ボクシング

SNS時代の新格闘技、BreakingDownはなぜこれほど“バズる“のか

人気格闘家でYouTuberとしても活動する朝倉未来がスペシャルアドバイザーを務める格闘技イベント「BreakingDown」。“1分間で最強を決める”というルールのもと行われるこのイベントは、2021年2月の設立発表会見内にて全3試合が行われたのを機に、これまでスピンオフも含めて全8回が開催されてきた。従来の格闘技イベントとは異なるルールやストーリー性で注目を集めるBreakingDownについて、今回はその魅力を語っていきたい。(文・井本佳孝)

従来のイベントにはないエンタメ性

ボクシング,グローブ
(Photo by FOTOKITA)

2021年7月に本格開催された「BreakingDown」は、ボクシング、空手、柔道、相撲、プロレスなど、さまざまなバックボーンを持った格闘家が集まり「1分1ラウンド」というシンプルなルールのもと行われる。イベント名には従来の格闘技や格闘家の持つイメージを「壊し続ける」という意味が込められている。格闘技界でも抜群の人気を誇る朝倉未来と朝倉海の“朝倉兄弟”がスペシャルアドバイザーの肩書きで、監修に携わっているのも話題作りに一役買っている。

「BreakingDown」が注目を集めている理由は、イベント名にも込められる通り、従来の格闘技イベント像を壊す予想外の展開が見られるエンタメ性だ。オープンフィンガーグローブを着用して、12種類に分けられた各階級で争う1分の争いはスピーディーさが魅力。朝倉が企画を立ち上げた際に「若者が長いものを見られなくなっている」と語っていたように、ボクシングや総合格闘技などと異なり、対戦者が序盤から激しい応酬で仕掛け合う様子は、今の時代に即したコンテンツだといえる。

また、試合前に対戦者同士が乱闘騒動を起こすなど、大会運営については発展途上で賛否両論が挙がっている。しかし、予定調和を壊すその危なっかしさもこのイベント人気に火をつけている側面があり、YouTubeやSNSを通してその様子が拡散され、熱狂的な支持者を生んでいく。従来の整備された格闘技イベントとは異なり、ネットの力も活用しての新たな楽しみ方や話題性で、回を増すごとにイベントとしての波及力が増していっているのがBreakingDownの現状である。

人間ドラマが見られるオーディション

また、このイベントの魅力を語る上で避けて通れないのがオーディションの存在である。2022年の3月に行われた第4回大会からマッチメイクにオーディション制が導入され、一般公募から選ばれた参加者たちが自身をアピールし、参加者同士での罵倒や睨み合いに発展することもある。朝倉兄弟は「THE OUTSIDER」という“不良”格闘技団体から総合格闘技のスターに成り上がったが、このBreakingDownでも今まさに成り上がろうとする者たちのバトルが観るものを刺激する。
参加者も格闘技の枠に留まらず、一般人やタレント、YouTuber、TikTokerなど多岐にわたる。通常の格闘技イベントには見られない“異種格闘技”ぶりや、アウトサイダー達が繰り広げる試合前後の一挙手一投足がストーリー性を持ち、試合以外にも楽しめる余白が残されてるのがBreakingDownの魅力といえる。この大会を機に知名度を高め、メディアやYouTubeへ進出していく選手もおり、テレビのバラエティーやドキュメンタリーにも似た一連の物語を楽しむという意味でも新しいエンタメの可能性を示している。

また、そのエンタメ性を演出している朝倉のプロデュース力にも言及しておきたい。いち格闘家の枠にとらわれず、YouTuberや実業家としての顔を持つ朝倉は、大会ごとにルールや演出に細かいアップデートを加え、日進月歩でこの大会を発展させてきている。また、自らも来年2月に開催予定の「BreakingDown7」に参戦予定であることを明かしている。今年の9月には「超RIZIN」でフロイド・メイウェザーとのエキシビションマッチで盛り上げるなど、格闘界きってのスター選手で固定ファンを多く抱える朝倉の存在も、昨年から今年にかけての急速なBreaking Downの人気獲得には欠かせない要素の一つだったといえるだろう。


(次のページ「来年には朝倉も参戦予定」へ続く)

関連記事