【MLB】大谷翔平、50本塁打超えに二冠王獲得も射程圏内 「史上最高」のシーズン完結へ、メジャー史に刻む進化の足跡
3月に開幕したMLBの2023年シーズンも9月を迎え、各地区での優勝争いやプレーオフ進出に向けての戦いが熱を帯びている。そんな中、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)はメジャー移籍6年目のシーズンで自己最高と呼べる成績を残し、自身初の打撃タイトルが手に届くところにある。8月までの活躍ぶりを振り返るとともに、残りのシーズンで視界に入る日本人初の本塁打王をはじめとしたタイトル獲得の可能性や自己最高のスタッツについて、ライバルたちの動向も見ながら言及していきたい。(文・井本佳孝)
右ひじの故障で「投手大谷」は今季終了
今季の大谷は、2021年に46本塁打を放ちMVPを獲得したシーズンに匹敵するペースで本塁打を重ねてきた。とくに6月、7月に入っての量産ぶりは凄まじく、それぞれ15本、9本を積み上げ、2カ月連続月間MVPに輝いた。昨年のタイトルホルダーであるアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)が6月上旬に守備時の怪我により2カ月ほど故障者リスト入りしてからは、実質的なライバル不在の独走態勢を築いた。8月にも5本を積み重ね、9月3日(日本時間9月4日)終了時点で44本塁打と2年前を上回る気配をみせている。
そんな大谷を8月に襲ったのが右ひじの靭帯損傷の大怪我。23日(同24日)のシンシナティ・レッズとのダブルヘッダー第1試合に「2番DH・投手」で2週間ぶりに二刀流出場を果たした大谷は、打者としては初回に44号の2ランを放ったものの、投手としては2回の途中に緊急降板。当初「右腕の疲労」と公表されていた大谷の状態が靭帯損傷によるものと発覚。エンゼルスは今季の残り試合で大谷が登板しないことを発表し、2年連続の2桁勝利を挙げていた「投手大谷」としての挑戦は10勝で終わりを告げることになった。
“大谷ショック”が日米に巻き起こったなか、打者としてのプレーは続行し、指名打者として出場を重ねる。大谷は打率は.304でア・リーグ4位につけ、日本人選手としては10度達成のイチロー(元シアトル・マリナーズなど)、2005年に達成の松井秀喜(元ニューヨーク・ヤンキースなど)に続き史上3人目のシーズン3割を視界に。また、本塁打は35本のルイス・ロベルトJr.(シカゴ・ホワイトソックス)に9本差をつけて首位、打点もリーグ3位の95を記録しアドリス・ガルシア(テキサス・レンジャーズ)の100に迫る。投手として稼動しながら打撃三部門で驚異的な数字を残してきた。
2度目の「40本塁打20盗塁」も達成
まさかのアクシデントにより野手専念となった大谷だが、このまま問題なくシーズンをプレーできるのであれば、自身初の本塁打王のタイトルはほぼ確実といっていい。9月の早い段階で2021年の46本塁打をクリアし、48本塁打で到達する松井秀喜が持つ日本人歴代最多の175本塁打の更新、そして50本塁打の大台超えが今季のノルマとなるか。かつてはイチローが巧みなバットコントロールとスピードで日本人野手のポテンシャルを証明してきたが、各国のパワーヒッターが揃うアメリカの舞台で、日本人選手が本塁打王に輝くことになれば、メジャー史に新たな1ページが刻まれるだろう。
一時期は打撃三冠の可能性も見られていた大谷だが、打率はここに来て強力なライバルが出現。離脱期間があったため規定打席に到達していなかったコーリー・シーガー(テキサス・レンジャーズ)が1日(同2日)で規定打席に到達し、打率.345でいきなりトップにランクイン。約.040差がある現状の大谷とシーガーの差を縮めるのは難しい状況だ。一方で打点王はまだ可能性を残しており、現在「5」差で追っているガルシアを捉えるにはエンゼルスのチームメイトの出塁がカギを握る。2番、3番を打つことが多い大谷にとって、第2打席以降にいかにチャンスに恵まれ、走者を置いた場面での本塁打やタイムリーで打点を稼いでいけるかが二冠王獲得に向けては求められてくる。
また、大谷は3日(同4日)時点で様々なスタッツで自己最高の可能性を残す。3割視界の打率に加え、打点も2年前の100がこれまでの最多。ヒット数は昨年の160まであと9本に迫り、二塁打はあと4本(30)。三塁打は2年前の8本にすでに並び、現時点でリーグトップ。打つだけでなく足でも魅せる大谷は、2021年に記録した26個まであと6に迫っている。トリプルスリー達成にはハイペースが要求される大谷だが、今季で2度目の到達となった「40本塁打20盗塁」は4度達成のアレックス・ロドリゲス、3度達成のバリー・ボンズ、ホセ・カンセコに続く史上8人目。投手としての活躍も踏まえれば「史上最高」と呼んでもいい数字である。
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