【MLB】メッツの新エース千賀滉大が追い風に。NPB最強右腕や侍ジャパンの“左腕エース”など、高まる移籍ラッシュ

今季ニューヨーク・メッツに加入し、メジャーでのルーキーイヤーを過ごす千賀滉大の活躍が目覚ましい。2桁勝利をクリアし、シーズン200三振超えも視界に入れる千賀の働きは日本人投手のクオリティの高さを改めてアメリカで示す形となっている。そんななか気になるのが来季以降新たにMLB移籍を求める選手たちの動向。今年の3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一にも輝いた侍たちが新たに海を渡ることはあるのか。千賀の活躍とともに言及していきたい。(文・井本佳孝)

米移籍1年目から実力を証明した千賀滉大

福岡ソフトバンクホークスから5年総額7500万ドル(約102億円)もの移籍金でメッツに加わった千賀は当初、マックス・シャーザー、ジャスティン・バーランダーというサイ・ヤング賞3度を誇るベテラン右腕に次ぐ3番手のローテーション投手として計算されていた。3月のWBC出場を辞退してアメリカでのシーズン1年目に専念した千賀は、序盤から大きく調子を崩すことなく白星を積み重ね、シーズン前半で7勝を記録。出場こそなかったものの、オールスターに代替選手として選出されるなど、徐々に評価が高まっていく。

千賀の立場を決定的にしたのが夏のトレード期間。メッツはシャーザーをテキサス・レンジャーズ、バーランダーをヒューストン・アストロズに放出し若手中心のチームに方針変更。そのなかで千賀は移籍1年目ながら新たなエースに昇格し、8月は3勝、9月もここまで2勝を積み重ね、1年目で2桁勝利をクリア。さらに、防御率は現段階で2.96でナ・リーグ2位、三振も194個と200の大台が目前となっている。現地メディアでは新人王だけでなく、サイ・ヤング賞の候補としても千賀の声が挙がるまでに。侍ジャパンやソフトバンクで見せてきた能力の高さを改めて示した形だ。

千賀は新人王ではアリゾナ・ダイヤモンドバックスの外野手コービン・キャロル、サイ・ヤング賞ではサンディエゴ・パドレスのブレイク・スネルに次ぐ2番手の候補とされる。それでも、千賀が1年目の終盤にかけて残したインパクトは絶大なものであり、来季以降はメッツの開幕投手の候補にも挙がるだろう。メッツの正真正銘のエースとして今後の活躍が期待できる飛躍の1年になったことは間違いない。

日本で無双の山本由伸は“千賀超え”の期待

千賀の活躍は、来季以降メジャー移籍を目指す選手にとってもポジティブな影響を与えるだろう。様々な選手の米挑戦が噂されるなか、筆頭候補と呼べるのがオリックス・バファローズの山本由伸。WBC制覇にも大きな貢献を果たした右腕は2年連続沢村賞と実績は文句なし。今季もここまでリーグトップの14勝、防御率は1.32と圧倒的な成績を収め、ニューヨーク・ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMも視察した9月9日の千葉ロッテマリーンズ戦ではノーヒットノーランを達成。今オフのポスティングシステムによる移籍は濃厚とされる。

山本の移籍先にはアメリカでも様々な候補が挙がる。ヤンキースや千賀のいるメッツのニューヨーク勢は動向を追っているとされ、シカゴ・カブス、ボストン・レッドソックスなどの名門も関係者が視察に訪れたと報道されている。25歳と今後さらなる成長も見込める年齢を考えると、千賀の102億円を超える大型契約は十分に考えられる。日本最強右腕がどのチームに加入し、来季メジャーリーグデビューを飾るかは今オフの日本球界最大の関心である。

大谷翔平やダルビッシュ有の活躍も後押しに

ほかにも、横浜DeNAベイスターズの今永昇太も今オフのメジャー挑戦が濃厚とされる。 WBC決勝では先発マウンドを任されるなど左腕のエースとして優勝に貢献した今永は、ヤンキース、ロサンゼルス・ドジャース、セントルイス・カージナルスなどが獲得に興味を示しているという。

また東北楽天ゴールデンイーグルスの守護神、松井裕樹も海外FA権を取得した今オフにも米挑戦が視界に入る。山本が先発した16日のオリックス戦を視察したメジャースカウト陣はリリーフ登板した松井の様子も見守ったとされており、若くして侍ジャパンや楽天のクローザーに君臨し、実績を重ねてきた松井がFAを行使してどのチームを選択するかは注目となる。

さらに、埼玉西武ライオンズのエースに君臨する髙橋光成や、北海道日本ハムファイターズの上沢直之らもメジャーへの想いを口にするなど米挑戦の志向が強い。大谷翔平やダルビッシュ有、菊池雄星など日本から海を渡った選手たちの活躍も彼らを後押ししているとされる。

国際大会でも実証済のNPB投手の実力

千賀の活躍は山本や今永、松井をはじめとしたメジャー挑戦が濃厚とされる選手が好待遇でチームに迎え入れられることにつながる。

日本投手陣のレベルの高さはWBCなどの国際大会でも実証されており、NPBの高いレベルで活躍してきた投手は山本を筆頭に、アメリカの環境に慣れれば問題なく活躍できるだろう。アメリカにおける日本のピッチャーへのポジティブな風が吹いている今オフは、ほかにも米挑戦を視野に入れる選手も現れる可能性はある。日本人投手の米移籍ラッシュが発展するか見ものである。

若手が躍動したWBCでの侍ジャパンや、日本で実績を重ねてメジャー入りした千賀の1年目での飛躍は日本投手のレベルの高さを改めて証明することになった。そのなかでNPBで実績を積み、侍ジャパンでも活躍してきた選手たちがどのような評価を下されメジャー入りするかは期待が高まる。ストーブリーグの日本人投手陣の一挙手一投足からは目が離せない。