NBAの偉大なヘッドコーチ15人に選ばれたウォリアーズのカーHCが感慨「とてつもなく光栄だ」<DUNKSHOOT>

指揮経験8年にして偉大な15人に選ばれたカーHC。今季は再びチームをリーグ上位に導いている。(C)Getty Images
 現地時間2月8日、NBAはリーグ創設75シーズン目を祝して歴代の「偉大なヘッドコーチ(HC)15人」を発表した。

 現役HC30名とOB13名、計43名によって選出された15人は以下の通りだ(並びはファミリーネームのアルファベット順、カッコ内は主に指揮を執ったチーム)。

■NBAが選出した偉大なヘッドコーチ15人
レッド・アワーバック(セルティックス、キャピタルズ)
ラリー・ブラウン(シクサーズ、ピストンズ)
チャック・デイリー(ピストンズ、ネッツ)
レッド・ホルツマン(ニックス、ホークス)
フィル・ジャクソン(ブルズ、レイカーズ)
KC・ジョーンズ(セルティックス、ブレッツ)
スティーブ・カー(現ウォリアーズ)
ドン・ネルソン(バックス、ウォリアーズ、マーベリックス)
グレッグ・ポポビッチ(現スパーズ)
ジャック・ラムジー(ブレイザーズ、シクサーズ)
パット・ライリー(レイカーズ、ニックス、ヒート)
ドック・リバース(セルティックス、クリッパーズ、現シクサーズ)
ジェリー・スローン(ジャズ、ブルズ)
エリック・スポールストラ(現ヒート)
レニー・ウィルケンズ(ソニックス、キャバリアーズ)

 過去の名将では、ボストン・セルティックスで8連覇を含む計9度の優勝を誇るレッド・アワーバック、レギュラーシーズン通算勝利数で歴代1位(1335勝)、同最多タイとなる3度の最優秀コーチ賞を獲得したドン・ネルソン、シカゴ・ブルズとロサンゼルス・レイカーズで歴代最多11回の優勝、レギュラーシーズン通算勝率でトップの70.4%を誇るフィル・ジャクソンといった指揮官たちが選出。
  現役ではサンアントニオ・スパーズを5度の頂点に導いたグレッグ・ポポビッチ、マイアミ・ヒートで5度のNBAファイナル進出と2度の優勝を飾ったエリック・スポールストラ、レギュラーシーズン通算勝利数(1024勝)で歴代10位となったフィラデルフィア・セブンティシクサーズのドック・リバース、そしてゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーの4名が名を連ねた。

 NBAでは、これまで343人ものHCたちが指揮を執ってきたが、その中の15人に選ばれるのは紛れもなく名誉なこと。ウォリアーズのカーHCは9日のユタ・ジャズ戦前、「自分の名前があのリストにあるのを見て驚いたよ」と語った。

「自分の名前が(現役時代に)プレーしてきたコーチたちと一緒に並んでいるから違和感がある。でももの凄くありがたいことだし、自分の名前が入ることはとてつもなく光栄だ」

 現役時代、主に控えのシューターとして15シーズンをプレーしたカーは、キャバリアーズでウィルケンズ、ブルズでジャクソン、スパーズではポポビッチと名だたる名将の下で計5度の優勝を経験。

 2014−15シーズンからウォリアーズの指揮官に就任すると、19年まで5年連続でNBAファイナル進出を果たし、そのうち3度(15、17、18年)の優勝に導いた。
  チームを率いて今季で8年目、レギュラーシーズン通算勝率(69.4%)で歴代3位、プレーオフでの勝率73.3%は堂々のトップ。ファイナル進出回数は歴代4位タイ、優勝回数は6位と見事な実績を残している。

 マーク・ジャクソン前HCの後任としてウォリアーズに迎えられた当初、チームにはステフィン・カリーやクレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンといった現在も核を担う選手たちが揃っていた。さらに16~19年にはケビン・デュラント(現ブルックリン・ネッツ)も加わり、ウォリアーズは黄金期を築いた。

「このロースターには信じられないほど才能を持った選手たちがいる。(自分が選ばれたのは)その結果なんだということも分かっているよ。このチームの顔ぶれを見れば、どんなコーチでも素晴らしいタレントとともに成功を収めることができたと思うだろう。私でさえ予想していなかったよ」
  カーHCがそう話したように、指揮官として豪華なメンバーを率いることができたことは否定できない。とはいえ、他のHCが同じ条件でウォリアーズを指揮したとしても、カーと同等あるいはそれ以上の結果を残すことができたかは誰にも分からない。

 例えば、キャブズと激突した15年のファイナル。1勝2敗で迎えた第4戦で、カーHCはセンターのアンドリュー・ボーガットを外してウイングのアンドレ・イグダーラを先発起用。得意のスモールボールを展開して勢いに乗ったウォリアーズは、そこから3連勝で王座へと勝ち上がったことはもっと評価されていいのではないだろうか。

 また、昨夏はポポビッチHCの下でアメリカ代表のアシスタントコーチを務めて、東京オリンピックで金メダル獲得に貢献。2023年のFIBAワールドカップ、24年のパリ五輪では後任を務めることが決まっている。

 指揮経験は今回選ばれた中では最も少ない8年とキャリアこそ短いが、カーHCは偉大な15人に選ばれるにふさわしい名将と言っていいはずだ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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