ロケッツOBオラジュワンが後輩を指導!19歳のトルコ人センターとレジェンドの“夢のセッション”<DUNKSHOOT>

19歳のセンギュン(右)がオラジュワン(左)の指導の下で、どんな選手に成長していくか楽しみだ。(C)Getty Images
 NBAで成功を夢見る若手選手であれば、自分が所属している球団の同じポジションに伝説的なプレーヤーがいたとしたら、ぜひともその大先輩の指導を受けてみたいと思うことだろう。

 2021年のドラフトで、オクラホマシティ・サンダーから1巡目16位で指名され、ヒューストン・ロケッツからデビューしたトルコ人センター、アルペレン・センギュンは、額に飾られた『34』のユニフォームを見ながら日々トレーニングを重ね、いつかこの殿堂入りセンター、アキーム・オラジュワンから直に指導を受けたいと切望していた。

 昨年12月、この19歳のセンターはオラジュワンとトレーニングをするプランがあると話していたが、1月下旬、ついに夢のセッションが実現した。
 
 ロケッツつながりはもちろんだが、センギュンのトルコ時代のコーチがオラジュワンの大ファンだったため、センギュンは以前からオラジュワンの武器であるスピンムーブなどを教わっていたという。

 そこで、このスペシャルトレーニングでは、それぞれの動きのディテールをさらに深掘りすることになった。

 ロケッツが球団の公式ツイッターに投稿したビデオの中でオラジュワンは、「一番大切なのはすべての動きの基礎だ」と若き後輩に言葉をかけながら、自ら手本を示しつつ、目線の位置など、細かい点を指導していた。
  それにしても驚くのは、 来年で60歳とは思えない、オラジュワンのしなやかで軽やかな動きだ。まったく無駄がなく、シームレスにすべての動きがつながっている。

 オラジュワンは、センギュンがプレーの質をさらに上げるには、「ボールのコントロールと、スピン」だと指摘。

「彼は若くてやる気に満ちあふれ、貪欲に学びたいという意欲にあふれている。いい兆候だ。機動力とシューティングは悪くない」

 セッションの後、そう語った元ファイナルMVP(1994、95年)は、さらに貴重なアドバイスを授けた。

「現在のバスケットボールは以前とは違う。センターはポストエリアに陣取っていればいいだけではない。大事なのは試合の流れの中で、どこで自分のウェイトをかけるか、その局面をいかに判断できるかだ。そしていつ自分が責任を負ってシュートを打ちにいくか、その見極めにある」

 ポストプレーと、エリアから出ていくタイミングの絶妙なバランスが、現代のセンターには求められるとオラジュワンは語っている。
  オラジュワン自身、敏捷性が傑出したセンターであり、パスワークにも長けていたが、センギュンについて「俊敏さに感心した」という。

「トレーニングを始める前にウォーミングアップしながら彼の動きを見ていたら、柔軟性もあるようだ。パスを見ていると、クリエイティビティがあり、自信を持ってプレーしているのも感じられる。時々小技も繰り出したりしてね」

 オラジュワンといえば、クアドルプルダブル(4つの項目で2桁を記録すること)を達成している4人しかいないNBA選手の1人だ。

 オラジュワンは1990年3月のミルウォーキー・バックス戦で、18得点、16リバウンド、10アシスト、11ブロックをあげたほか、同年のゴールデンステート・ウォリアーズ戦でも、29得点、18リバウンド、9アシスト、11ブロック、さらに5スティールと、驚異的なオールラウンダーぶりを発揮している。

「完全なプレーヤーになるためには、コートの上で自由自在にプレーできることだ」というメッセージをオラジュワンはセンギュンに託した。
  このまま成長を続けていけば、自身が望むプレーヤーになれると確信している、という激励の思いとともに。

 ルーキーイヤーの今シーズン、センギュンはクリスチャン・ウッドの2番手として、これまで先発2回を含む43試合に出場し、12月のクリーブランド・キャバリアーズ戦では、今季ベストの19得点、11リバウンド、5アシストを記録した。

 今月開催されるオールスターのライジングスターズ・チャレンジでは、欧州選手としてはオーランド・マジックのフランツ・ヴァグナーとともにルーキーチームに選出されたセンギュン。

 大先輩オラジュワンとのスペシャルセッションは、今後も続くようだ。最高のメンターを得たセンギュンは、これからどんな成長を見せてくれるだろうか。

文●小川由紀子
 

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