富樫、比江島、ロシター…2023年W杯に向け“ホーバス戦術”に合致するアカツキファイブは?<DUNK SHOOT>

八村(右)ら海外組が参加できない1次予選・Window2は、富樫(左)らが中心となる。(C)Getty Images
2023年に開催されるFIBAワールドカップのアジア1次予選・Window2が今週末に行なわれる。日本(世界ランク37位)は沖縄市の沖縄アリーナで、2月26日にチャイニーズタイペイ(同66位)と、翌27日にオーストラリア(同3位)と対戦する。

このWindow2へ向けて、24名の代表候補が発表された。張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)、岸本隆一(琉球ゴールデンキングス)といった、Window1には呼ばれた実力者の名前がなかったことや、反対にこれまでほとんどA代表に縁のなかった選手が招集されるなど、興味深い選出となった。

こうした選手選考は、トム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)らチーム首脳陣にとってもチャレンジだ。シーズン中は八村塁(ワシントン・ウィザーズ)や渡邊雄太(トロント・ラプターズ)、馬場雄大(テキサス・レジェンズ)、富永啓生(ネブラスカ大)といった海外でプレーする選手たちの参加は期待できず、加えて五輪に出場したベテラン選手たちがなかなか気持ちを上げられていないからだ。
となれば、Bリーグを中心とした国内組という、現状手元にある駒をどのように組み合わせていくかがホーバスHCの手腕の見せ所となってくる。具体的には、指揮官の打ち出すバスケットボールにどれだけフィットするかが、選考の際の基準となってくるだろう。

ホーバスHCは前任のフリオ・ラマス氏とは大きく異なり、サイズ不足を補う“スモールボール”のスタイルを採用する。日本女子代表指揮官として、このやり方で昨夏の東京五輪で同チームを日本史上初の銀メダルに導き、世界を驚かせた新指揮官は、男子代表においてもここを踏襲していくと明言している。

ホーバスHCが選手選考で重視するポイントは、概ね以下のようなものとなるだろう。

・3ポイントの精度
・ドライブからのペイントアタックとキックアウトパス
・激しく、狡猾なディフェンス
・瞬時の判断が下せる高いバスケットボールIQ
・リーダーシップ/コミュニケーション
八村ら海外組がいないなかでの今回のWindowとなるが、本稿執筆段階では不明ながら、おそらく前Window同様、24名の候補選手から15~16名を沖縄へ連れていき、2試合で使い分けることになるのではないか(2023年ワールドカップはフィリピン、インドネシアとの共催で、日本はすでに開催国として出場権を得ているためこのようなことが可能)。

そこで、現状でのベストな“アカツキファイブ”はどのようなものになるのか、考察してみよう。

まず、アウトサイドにはタレントが多く、ポイントガード(PG)、シューティングガード(SG)、スモールフォワード(SF)にはとりわけホーバスHCのチームで中核をなす選手が多い。そのなかで、PGでは富樫勇樹(千葉ジェッツ)、寺嶋良(広島ドラゴンフライズ)、SGでは比江島慎(宇都宮ブレックス)、SFはアキ・チェンバース(群馬クレインサンダーズ)あたりが、システムを含めたホーバスHCの求めるものにより応えられるように思われる。
注目は、今季のB1で日本人選手(帰化選手を除く)としてトップの平均得点(15.7点)、同トップのアシスト数(6.6)を上げているPG安藤誓哉と、昨季BリーグMVPに輝いたSGの金丸晃輔(ともに島根スサノオマジック)だ。

安藤は2019年のワールドカップに出場しているが、世界の壁の前にほとんど何もできず東京五輪選出も逃したが、力強いドライブや3ポイントに磨きをかけるなど成長を見せている。金丸については、日本No.1と評され“変態的”とまで形容される長距離シュートの技量は、相手ディフェンスを広げる効果をもたらす。ディフェンス等に不安はあるものの、ホーバスHCの戦術にハマるのではないだろうか。

SG今村佳太(琉球)にも注視したい。元々、ドリブルとペネトレーションには定評はあったものの、ここ1年ほどは3ポイントの精度も高めており(今季成功率39.0%)、日本屈指のオールラウンダーになりつつある。まだ粗さはあるものの、豊かな才能が光る。成長株の西田優大(シーホース三河)とポジションを争う存在だ。
インサイドはアウトサイド陣に比べてどうしても層の薄さが否めないものの、そのなかで高さだけではなく、少しずつバラエティに富んだ、多彩な技量を持つ者が出てきている。

ひとつしかない帰化枠はライアン・ロシター(アルバルク東京)が現状では最適な選択だろう。東京五輪出場は逃したが、高いリバウンド力とバスケIQ、さらにリーダーシップを兼備し、頭を使うことを要求するホーバスHCのシステムにかなり合致するはず。遠慮なく大声でチームに喝を入れる指揮官とロシターの共演は楽しみだ。

シェーファーアヴィ幸樹(三河)も間違いなく選ばれるだろうが、ビッグマンにファウルがかさんだ時のことを考えれば、大ベテラン竹内公輔(宇都宮)の選出の可能性も高い。

谷口大智(茨城ロボッツ)の代表候補招集も興味深い。201cmのパワーフォワード(PF)ながら、3ポイントはクイックリリースで今季成功率も40.8%と高く、ホーバスHCの得意な“ファイブアウト”の戦術ではSF的な役割も果たせるかもしれない。
Window1では、中国との連戦で完敗に近い内容で敗れた日本。しかし新指揮官の初陣、しかも選手も五輪組の多くが招集されなかった日本にとっては、相手が強敵すぎたところもあった。

今回、チャイニーズタイペイはプロ・アマ混交のチームで、オーストラリアも五輪銅メダルメンバーからは島根でプレーするニック・ケイが参加するのみで、若手が多い陣容の様子。ホーバスHCにとっては一定程度、選手をテストする機会ともなるだろう。

ただし厳しく、細部にこだわるアメリカ人指揮官の要求は高く、選手たちは自身の力量を最大限に発揮するだけではなく、どれだけ彼のスタイルにアジャストしてプレーできるかが今後の選考にも関わってくる。

文●永塚和志

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