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今年は千賀滉大が、来年は大谷翔平が獲得するFA権 日米の制度の違いを徹底解説

大谷翔平(Photo by Diamond Images / Getty Images)

2022年のアメリカ・メジャーリーグは、ヒューストン・アストロズがワールドシリーズを制覇しシーズンが終了した。レギュラーシーズンが終わり、今冬のストーブリーグの関心事は、フリーエージェント(FA)選手の動向に移っている。順調にいけば来季終了後にFAの資格を得ることになる大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の将来的な移籍も注目される中、今回は日本のFA制度とは異なるMLB独自のFAルールを整理し、日米の違いについても言及していきたい。(文・井本佳孝)

日米で異なるFA権利獲得の年数

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(Photo by ronniechua)

メジャーのFAでまず重要なのが「サービスタイム」と呼ばれる、選手がメジャーリーグに在籍していた期間だ。サービスタイムは選手がアクティブ・ロースター(メジャーでプレー可能な選手枠)登録された日数を元に算出されており、172日間登録されると1年にカウントされる。このサービスタイムが6年(1032日間)に達すると選手は自動的にFAの権利を得ることになり、シーズン最終戦にあたるワールドシリーズ終了の5日後から全球団との契約が可能で、それまでの5日間は全所属球団との再契約のみが可能になる。

試合数がメジャーと異なる日本のプロ野球の現行制度では、シーズン開始から終了まで、145日以上で一軍登録されると1年にカウントされる。また、FAの種類は国内FAと海外FAに分かれており、国内FAは145日以上一軍登録されたシーズンが8シーズン、2007年以降に入団した大学、社会人出身選手は7シーズンに達すると権利を取得し、国内のチームへの移籍が可能になる。また、海外FAは9シーズンに達するとメジャーを含めた国内外へのチームとの契約交渉が可能となっており、FAを取得するまでの年数がメジャーとは異なってくる。

今季のプロ野球では、2013年のドラフト1位で埼玉西武ライオンズに加入した高卒9年目の森友哉が、145日以上一軍登録されたシーズンが8シーズンに達し、国内FAの資格を取得しFA宣言。16日にオリックス・バファローズへの移籍が発表された。また、2010年に育成ドラフト4位で福岡ソフトバンクホークスに加入した高卒12年目の千賀滉大が、9シーズンに達し海外FAを宣言。メジャー移籍を視野に入れており、各球団が獲得に興味を示している。アメリカが基準を満たすと自動的にFAになるのに対し、日本では選手本人がFA宣言するかは選択権があり、基準を満たしていても権利を行使しないケースも見られる。

6年を満たさずにFAになる3つのケース

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(Photo by 33ft)

他に見られるFA制度として「ノンテンダーFA」があるが、これはメジャーにおいてサービスタイムの6年に関わらず、チームが選手に来季の契約を提示しなかったことにより生じるFAを指す。メジャーリーグの選手はサービスタイムが3年に達すると、年俸調停権を獲得し、年俸が大幅に上昇する可能性が出てくる。球団側は選手の年俸と実際の成績とのバランスを見極め、活躍が年俸上昇に見合ってないと判断した場合、来季の契約を提示せずに市場に放出することも可能になる。しかし、年俸を抑えたまま再契約するケースもあり、戦力外ではなく、人件費節約の意味合いが強いのがノンテンダーFAである。

また、通常6年のサービスタイムを経て取得するメジャーのFAだが、契約上の特例により認められるケースもある。チームに加入する際に契約が切れた時点でFAになる条項を盛り込むことができ、日本のプロ野球で実績を積みメジャーに挑戦する選手の中にはこの条項を織り込んで契約する選手も見られる。オリックスから2017年オフにアリゾナ・ダイヤモンドバックスに加入した平野佳寿は、入団時に結んだ2年契約が切れた2019年オフにFA選手として公示され、シアトル・マリナーズと契約を結んだ。選手にとってはよりいい条件のオファーを引き出し、自身の商品価値を高めることができる。

さらに、2012年から導入された「クオリファイング・オファー(QO)」と呼ばれる制度も存在し、球団が手放したくない選手に対して、規定額(MLBの年俸上位125人の平均)の1年契約でオファーを出すことができる。提示された選手はこれを拒否することができるが、QOを拒否した選手が他の球団と新たに契約を結んだ場合、元の球団に対して次のドラフトで1順目の指名後に、選手を指名する権利が与えられる。今オフではシーズンでア・リーグ記録の62本塁打を放ったアーロン・ジャッジがニューヨーク・ヤンキースからのQOの提示を拒否しており動向が注目される。ジャッジが他チームへの移籍が合意となった場合、ヤンキースがこの恩恵を受けることになる。


(次のページ「2023年オフにもFAとなる大谷」へ続く)

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