好調の弟フランツを支える“偉大な兄”モリッツ。マジックの指揮官が語る“ヴァグナー兄弟の絆”<DUNKSHOOT>

ここまで順調なルーキーイヤーを送るフランツ。その陰には、兄モリッツの支えがあった。(C)Getty Images
今季NBAデビューを果たしたルーキーで、現在最も平均得点が多いのは?1位指名のケイド・カニングハム(デトロイト・ピストンズ)か?それとも2位で指名を受けたジェイレン・グリーン(ヒューストン・ロケッツ)か?

開幕から35試合を終えた時点で、平均15.6点でトップに立つのは、トロント・ラプターズのスコッティー・バーンズ(4位指名)、そして、オーランド・マジックから8位で指名されたドイツ人フォワードのフランツ・ヴァグナーだ。

ここまで35試合すべてに先発出場しているヴァグナーは、うち30試合で2桁得点をマーク。現在も17戦連続で2桁得点を継続中で、12月28日のミルウォーキー・バックス戦ではキャリアハイの38得点を叩き出した。マジックのルーキーで38得点超えを達成したのは、1990年のデニス・スコット、そして1993年のシャキール・オニールに次ぐ3人目の栄誉だ。
試合は127-110でバックスの勝利に終わったが、ハーフタイムの時点で27点差とバックス優勢で突入した後半戦から、ヴァグナーは一挙27得点を奪取。最終クォーター残り7分でレイアップを沈めた時には、8点差まで迫っていた。

チーム最長の38分間コートに立ったドイツ人ルーキーは、20本打ったフィールドゴールのうち3ポイント4本を含む12本を成功。さらにフリースローは全10本をネットに収め、併せて7リバウンド、3アシストと主力級の働きを見せた。

ジャマール・モズレーHC(ヘッドコーチ)は「フリースローを10本中10本決めたのはでかした。“いかにファウルをゲットし、いかにリムでプレッシャーを誘うか”ということを、しっかり理解できているようだ」と高評価。

試合中には、相手センターのデマーカス・カズンズからもコート上でナイスプレーを称賛されたというフランツだが「彼には『ありがとう』とお礼を言ったけれど、その時点で大差をつけられていたし、結局試合に負けてしまったから……」と、チームを勝利に導けなかったことを悔やんだ。
今年のドラフトで、マジックはゴンザガ大のジェイレン・サッグスも5位で指名。デビュー戦から活躍していたが、11月29日のフィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦で右手の親指を骨折し、現在は治療のため離脱している。

そして、マジックのロースターにはフランツの実兄モリッツもいる。4歳上で現在24歳のビッグマンは、2018年のドラフトでロサンゼルス・レイカーズから指名され、一足早くNBAデビューを飾っていた。

2019-20、20-21シーズンは、ワシントン・ウィザーズで八村塁とも共闘。2021年3月にボストン・セルティックスにトレードされたが3週間で解雇となり、その後マジックと契約。シーズンオフにはドイツ代表として東京オリンピックにも出場した。

そんな兄と同じ足跡を辿って、ここまで到達したフランツ。地元のクラブで、ドイツの強豪のひとつであるアルバ・ベルリンでプレーした後、アメリカに渡ってミシガン大でカレッジバスケットボールを経験し、NBAドラフトにエントリーした。
そもそも、バスケを始めた理由も兄だ。ドイツの多くの少年がそうであるように、ヴァグナー兄弟も少年時代はサッカーに夢中になっていたが、バスケに転向したモリッツは、メキメキ上達していった。

兄が生き生きとプレーしている様子を見て、弟もバスケが好きになったという。

「僕は“兄貴がやってることは、なんでも真似してやってみたくなる”という、典型的な弟だった。兄は僕の生き方に絶大な影響を与えているよ」

少年時代をそう語っているフランツ。そして4歳年上の兄と1オン1を繰り返していたことも、急速にバスケの才能を伸ばす助けとなった。

ミシガン大時代の指導者は、フランツについてこう評価している。

「彼の一番の持ち味はディフェンスだ。複数のポジションにスイッチできて、ボールにインパクトを与え、トランジションでボールを引き出すことができる。ハンドリングも上手い。シュート力は向上させる必要があるが、フロアの両サイドで優れたIQを発揮できるし、ゲーム勘もいい」
206cmの身長よりも長いウイングスパン(213cm)を持つ彼は、11月のブルックリン・ネッツ戦では6スティールを記録している。

オーランドで、ヴァグナー兄弟は一緒に家を借りて、2人で住んでいる。コートを離れれば、料理をしたり街に出かけたり、家でテレビを観たりと、どこにでもいそうな兄弟の日常を2人は送っているという。

「バスケの話ばかりするのではなく、一緒に過ごせる相手がいるのはとてもいいことだと思う」とフランツ自身も語っているが、プロ初年度にNBAの先輩である兄がすぐそばにいてくれるというのは、理想的な環境であるに違いない。

モズレーHCも「2人は本当に仲がいい。ユーモアのセンスが同じらしく、いつも笑い合っているよ」と、彼らの仲睦まじさを明かしている。
「モー(モリッツ)がフランツに教えていたりすることもよくあるが、フランツが手を焼かせたりもしていて、“モーはまさに偉大な兄貴”といった感じだ。しかし彼らは2人とも負けず嫌いだよ」

その兄は「試合が上手くいかなかったり負けたりすると、彼は不機嫌になる。子どもの時からそのままなんだ」と、弟の負けん気の強い一面を暴露している。

これまでのキャリアパスは同じでも、同時期に被ったことがないため、彼らにとって一緒にプレーするのはこのマジックが最初だ。おかげでベルリンに住む両親は、オーランドで2人の息子の試合をいっぺんに観られるようになったと喜んでいる。

ドラフトの前夜、兄が言った「(ドラフトの)夜は一度きりしかない。だから、とにかく楽しんで、すべての瞬間を満喫してこい」というアドバイスがとても心に刺さったと、以前フランツは明かしていた。

モリッツは現在マジックで3番手センターといったところだが、弟フランツの活躍の陰には、常に先陣を切ってきた兄のサポートがある。勝利のリズムを掴めていないマジックだが、兄弟パワーを注入して、後半戦に向けて調子を上げていきたいところだ。

文●小川由紀子

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