「子どもたちの可能性は無限大」 今後は日本でも…畑岡奈紗の“ジュニア育成”への想いとは?
日米合わせ通算11勝の畑岡奈紗が、12日(水)から始まる米国女子ツアー「ロッテ選手権」出場のため滞在しているハワイで取材に応じ、ジュニア育成への思いを語った。7日には6~17歳の女子を対象に、自身初となるレッスンイベントに参加。「大きいことをやろうとするとすごく難しいけど、まずはこういうイベントなどにどんどん参加して、ゴルフの楽しさを伝えていきたいですね」。このできごとを第一歩とし、草の根活動を行っていく。
野球、サッカー、ゴルフなど競技に関わらず、子どもの頃にプロと接する機会は特別。その後、熱中するスポーツを決めてしまうこともあるほど影響は大きい。「みんな目がキラキラしていて、たくさん質問してくれてすごくうれしかった」と、畑岡も小さい体から発されるパワーの大きさを直接肌で感じ取ることができた。
「『どんな練習をしたらいいですか?』とかゴルフを真剣にやってるんだなと感じる質問もあって、楽しい雰囲気もありつつ、真剣に取り組んでいる姿を見ることができてうれしかった」。畑岡がデモンストレーションでボールを打つたびに、40人ほどの参加者からはどよめきが。国が変われど、また時代が変わってもトッププロを前にした子どもたちのテンションの上がりようは、いつも一緒だ。
今回のジュニアレッスン会は、畑岡が今年からブランドアンバサダーを務めるヒルトングランドバケーションズ(HGV)と全米女子プロゴルフ協会(LPGA)、ハワイ州ジュニアゴルフ協会による「LPGA USGA 女子ゴルフ ハワイ支部」立ち上げを記念し開催されたもの。募集開始からわずか一日で定員が埋まったことでも、注目度の高さはうかがえる。畑岡にとっては、「無限に練習できる体力だったり、楽しかったことを思い出すことができました」と、なつかしい気持ちを味わういい時間にも。なによりも子どもたちの健気な姿に「癒されました」と、活力が得られる場所になった。
そしてここからは自らの想いと、自分を支えてくれる人たちの考えが合致したことで、一気に育成活動が前進していきそうだ。リゾート施設の提供などを行うHGVは、米国女子ツアーのシーズン開幕戦「ヒルトン・グランド・バケーションズ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」のメインスポンサーとしても知られるほか、日本とハワイのジュニア交流戦「アジア・パシフィック・ジュニアカップ」(現在はコロナ禍で休止)を長年サポートするなど、ゴルフとの関わりも深い。
それはHGVのマーク・ワン社長兼最高経営責任者(CEO)の“ゴルフは交遊に大きな役割を果たす”という考えも大きい。現在、LPGAともパートナーシップを締結。「我々はゴルフ界の女性を継続的にサポートし、特に新世代の女性アスリートにフォーカスしていく」(ワン社長)と、これからさらに“育成”への動きを加速していく意向も示している。
その一環として、日本での育成イベント開催も考えられている。HGVとLPGAが力を合わせ、今回のようなイベントを日本に持ち込むというもの。そしてこれに「私をサポートしてくれるスポンサーも、ジュニアゴルフの育成に力を入れたいという話をしている。私とスポンサーの考えが合っているので、一緒に何かできればいいと思います」と畑岡も共感。母国で“第2、第3の畑岡奈紗”を育成しようとする姿を、今後見る機会が増えるかもしれない。
自らも宮里藍に憧れジュニア時代を過ごしてきた。「海外でプレーしていた時も、茨城の大会(ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ)にはほぼ毎年帰って来ていて、それを見に行くのが楽しみでした。試合中も『藍ちゃーん!』って声をかけたら手を振ってかえしてくれたり、サインをもらった思い出は残ってます」。今はこの役目を、自分が担う立場になった。「当時の藍さんは、今の私の年齢(24歳)くらい。そう考えるとあっという間だし、見られる立場になったんだなって」と感慨深い。
ジュニアと触れる機会に、意識することを畑岡に聞くと「楽しいと思ってもらうこと」という答えが返ってくる。「小さい子どもたちの可能性は無限大。レッスンイベントとはいえ、教える時に、型にはめることなく、その子のいいところを伸ばせるような教え方をしたい」。この考えを大事にしていく。
このような触れ合いが、自分に働きかけるものも大きい。「プロになると成績を残さないといけない部分はあるけど、子どもたちを見て、その頃の気持ちを忘れずにプレーすることは大事だなと思いました」。11歳で本格的に競技を始めた時に感じていた、“ゴルフが楽しい”という初心を思い出す機会にもなった。子どもたちが持つ“無限の力”を最大限に引き出すため、日本のエースが一肌脱ぐ。(文・間宮輝憲)
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