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決戦前夜に事務所が断水…「その瞬間、勝ったと思った」。立川の選手兼代表理事・皆本晃が語るvs名古屋、ホーム2000人超満員の舞台裏

アスレの物語は、フィナーレへと向かっていた。

「立川アスレ2,000人チャレンジ」を掲げ、立川アスレティックFCの本拠地、アリーナ立川立飛で開催した今シーズン最後の試合。

選手兼代表理事の皆本晃を中心に続けた地道な活動が実を結び、会場には2282人の観客が足を運び、満員のアリーナは最高の雰囲気だった。

対戦相手は、すでにリーグ戦1位でプレーオフ出場を決めていた絶対王者・名古屋オーシャンズ。立川は2018年に「府中アスレティックFC」から「立川・府中アスレティックFC」に変更して以降、2022年の全日本選手権決勝で勝った以外は、リーグ戦で名古屋に一度も勝てていなかった。

皆本は言う。

2000人を呼ぶだけではなく、その方々の目の前で名古屋を倒してこそ、今回のプロジェクトが成功したと言える」

そして見事、4-1で勝利を収めた。試合を決めたのは皆本自身のゴールであり、この試合に向けて続けてきた活動が報われた瞬間だった。

アスレの物語は、最高の形で締めくくられた。

クラブの代表理事就任から1年。たくさんの苦労や苦悩があったなか、どのように2000人超の集客に成功したのか。皆本には勝算と、地道な行動があった。

物語の舞台裏を、盟友・渡邉知晃が聞き手となり、皆本が自ら語る。

インタビューは118日に実施

インタビュー・編集=渡邉知晃

満員のアリーナで大敗する夢を何度も見た

──「立川アスレ2,000人チャレンジ」というプロジェクトをやろうと決めたのはいつ?このタイミングにしたのは意図があった?

やろうと決めたのは1年前だね。このチームを引き継ぐと決まった時期には、すでに来シーズンの年間スケジュールが出ている。そこでホームゲームがいつあるのかを見て、どこで集客の山を作るかを考えた時に、どう考えてもここしかなかった。相手が名古屋だったこと、アリーナ立川立飛で開催するシーズン最後の試合だったこと。運営面の体力を考えた時に、開幕戦に注力して、そもそも試合ができるかわからない状態でたくさんのお客さんを入れたらやばい、と。

裏方のメンバーも、これまでアスレを運営してきた人がいなくなったし、引き継ぎも100%じゃないから、そもそも開幕戦でキックオフできるのか……という心配すらあった。あれが足りない、これが足りないというのは実際にいっぱいあったしね。だから最初の試合は正直、無事に試合が成立すれば、お客さんが1人も入らなくても仕方ないという考え方だったよ。でもそこから少しずつ変えていって、徐々に戦略を立てて、中断明けの10月のホーム戦と、今回の1月のホーム最終戦で集客しようということは、シーズンの最初から話していたね。

──俺が晃の立場だったら、その試合を名古屋戦に当てたくないと思ったかもしれない。結果的にはよかったけど、もし2000人集まっても、0-5で負けたら観に来てくれた人もがっかりしてしまう。そのリスクは考えなかった?

めちゃくちゃ考えたよ。そもそも0-5もそうだし、春先の時には、名古屋が圧倒的に1位で、立川が下位だったから、そのままの順位での試合だったら寒いな、と。だから、とりあえず勝ち続けて上位争いをしないといけないと思っていた。今回もできれば名古屋のリーグ戦1位が決まっていない状態でやりたかったけどね。俺としては、そうやって考えながら選手をやっていたよね。

0-5で負けたらというのは、正直俺は、当日までビビってた。それが一番のプレッシャーだったね。名古屋が見たいと来てくれる人もいるから、「府中」の頃から名古屋戦はお客さんが入るのはわかっていた。本当に何回も夢に出てきたから(笑)。これだけ頑張ってきて、10月の時点で1月には2000人は入ると思っていた。でも、死ぬ気で頑張ってきたことが、もしも0-5で負けたら振り出しに戻ってしまうと。その恐怖はマジで毎日あったよ……

──この試合にするということは、途中で変えようとはしなかった。

変える選択肢はなかった。ギャンブルだったね。変えられる選択肢がないからいくしかないし、振り出しに戻っても仕方がない。負けるにしても1点差、せめて2点差と思っていたよ。でもさ、データを見るとアリーナ立川立飛でやった名古屋戦は必ず3点差以上で負けている。お前も覚えてるでしょ?

