝は何人出るのか。目が離せない中でも、選手たちがここまでくる間のことを、少しでも思い浮かべていただけたらいいなぁと思っています。

■原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

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