──1回も勝ってないな。

そうだよ。全部3点差以上で、4点差の時もある。惜しかった試合が一つもない。そういうデータが、俺のビビりを後押ししたよね(笑)。

──でも変えようとしなかったのは、ギャンブラーだな。

ギャンブラーだったよ。勝てる根拠はないから。

──名古屋以外なら勝てる可能性も違うじゃん。

だから名古屋戦以外がいいとは思っていたよ。集客的には名古屋戦がいいけど、スケジュールがもうそうなってたからさ。

──ギャンブルに勝ったと。

悪いけど、ギャンブルに勝たせてもらったよ。

“1200を集めるロジックとアクション

──実際にホーム満員に向けたプロジェクトを始めたのはいつ?

世に出したのは、1022日のホームゲーム終から。1月は絶対に2000人を入れると。社内ではシーズン開幕前からずっと言っていたけどね。

──なんで10月の時点で2000人は入ると思えていたの?

お客さんを集める方法がなんとなくわかってきたからかな。これをやったらこれくらい入る、ここにアプローチすればこれくらい入るというのが見えてきて、精度が上がってきた。だから普通にやればいけるとわかった。

──具体的には?

俺たちのターゲットは小学生とファミリー。いかに子どもを集めるかが大事で、そのための接点を作ること。だから、春先から俺は1月に2000人集めるためにいろんなところにタネを蒔いてきた。一番はサッカー少年団だね。例えば、関わりのない子どもに試合観に来てって突然言っても、無料でも来ないでしょ。

──なるほど

でも、接点があると来てくれる。一緒に練習したとか、チームのコーチがアスレのことを気に入ってくれたら来てくれる。114日を見据えていたから、例えば「8月の試合に来てください」と言って、断られてもいい。その会話ができることが大事で、最低でも10チーム以上連絡できる、会話ができる関係を作る。その時に断られても、じゃあ1月に大事な試合があるからと伝える。10月に来た人たちには、「次は1月、絶対におもしろい試合になるから来てね!」って。

あとは小学校を回って、授業の一環で一緒にフットサルをした。1学年3クラス、各クラス30人で計100人くらいに教えて、10人くらいは来てくれる。

──そんなに少ないんだ。

そうなんだよ、もっと来てくれると思っていた。でも親を入れても20人くらい。でも、20人いったら上等なほうなんだよ。その場では「行く」と言っているのに、当日に来てくれない子もいる。だから平均すると10人くらいだね。ということは、2000人を呼ぶためには何校を訪問すればいいか逆算できる。

──招待とかは?

企業さんとかを招待することはあるけど、招待された人は、俺にこれからゴリゴリに営業される人(笑)。今回、何も意図のない招待券は出していない。企業さんに10枚配って、10人来た会社は、来季スポンサーになってもらうための営業のネタにする。あの試合を見てくれたら、きっと「おもしろかった」っていうでしょ。

──じゃあ、2000人達成の柱はサッカー少年団と小学校。

小学校はそこまで大きくないけど、10校に行けば100150人になるからね。

──少年団は来る?

うん。でも、いかにコーチに気に入ってもらうかが大切かな。土日の試合を観に来るためには、場合によっては練習を休ませないといけないことになるから。練習が終わった後に来ることもできるけど、そこの少年団を教えるコーチがフットサルを見せたら面白いね、みんなで行こうぜって言ってもらえる関係性が作れたらめっちゃ来る。本当に100人単位で来るよ。練習を一緒にやって、子どもが喜んでいるだけでは10人とかしか来ない。これが最近の学びだよね。

──少年団と小学校はどれくらい訪問したの?

立川近辺の近いところのチームで11チームくらいかな。学校はこれから行くところも含めて13校だね。まだ行ってないのが4校だから、9校に行った。

──それくらい回ると2000人に行く計算?

あとは、既存のファン・サポーターもいるから、その方たちと合わせてだね。俺たちのクラブは、今はアベレージで1000人に届くかどうかで、800900人はいわゆる「集客」をしないでも観に来てくれるというベースがある状況。

──じゃあ、残りの1200人をどう呼んでいくか。

そう。1200人を呼ぶために、どうしたら来てくれるよねという計算になる。

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